第27話「LunarEclipse 中篇」
読んでくださる方に、合う作品であることを祈りつつ。
2018/03/30 加筆修正。
「別レノ、挨拶ハ、終ワッタカ?」
その投げかけられた言葉には、薄気味悪い笑みが含まれていた。
吹き上げるような怒りを押し殺し、鷹也は言い返す。
「嗚呼……お前を生きて此処から出さないと、誓ったところだ」
メイヲールは鼻で笑い、両手を広げ構えた。
「ヤッテ、ミセロ!」
広げられた腕の先を見れば、斬り落としたばかりの右手首が元に戻っていた。
いつもなら感情的に動いてしまうが、今は不思議と冷静で居られ、相手もよく見えている。
とはいえ、怒りが消えた訳ではなく、メイヲールを睨み、その間合いに気をつけながら、ジリジリと歩み寄るのだった。
さて、どうする?
こんな化物に、果たして勝てるのか?
感情に任せて、ただ我武者羅に動いても、勝てる相手じゃない!
考えろ!
考えるんだ!
だが、その考える暇さえも、メイヲールは与えなかった。
「達者ナノハ、口ダケカ?来ヌノナラ、行クゾ!」
鷹也目掛け、叩きつけるように手を振り下ろしたことで、戦いは再開される。
その攻撃は、分身を破った時と同じように、物理的には届かないものの、その手から発せられる風の攻撃範囲内だった。
鷹也は、咄嗟に、剣を横にして防御に構えた。
だが、その行為は裏目に出る。
「しまった!」
今度の風は、分身を破った時のような吹き飛ばす横風とは違って、その場に止める為の縦風。
押さえつけられるような風圧に、身動きがとれなくなった鷹也へ、力の篭った蹴りが入った。
幾つもの柱を砕きながら、反対側まで飛ばされ、壁に激突することで、ようやくその勢いは収まる。
か、体が軋む……
だが、休んでいる場合じゃない!
剣を杖にして、立ち上がろうとする鷹也。
「我ノ蹴リヲ喰ラッテ、砕ケヌ処カ、立チ上ガルカ!面白イ、面白イゾォォォ!」
メイヲールは、嬉々《きき》として迫り、まだ顔を上げれない鷹也を再び蹴りに行く。
だが鷹也は、その不用意に蹴り出された右足を掻い潜って、軸足となって動けない左足を狙う!
怒り、苦痛、憎しみが入り混じったような叫びを伴って、その左足は切断された。
更に、バランスを崩し倒れ来るメイヲールの心臓目掛け、剣で突き刺しに行く。
もらった!
しかし、剣が胸に到達するよりも早く、右腕に阻まれ、弾き返された。
鷹也は、瞬時に翼を広げ宙を返ることで、飛ばされる勢いを殺し、離れることなく、その場に降り立つ。
冷静に……冷静に……
落ち着け……落ち着くんだ。
この剣なら、この化物を斬り裂くことが出来る。
おそらく、斬られた足を付けに行く筈だ。
今度は、その掴んだ手を狙ってやる!
両手両足を削ぎ落とし、心臓を狙えば、殺れる筈だ。
さぁ、拾え!
アンデット系のヴァンパイアであれば、再生を待つよりも、付け直した方が早く完治する。
当然、目の前の化物でさえも、そうするだろうと考えたのだが、メイヲールは斬られた足を見ることさえせず、鷲のような翼を羽ばたかせて身を起こした。
飛んでくるのか?
メイヲールは、傍に在った城の柱を叩き折ると、まるで槍のように、鷹也目掛け投げた。
身の丈15mのメイヲールにとってみれば、棒切れ程度の代物だが、人間サイズの鷹也にしてみれば、大型車両が飛んできたのと変わらない。
迷わず剣を振り降ろし、柱を真っ二つに斬って難を逃れたが、柱の割れた先には、メイヲールの拳が在った。
ガードが間に合わず、一直線に壁面まで飛ばされ、メイヲールもそれに合わせ飛ぶ。
壁を突き破って城の外に出た相手の生死を確認することもせず、倒れる鷹也に渾身の拳を叩き付ける。
まるで隕石が落ちたかのような轟音と衝撃で、地面に大きな穴を穿った。
間一髪、転がってそれを避けることができたが、まだ殴られた痛みで巧く動けず、体勢を立て直そうと、一旦、城内に戻って間合い取った。
「ウォォォォォォォォォォーーーッ!」
仕留められなかった悔しさを壁にぶつけ、破壊を伴って再び城内に戻ってきた。
「馬鹿な……」
鷹也は、自分の目を疑った。
思わず、それが在った筈の場所に目をやると、そこにはまだ、切り離されたメイヲールの左足首は存在していた。
メイヲールの再生能力は速い……。
ウォレフの残した言葉が、頭を過ぎる。
だから、あの時、ウォレフは避けなかったのか……。
最終話「LunarEclipse 後篇」へ つづく




