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MoonLit  作者:
Lunar Eclipse
46/105

最終話「LunarEclipse 後篇」

読んでくださる方に、合う作品であることを祈りつつ。


2018/03/30 加筆修正。

 メイヲールの再生速度を目の当たりにした鷹也は、逃げ過ぎることも、攻め過ぎることもせず、ただ、間合いに気をつけながら、倒すすべを探していた。


 こうやって時間を稼いで、陽が昇るのを待つか?


 如何いか規格外きかくがいの化物と言えど、太陽光が弱点のヴァンパイアであることに違いは無い。

 天井を破壊し、陽光ようこうもとさらせば、ローブの在る自分が生き残れると考えた。

 しかし、そのローブの存在が戦術を否定する。


 いや、駄目だ……もし、それが出来ていたなら、父さんがやっていた筈だ。

 4人掛かりで、封印するなんて手段を選ぶ筈が無い!

 恐らく、陽光による損傷そんしょうよりも、再生速度が速いに違いない。

 やはり、手足を切断して……ッチ、羽もか……流石に、そこまで闘いに付き合ってはくれないだろうな。

 何か、何か他に手は無いのか……。


 考えに集中し過ぎてしまい、メイヲールの蹴りを中途半端に受けてしまう。


 しまった!


 すくい上げるようなその蹴りは、鷹也の身を浮かす。

 逃れるために翼を広げようとしたものの、既に遅く、メイヲールの右手に捕まってしまった。

 メイヲールは、更に左手を添え、渾身こんしんの力を込めて、両手で握り潰しにいく。


 ウォォォォォォォォォォーーーッ!


 強烈な圧迫の前に、抵抗と苦痛が入り混じった叫び声をあげたその時、突如として、その手から解放される。

 メイヲールは、まるで飛んできた虫を嫌うかのように、左手で鷹也を払い飛ばした。


 握り潰す、叫び声、この2つのキーワードが、メイヲールに"ある記憶"を呼び起こしたのだ。


 カイルによる手の破裂はれつ


 それが切っ掛けとなり、封印まで至った記憶が嫌悪を抱かせ、無意識にそういう行動をさせたのだった。


「アノようナ……小サキ蚊ニ……おそレヲ……」


 生まれて初めて味わう、認めがた屈辱くつじょくに怒りで震え、大地が揺れるほどの雄叫びをあげながら、本能の赴くまま、それはまるで荒れ狂う嵐のような猛威もういで、再び、鷹也におそい掛かる。


 冷静を失っている今なら!


 鷹也は、妖気のある剣を捨て、破れた筈の分身を始める。

 一度は、考えがぎったものの、技が破られているだけに、安易に使えば致命傷になりかねないと考え、躊躇ためらっていた。

 だが、再生の速いメイヲールを仕留しとめるには、ウォレフのように心臓を串刺しにするか、首をねるような一撃に賭けるしかなかった。


 グリンウェルの別ルート、分身を残すことを考えなければ、俺にもやれる筈だ!


「無駄ダ!」


 即座に反応したメイヲールは手を振って、風圧で分身を消してゆく。

 メイヲールの視界から外れる瞬間、鷹也は妖気を消し、メイヲールの頭上、更に天井まで飛んだ。

 天井を蹴り勢いをつけ、メイヲールの頭目掛け、一直線に降下する。


 脳天から股下まで、切り裂いてやる!


「同ジ手ガ、何度モ通ジルト、思ウナーーーッ!」


 鷹也が手刀に妖気を籠めた瞬間、メイヲールの角が鷹也をつらいた。

 そこから噴出すように血が流れ、メイヲールの顔を赤く染める。

 ここでメイヲールの言った"同じ手"とは、鷹也が最初に出した分身を指すのではなく、アルベルトがメイヲールの角を叩き折った時のもの。


 メイヲールは大きく首を振って、鷹也を地面に叩き付ける。

 鷹也の右脇腹は、直径30cmほどの穴が開き、あばらどころか、背骨までも折れ、最早もはや動けなくなっていた。

 メイヲールは、自分の勝利を確信し、鷹也にとどめを刺す。


「終ワリダ、狡賢ずるがしこキ、弟ヨ!」


 血……


 血が、足りない……


 何処だ?


 血は、何処だ!


 在るじゃないか、目の前に!


 メイヲールの右拳が、鷹也を捕らえた、いや、捕らえたように見えた。

 それは、まるで羽毛を叩いたかのように殴った感触がなく、拳が当たる直前で風に流されたかのようにフワリと浮かぶと、そのまま拳にまとわり付いて、手首に歯を立てた。


往生際おうじょうぎわノ悪イ、蚊メ!」


 振り払おうとするも、歯が食い込んで外れない。

 メイヲールは、まるで停まった蚊を潰すように、左手で右腕に停まる鷹也を叩きにいったが、今度は左腕に移られ、再び、血を吸われる。

 ならばと、くわえさせたまま、その左腕を城の壁に叩きつけた。

 しかし、それすらも擦り抜け、左腕に沿って首筋を狙い迫ってくる。


「血をよこせ!」


 間一髪、右手でそれを掴んだが、気味悪がって遠くへ放り投げた。

 ゆらりゆらりと立ち上がった相手は、まるで亡霊のようで、その眼は真紅に染まり、そして……、


「馬鹿ナ……」


 その腹に開けられていた筈の大きな穴が、既に無くなっていた。

 ドラキュラにも、再生能力は在る。

 そんな事くらいは、メイヲールも知っている。

 だが、それは余りにも速過ぎた。

 自分の血がその影響を与えたのかもしれないが、そうだとしても、自分以上の速さを感じたのである。


 全く……よく生きていられるもんだ。

 アイツもバケモンだが、俺も変わらねーな。

 さて、どうする?

 流石に、まだ死なない俺を見て、少しは警戒してるようだな。


 不気味にさえ感じる相手に、無敵を自負じふしていたメイヲールでさえ、間合いを取らざるを得なかった。

 それは、鷹也が再び剣を拾う姿を目で追いかけても尚、警戒するほどだった。

 しかし、よく観察することで、一つ解った事がある。


「貴様……アノ時ノ、弟デハ無イナ? ナ、何者ダ!」


「我が名は、エクリプス。月蝕げっしょくときだ」


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