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MoonLit  作者:
Once In A Blue Moon
57/105

第8話「グレイスは、腹の中で笑う」

読んでくださる方に、合う作品であることを祈りつつ。


2016/9/22 修正

 上空から城を見下ろし、その窓に映る光景は、同じ物語でありながら、見るものにとって違う印象を与えた。

 グリンウェルにとって悲劇であるが、グレイスにとっては喜劇だった。


「見るんだ! 君を必死で守る母の姿を!」


「あれの何処が、僕を守って……」


 グレイスは、叫ぼうとするグリンウェルの口をふさぎ、エミリアの真意を伝える。


「君がこの世界で生きて行くために、君の母さんは堪えているんだ」


 グリンウェルは必死で首を横に振るが、その塞いだ手を外すことが出来ない。


「君には、受け止める義務がある」


 さもそれらしいこと言えたものだと、グレイスは我ながらに感心する。


「そして、あそこの窓から見える赤子が……アルベルト、君の弟だ」


 絶望の淵に立つグリンウェルを抱え、その喜劇を楽しんでいた時、城から飛び出して行く、この舞台の主役カイルの姿が眼に映った。


 ん? あのガキ! 何処へ行く気だ!

 じきに、メイヲールが来ると言うのに!


 そう、この舞台に敵役メイヲールを呼んだのは、グレイスだったのだ。

 このグレイスが脚本する物語の結末は、メイヲールにカイルを殺させるものだった。

 しかし、エミリアがカーライルの元へ行くかどうか確認に来た際、グリンウェルをもう一人の主人公として抜擢することを思いついたのだ。


 こっちのガキは、一体どれほどの絶望を俺に見せてくれるのだろうか?


 特等席で鑑賞するグレイスの想像を遥かに超え、この物語は面白さを増していく。


 まぁ良い、帰って来た時には、全てが壊された後だ。

 無表情なあのガキも、少しは顔を歪めるだろうよ。


 幾ら叫んでも、塞がれた口では声が届かず。

 足をバタつかせたところで、このかたく閉ざされた腕から、逃れる術は無く。

 妖気を高めたところで、非力なグリンウェルでは、誰かに気づいてもらうことなど、到底できることではなかった。

 唯一の抵抗は、涙を流すことだけだった。


 ようやく動いたか……


 敵役の動きに心躍らせたその時、別方向でこの物語の主人公も動き出した。


 ガキめ、戻って来るか!


 カイルの妖気に釣られ、メイヲールも速度を上げたが、カイルの方が先に、城へと到着する。

 

 いいぞ、いいぞ!

 ん? 妖気を消しただと……

 まさか、メイヲールが来ると知って、戻ってきたのか?


 だが、真っ直ぐに弟の部屋へ向かうのを見て、


 あぁ、そうだろう、そうだろうとも、弟を連れて逃げると言う訳だな。

 無駄、無駄。

 メイヲールは、既にお前の妖気に気付いているんだからな。

 それにしても、カーライル……まるで、猿だな。

 抱くのに夢中で、メイヲールの接近に気付かんか?

 それとも、その程度なのか?


 そして、とうとうメイヲールが到着する。

 メイヲールは、上空から一気にカーライルの部屋へ、城を破壊しながら舞い降りた。


 おいおい、女を置いて逃げるのかよカーライル、王として恥ずかしくないのかね?

 はぁ? 呆気あっけなく殺されてんじゃねぇよエミリア。

 お前の息子と特等席で楽しんでるってのに、台無しじゃないか。


 しかし、グレイスをもっと楽しませる出来事が、ここで起こる。


 なに? あのガキ……馬鹿か?

 勝てる気でいるのか?


 そう、カイルがメイヲールの前に立ちはだかったのである。

 目の前の臆病なドラキュラ王に興味の無くなたメイヲールは、一瞬で終わらせ、次へ目標を定めた。

 メイヲールは、ゆっくりとカイルへと近づき、その右の拳を振り下ろした。


 と、止めた? メイヲール、何をしている!


 するとメイヲールは、地響きするほどに笑い、飛び去った。


 まぁ、良いだろう、楽しい舞台だった。

 第二幕でも、考えておくか……



 天まで届くほど高い山の中腹に、この世を支配する王が住んでおり、恐怖と言う名の下に、世界は統一されていた。

 その王の名は、メイヲール。

 身の丈が15mほどの、山羊の魔人。


 メイヲールは、不思議でならなかった。

 人という生き物は、どうして、こうも愚かなのだろうかと。

 いつの時代も、自分を訪れる人間がまれに現れる。


 或る者は、家族がヴァンパイアに殺され、自分の命を差し出す代わりに、その仇を討って欲しいと願う者。

 或る者は、ただの興味本位で、近づいて来る者。

 或る者は、自分を神とあがめ、信仰する者。


 そして、今日も、一人の男が自分を訪ねて来た。


「おぉ、我が親愛なる神、メイヲール様」


「何ダ」


「メイヲール様のお耳に入れたい情報が御座います」


「情報?」


「はい、ドラキュラ最強と言われた女が、今宵、カーライル城に現れます」


「何?」


「そのちから、カーライル王を遥かに凌いでおります」


 メイヲールが興味を持ったことを感じて、グレイスは腹の中で笑う。



読んでくださって、ありがとう。


実は、6話~8話は一つの話で「カイルは静かに怒り、グリンウェルは嘆き悲しみ、グレイスは腹の中で笑う」と言うものでした。

で、話を考えていくうちに、三視点の別物語にしてみようということになり、頑張ってみました。

しかし、7話目がグリンウェル視点なのですが、ちょっとグレイス寄りになった気がしているので、もう少し修正するかもしれません。



 それはまるで、サラブレッドを作るかのような血統に重きを置いた、品種改良の先に生まれた女性だった。


次回「品種改良」

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