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MoonLit  作者:
Lunar Eclipse
44/105

第26話「LunarEclipse 前篇」

読んでくださる方に、合う作品であることを祈りつつ。


2018/03/30 加筆修正。

 まるで天変地異が起こったような錯覚をさせられるほど、突如として現れた者の妖気は凄まじく、その城に棲んでいた生物は、けもの、鳥、虫に至るまで、一斉にその場を離れた――いや、逃げた。

 空間を裂いて現れたのは、身の丈15mほどの、黒い山羊の顔をした魔人。


「な、なんだ……コイツは!」


「コイツの名は、メイヲール。かつて、俺、カイル、アルベルト、グリンウェルの4人で封印した魔人だ!」


 突然目の前に現れた巨大な生命体に、誰もが呆然と立ちすくむ中、一人だけ、声を張り上げた者が居た。


「メイヲール! いい事を教えてやる!」


 呼ばれた方向を見下ろすと、下半身の無いドラキュラがそこには在った。


「アノ時ノ、蚊ノ一匹?」


 メイヲールは、おもむろにグリンウェルを掴み上げ、苦痛で歪む顔を楽しみながら握り潰そうと、指に力を入れたその時、グリンウェルが鷹也を指差して叫んだ。


「メイヲール、あいつの持ってる剣は、お前の角だ!」


「ナ、なんダト……」


 確かにその剣は、無生物にあるにも関わらず、異様な妖気をまとっており、その大きさはおのれに匹敵している。

 しかも、よく見ればその剣を握っているのは、自分の角を叩き折ったドラキュラではないか。


「我ガ……角?」


 己の生命力を考えれば、未だに再生されないということは有り得ない。

 だが、気になったメイヲールは、それが在るべき場所へと手を伸ばした。

 しかし、在る筈の物がそこには無く、折られた根元の感触だけが、二度と元へは戻らないことをメイヲールへ伝えるのだった。

 アルベルトの開発した転移装置は、原子分解を行い、転移先で再構築されるという代物しろもので、つまりは、分解を行った際に、角の無い生物としてデータが保存されたのである。


「我ガ角ヲ……アノ様ナ、玩具ニ!」


 メイヲールの怒りは、まず掌の中に在る者から向けられた。

 怒りの赴くままに、グリンウェルを握り潰し、指の隙間から血が飛び散る。

 更に、その手に残った肉塊にくかいを激しく地面へ叩きつけ、そして踏み潰した。

 

「許サン! 許サンゾォォォーーーッ!」


 大気を震わせる咆哮ほうこうが、城中に鳴り響く。

 鷹也は、蛇ににらまれた蛙のようになっていたが、鼓膜を破るようなその叫び声によって、我に返る。


 ヤツが動く前に、勝負を決めなければ!


 鷹也の分裂は、一気に16人まで増え、メイヲールを取り囲む。


「笑ワセルナ!」


 その言葉と共に、メイヲールは激しく左腕を振った。

 その攻撃は、大きく空振ったのだが、それから発せられた衝撃波が、鷹也の分身を一つ残らず、消し去った。

 本体である鷹也も例外なく、その衝撃波で体勢を崩される。


 その瞬間をメイヲールは、逃さなかった。


 分厚い右のてのひらで、鷹也を地面へと叩き落とすと、更に地面で横たわる鷹也を踏みつける。

 なんとか転がることで、それをかわしたものの、壁面まで追い詰められ、む無く、剣で受け止めた。


 背にする地面が割れるほどの圧力が、鷹也を襲う。


「此ノまま、潰シテクレル!」


 押し上げ逃げようと、歯を喰いしばるものの、メイヲールの体はビクともしない。

 メイヲールは、更に踏みつけている右足に体重を掛け、力をめた。

 伸ばした腕がその圧力に耐えかねて、顔の間近まで来た時、攻撃している筈のメイヲールから苦悶くもんの叫び声。

 ウォレフが、左のアキレス腱を爪で切り裂いたのだった。


「此ノ、犬畜生ガ!」


 ウォレフを殴りにいったことで体が傾き、それによって鷹也は一気に足を押し上げ、メイヲールはバランスを崩して、その場に倒れた。

 すかさず、ウォレフはメイヲールの胸へと駆け上がる。


 まだ、爪に薬は残っている。

 如何いかに貴様が化物でも、これを直接心臓に突き刺せば、ただでは済むまい!


「届けぇぇぇーーーっ!」


 メイヲールの両手が、ウォレフを挟むように迫って来る。 


 これをけていては、この最大のチャンスを逃してしまう!


 ウォレフは、それを避けることなくメイヲールの心臓目掛け、爪を突き立てた。

 しかし、それが心臓に到達するよりも早く、メイヲールの両手で挟まれ、血飛沫ちしぶきが舞う。


「ウォレフ!」


 鷹也は、メイヲールの右手首を斬り落とし、ウォレフを挟んだ手から解放する。

 メイヲールの胸へ倒れゆくウォレフを抱え、その胸を蹴って飛ぶと、翼を広げ、城の端まで大きく離れた。


「ウォレフ! 大丈夫か! しっかりしろ!」


 血塗まみれのウォレフは、鷹也の頬に手を伸ばした。


「メイヲールの再生能力は速い……」


「喋らなくていい、生きることだけに気を張ってくれ」


「鷹也、すまない……逃げろと言いたいが、あれを……メイヲールをこの城から出してはいけない」


「解った、だからもう喋るな、生きてくれ!」


「鷹也……世界を救え……」


 香織……

 鷹也を死地へと向かわせる俺を

 きっと、お前は許してくれないだろうな。

 お前のように、俺もまた、鷹也の父で在りたかった。

 なぁ、香織……

 そっちなら……俺のプロポーズ、受けてくれるよな?


 ウォレフは、静かに目を閉じた。


「ウォレフーーーッ!」


第27話「LunarEclipse 中篇」へ つづく


更新が開いてしまったので、一旦区切って、次回は中篇にしたいと思います。

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