第14話「封印」
読んでくださる方に、合う作品であることを祈りつつ。
偶然なのか、必然なのか、それとも、運命なのか?
アルベルトに再会してしまったことで、グレイスは再び舞台を旗揚げしたい衝動に駆られていた。
前回の舞台から、すでに17年が過ぎていた。
父からの監視も外れるだろうから、そろそろ新しい脚本をと考えていた矢先、アルベルトに出会ってしまい、父への報告を余儀なくされる。
父に、アルベルトという記憶の種を植え付けてしまった。
しかも、自分にアルベルトを殺させなかった事で、さらに心配の種が芽を出してしまっている。
次は、どうしてやろうか?
悲しませようか?
怒らせようか?
あぁ、苦痛で歪んだ、あのガキ共の顔が見たい。
そう想い続け、長年待った意味を無くした今、その想いは破裂寸前まで来ていた。
いよいよ我慢しきれなくなったグレイスは、久しぶりにグリンウェルに接触しようと、ヴァンパイア領へと赴いた。
しかし、近況だけを聞いて帰るつもりが、生憎グリンウェルは不在だった。
折角来たのだからと、少しだけ様子を窺うつもりで、カイルの城へと向かう。
木の陰に隠れ、開いていた窓から覗き込んでみれば、カイル、アルベルト、グリンウェル、ウォレフの四人が揃って、何やら作戦会議のようなものを開いていた。
「随分と大袈裟な作戦だな……ま、まさか! あいつら、馬鹿じゃないのか!」
作戦から判断するに、相手はメイヲールだということに気が付いた。
どう考えても、メイヲールを狩るには、人数も個々の力も足りない。
グレイスは焦った、このままでは自分の獲物がメイヲールに取られてしまう。
折角、ここまでやってきた舞台が台無しじゃないか!
そうだ、グリンウェルに中止を……否、あそこまで作戦を詰めているのであれば、猶予は無いな。
俺が親父に、メイヲール討伐の許可を頂く方が……駄目だ駄目だ、そもそも許可が下りるとは限らんし、逆に疑われる可能性が高い!
許可無く、成り損ないを殺ることは出来ない。
どうすれば……。
しかし、幾ら悩んでも良い考えが浮かばなかったグレイスは、止むを得ず『父の許可を取ってメイヲールを討伐』という案を選んだ。
許可が出易い理由を考えなければ……。
神界に戻ったグレイスは、父の就寝時間が既に過ぎていたことから、明朝を待つことにした。
しかし、ふと父の部屋を見上げれば、まだ明かりが灯っているのが見えた。
寝る前に聞くか?
不機嫌にならないだろうか?
否、逆に考えもせず、許可を出す可能性の方が高いのではないか?
グレイスは部屋をノックし、返事を待つ。
「なんだ?」
「グレイスで御座います、よろしいでしょうか?」
「入れ」
許可さえ出れば、今すぐ飛んで行って狩ってやる!
扉を開くと、宙に映像を映し出し、眺める父の姿が在った。
「グレイスも観るか? 面白い見世物が観れるぞ」
そう言われた映像は……メイヲールの城内。
メイヲールが、四人のヴァンパイアと争っていた。
「な!」
「驚いたか? 儂も驚いたよ。ジーザスの様子を観るつもりが、先客が居ようとはな」
「ジ、ジーザスを……ですか?」
「あぁ、メイヲール討伐に派遣した」
間に合ってくれ、クライ!
その願いが届いたのか、クライストから到着の報告が入る。
「ん? どうやら、ジーザスが到着したようだな」
よし、いいぞ。
さっさとメイヲールを封印しろ!
だが、その願いも虚しく。
「ジーザス、暫く待て」
「よ、良いのですか?」
「何がだ?」
「そこには、成り損ないのアルベルトが……」
「だから、何だ?」
「いえ、以前、抹殺を止められましたので、親父様に何か考えが在るのかと……」
「あぁ、あれはもう良い。それにしても、この者たち、よく闘えているじゃないか」
な、なんなんだ!
訳が解らない!
くっそー、アルベルトのみならず、カイルまで失うのか!
だが、グレイスの予想を反して、勝利したのはカイルたちの方だった。
グレイスが、ホッと胸を撫で下ろしたのも束の間。
「危険だ……」
そう呟いて、クライストは城の門に立った。
「ジーザスが勝手を。親父様、よろしいのですか?」
「任せるとしよう」
もう駄目だ……俺の楽しみが……。
読んでくださって、ありがとう。
次回「カーテンコール」




