第13話「進化の過程で」
読んでいただく方に、合う作品であることを祈りつつ。
――感じることが出来るのならば、何らかの物質が存在し、その計測も出来る筈。
その考えから始まった研究は、早い段階で結果が現れ、更に計測を遮断する物質まで発見することが出来た。
その計測された波形は、ヴァンパイア(Vampire)の妖気を計測することから、アルベルトはV波と名付けた。
だがその過程の中で、アルベルトは新たな波形まで、発見してしまう。
「なんだこれは?」
アルベルトは、その波形をX波と名付けた。
その名は、後世に発見されるX線と同じ理由で、数学で用いられるところの"未知数"を表している。
「どうして、僕だけに……」
余りにも微量なため、最初は何かの間違いなのかとも考えた。
しかし、日が経つに連れ、計測器の範囲や精度も上がり、その数値が自分だけの物ではないと判明する。
「もう一人居る……」
だが、その反応を示した者に問題があり、たった一人の家族である兄カイルにさえも、この波形について、打ち明けることが出来なかった。
しかし、どうしても気になったアルベルトは、そのもう一人であるメイヲールに会う事を決意する。
「兄さん、メイヲールを一度、この眼で見てみたいんだけど……」
"一度"とは、戦うつもりでは無いこと。
"見てみたい"とは、敵と自分たちの差を知ること。
カイルは、言葉の一つ一つを理解し、自分も同行することで、それを了承する。
アルベルトがメイヲールに臆することなく堂々としている姿を見て、カイルは改めて自分の目に狂いはなかったと思った。
さらには、メイヲールの怒りを買った際、自分は身構えたのに対しアルベルトは、
「楽しみは、後に残すんじゃなかったのか? 僕らは、まだ成長段階にある。待てば、もっと楽しめると思うよ」
そう笑いながら言う姿に『やはり、アルベルトこそ、王に相応しい』と確信するのであった。
だが、一方のアルベルトは、メイヲールとの戦闘よりも、腕時計型の計測器が指し示す数値を気にしていた。
V値は、戦闘時でもないのに、兄さんの三倍強。
それよりも、X値……僕の12倍か……。
少し硬い表情を見せたアルベルトに、カイルが問い掛ける。
「殺れそうか?」
「きっと奴は……二度も僕らを逃がした事を後悔するよ」
強気な発言とは裏腹に、自分とメイヲールしか持たない波形が、何を表す物なのか悩んでいた。
自分と兄のV値差から考えて、自分が兄を超えていない以上、X波が強さを示す値だと考え難い。また、知能指数でということになると、メイヲールが自分の上であるとは、とても思えない。
他の何かの能力値ではないか、病原菌的な何かなのかと、色々な仮説を立て実験を繰り返してみたが、答えに近づくことさえ出来なかった。
何の影響も無く、何の実害も無く、何の成果も得られないまま、この世に二つしかない稀有な波形として、記憶の片隅に残す程度となった。
しかし、研究対象外となってから18年が過ぎた頃。
再び、X波をもう一度研究対象にせざるを得ない事案が発生する。
三人目のX波形者が現れたのだ。
しかも、その大きさは機械の故障かと疑うほどで、アルベルトはおろか、メイヲールさえも、比べ物にならない数値を叩き出した。
アルベルトは急いでローブを身に纏い、その数値の場所を目指した。
欧州を横切り、中東まで南下して、ヨルダン川の西部へ。
「ん? コチラに来るのか?」
父の命を受け、神の子を迎えに来ていたグレイスは、遠方からやって来る大きな妖気に気づいて神気を消し、建物の影に身を潜めた。
計測器を眺めながら、空から舞い降りたアルベルトは、その指し示す場所へと歩み寄り、その異常数値を出した者を見て驚愕する。
「こ、この赤ん坊が?」
余りにも異常な大きさなため、計測器を見なくても、まるで妖気のように感じることが出来る。
アルベルトは、赤子を前に悩んだ。
調べる好奇心より、それが直感的に"危険な気"だと感じたからだ。
研究対象として連れ去るか、それとも、赤子の内に葬り去るか。
アルベルトが、その決断を下そうとした、その瞬間。
アルベルトの時間が止まる。
「危ない危ない、仕事を増やすなよ」
凍ったアルベルトの頬を叩き、グレイスは考える。
今なら、生まれたばかりの神の子を守る理由があるから、コイツを消せるんじゃないか?
否々《いやいや》、親父に派遣されて来たんだ、親父が見てるに決まっている。
全く……運の良い兄弟だな、お前らは!
「親父様、此処に成り損ないが居ります。如何致しましょうか?」
――神に関する記憶を消した後、ヴァンパイアの領地まで運べ。
「生かして置くのですか? 親父様の子を手に掛けようと……」
――グレイス、二度言わせるのか?
「申し訳ありません、御意のままに」
解らん! どうして、生かす?
生かしても、殺しても、何も無いだろ?
このどうしようもないほどに低い神気が、成長するとでもいうのか?
それとも、俺が気付かない何かが、コイツに在るのか?
急に、話が飛んだように感じられると思います。
そのくらいグレイスが待ったという意味をこめて、前回のタイトルがインタールードなのです。
もしかしたら、いつかその間の話を作って、また話数ズラすかもしれませんけどねw
次回「封印」




