第25話「解かれた封印」
読んでくださる方に、合う作品であることを祈りつつ。
2018/03/30 加筆修正。
「兄さんは、どうして判ったの?」
動体視力の良い自分でさえ、追うのがやっとだったエクリプスの本体をどうして兄のガーランドが、捉える事が出来たのか、不思議でならなかった。
「エクリプスの分身は、フェイントや分裂するタイミングは違っても、動くルートが同じなんだ。仮に、エクリプスの動きを数字の8の字だったとすると、交わる点で分身を残しているんだ。幾ら動き回っても、所詮は、8の字のレールの上という訳だ。まぁ、それもこれも、エクリプスの行き先を伝えてくれたレイリア、お前のお陰だ」
エクリプスに伝えなければ、グリンウェルのルートを。
レイリアにとって、エクリプス(鷹也)も、次兄オズワルドの仇である。しかし、それよりも、グリンウェルへの恨みの方が勝っていた。
鷹也とグリンウェルの激しい戦いの最中、ただ一人、冷静に状況を判断する者が居た。
「申し訳ないが、ワシではアンタを担ぐことは出来ない」
すでにクレアは、シューレットによって薬で眠らされ、肩に担がれていた。
「こんな時代で、その歳まで生き延びてきたのは伊達じゃないな。俺に構うなシューレット、クレアと共にこの城を出ろ。出来ればレイリアを連れて行ってやってくれないか?」
だが、レイリアは、その申し出を断った。
「アタシはいい、さっきも言ったが兄の仇を討ちたい。もし、足手まといになるようなら、その時は……ウォレフ、アンタの手でアタシを殺してくれ」
シューレットは、鷹也に声を掛けることなく、静かに城を後にした。
再び、生きて逢おう、鷹也!
グリンウェルの手に妖気を集中させた防御も、自分より妖気の高い物に、効果は期待できない。
更には、攻撃できたとしても、剣で受けられたら、傷つくのは自分なのである。
受け止める防御から、攻撃を流したり、躱す防御に変え、反撃するタイミングを窺っていた。
この妖気の大きさ、間違いなくメイヲールの角を加工した物だ。
何故、切り離された物が、妖気を保っていられる!
否、今は考えている暇など無い!
アルベルトめ、余計な物を!
グリンウェルは、精神的優位性を保つため、真実を語り始めた。
「君の母、そして、父であるアルベルトを死へ導いたのは私だ。君の伯父、カイルは面白いように踊ってくれたよ」
それを聞いてもなお、まだ動くことのできないウォレフは、自分への不甲斐なさに、その怒りの矛先を地面へ撃ちつけた。
「今更、そんな話をして何になる!」
鷹也は、冷静にグリンウェルの話に巻き込まれないように、攻撃を続ける。
「君は……カイルが、人間にミサイルのボタンを押させたと思っているのか?」
その言葉で、鷹也の攻撃が止まる。
「どういう意味だ」
「私が、汚れ役を買って出たのだよ。まぁ、君にしてみれば、了承したカイルも同罪だろうがな」
「言いたいことは、それだけか?」
そう言って、剣を構えたが、グリンウェルは話を続ける。
「君は、知ってるか? 君の父親を殺すのに、核が何発撃たれたかを?」
グリンウェルは、一定の間合いを保ちながら、ゆっくり歩き話を続け、鷹也は黙ってその答えを待った。
「歴史上では、1発ということになっているが、あれは保身のために人間がついた嘘だよ。だが、私はそれを利用させてもらった。なんせ、最初の1発は……私が押したのだからな」
「なに?」
「私は心配性でね、脅したところで、撃たないかもしれないだろ?態々《わざわざ》、夜に出向いて基地内の人間を全て殺し、協定が結ばれる昼まで待ったんだ。だが、1発命中すると、人間は怯え、次々とボタンは押されていったんだよ」
話が終わると同時に、グリンウェルが仕掛ける。
次々に、グリンウェルは分裂し、鷹也の四方を囲む。
ルートは、さっきと同じだ。
だが、私には最後の分岐ルート(頭上)がある。
見えているだけが、全てではないのだよ!
終わりだ! 死ね!
グリンウェルの渾身の拳が、鷹也の頭を捕らえようとしたその時、
「エクリプス! 上!」
その叫び声だけに反応して、鷹也は頭上に居るであろうグリンウェルへ、鋭く剣を振った。
振られた剣は、グリンウェル、そして、それを掴んでいたレイリアを真っ二つにした。
レイリアは、もぎ取られた羽根を戻すことだけに集中していた。
飛べはしたものの、その速さに耐えられず、羽根は途中で剥がれ落ちたが、グリンウェルを掴むことは出来た。
「女に助けられるとはな!」
そう言って、グリンウェルは血を吐き、鷹也を睨んだ。
「女を人質にした、アンタが言える立場か!」
皮肉を籠め、グリンウェルを罵った。
「レイリア!」
「気にするな、ガーランド兄さんの仇は討てたんだ。アンタを殺せないのが口惜しいが、それはあの世でオズ兄さんに謝るよ」
そう言って、レイリアは永遠に瞼を閉じた。
鷹也は、胴が切断されたグリンウェルへと近づき、剣を構える。
「最後に言いたいことはあるか?」
「鷹也! グリンに時間を与えるな!」
「ウォレフ……もう遅い、もう遅いんだよ」
「世界を滅ぼしてどうする!」
理解ができない鷹也は、答えを求めた。
「何を言ってるんだ?」
「君は私に勝てたが、この勝負……引き分けということだ。私の居ない世界が、どうなろうが知ったことじゃない」
「やめろーーーっ!」
「さぁ、地獄の幕開けだ」
第26話「LunarEclipse 前篇」へ つづく




