第15話「カーテンコール」
読んでくださる方に、合う作品であることを祈りつつ。
グレイスは、楽しみを奪われ、魂が抜けたようになっていた。
淡々と父の命に従って、機械のように処理していく、そんな日々を過ごしていた。
あぁ、もうあんな楽しい舞台を観る事は出来ないだろう。
クライのせいで、全てのヴァンパイアが居なくなった。
泣きたいのは、こっちの方だよ。
残ったのは、人間だけか……。
人間?
そうだ、人間で新しい舞台をすれば良いじゃないか!
グレイスは、その日から、人間相手の舞台を始める。
これが意外と面白いことに気付いた。
最初は、些細な悪戯から始めたのだが、割りと簡単に争いへ発展する。
国が違うと言うだけで不信感が在るようで、ちょっと背中を押すだけで、戦争になったのだ。
ヴァンパイアという不安要素が世界から消えたにも関わらず、人間同士の争いは絶えなかった。
なるほど、親父が夢中になる訳だ。
グレイスは、思うがままに人心を惑わした。
しかし、グレイスは遣り過ぎてしまう。
「何をしているのです、兄上」
「ク、クライか……」
「私の名は、そのような名ではありません!」
「すまん、クライスト」
「で、何をされていたのですか?」
「あ、あぁ、親父様の命令でな……」
「そうですか、では、父上に確認をさせてもらいます」
「ま、待ってくれ! ちょっと親父様の真似ごとをしただけなんだ、見逃してくれ!」
「父上の真似ごと? 争いを起こすことがですか?」
いかん!
親父に知られれては、間違いなく俺が消される!
どうせ、知られるのなら!
「お願いだ、クライスト!」
そう言って、膝を付き、頭を地面に擦り付けた。
近づいて来い、クライ!
「この通りだ、もう二度と遣らない、だから親父様だけには」
もう一歩だ!
「止めてください、兄上。頭を上げてください。ですが、判断は父上にして頂きます」
そう言って、クライストは、グレイスの肩に手を置く。
と同時に、グレイスは顔を上げ。
「フリィィィーーーズ!」
だが、目の前に居た筈のクライストが居ない。
「何の真似ですか?」
後ろから肩を掴まれる。
「ち、違うんだ、クライ……」
「私は、そんな名ではない!」
「す、済まない、クライスト。冗談だよ、冗談」
「ジーザスクライストの名に於いて」
「止めてくれ、お願いだ!」
「次元の狭間に消え去るいい、悪魔め! ディメンション!」
「いいか、よく聞け、クライ! いつか、お前のその性格が、お前自身の首を絞めることになるだろう」
そう言い残し、グレイスは空気に融けるように消え去った。
そして、
二千年の時を経て、
再び、役者は揃う。
読んでくれて、ありがとう。
そろそろ、この辺で言わないとアカン気がするので……作品はフィクションですので、作品中に出てくるキリストは、同姓同名の違う人物とお考えくださるよう、お願い致します。
次回「知らない理由」




