第19話「ジーク」
読んでくださる方に、合う作品であることを祈りつつ
2018/03/30 加筆修正。
その身が消える最期まで、憤怒の眼差しは、アルベルトを捉えて放さなかった。
闘いは、時間にして15分と短かったものの、スタミナは切れる寸前まで消耗しきっていた。
息を荒くしたウォレフとグリンウェルは床に座り込み、アルベルトは両手を膝に付いて、立ってるのがやっとだった。
「まったく、メイヲールもそうだが、お前もバケモンだな」
「ホントですよ、メインで闘っていて、よくもまぁ平然と立って居られますね」
「鍛え方が違うのでな」
カイルは、笑ってそう答えたのだが、
「マジなのか、冗談なのか判らねーな」
ようやく4人から緊張が解けたところで、アルベルトがウォレフをからかう。
「それにしても……『ど、ど、どうするよぉ』って、ウォレフの演技が下手だったから、冷や冷やしたよ」
「そ、そうかぁ?」
「そうですよ。奴が馬鹿だったから、助かったようなもんです」
普段は、冗談を言わないグリンウェルまでも、その冗談に乗ってくる不思議な空気に包まれていた。
これが4人で一緒に笑った、最初で最後となる。
「そ、そんな事よりもだ。機械に封じ込めなくても、あのままナンバーシステムで、殺れたんじゃないのか?」
ウォレフが言う、ナンバーシステムとは、戦闘中に掛け合っていた3桁の数字で、一桁一桁に意味を持っていた。
百の位は、4人それぞれに数字を割り当て、
十の位は、メイヲールの体を0~9に割りふり、
一の位は、奇数なら攻撃、偶数ならフェイントとした。
つまり、『誰が』『何処を』『どうする』と言う文章になっていて、例えば「241」なら「アルベルトが背中を攻撃する」と、いった具合だった。
アルベルトは、右手に持ったメイヲールの角を眺めながら、ウォレフの疑問に答えた。
「それは、無理だろうね。奴の再生能力は、異常に早い。原子分解が始まる前には、角以外は再生してただろ? 奴が冷静を取り戻して、相打ち狙い覚悟で攻撃されたら……こっちは即死だからね」
「ところで……機械が壊れて、封印が解ける可能性は無いのですか?」
「外部から壊されない限り、大丈夫だ」
「では、監視役が必要なんですね。私にさせて貰えませんか?」
「嫌な役だから、作戦を立てた僕がしようと思ってたんだが……いいのか?」
「えぇ、私は人一倍臆病ですからね。他の人が管理しているより、自分が管理している方が安心して眠れるんですよ」
「じゃぁ、グリンウェルにお願いするよ。封印が解ける可能性がある事を、いつまでも忘れる事のないように、奴の名……『メイヲール』をこの城に刻もう」
4人は陽が登る前に、それぞれの家へ帰ろうとメイヲールの城から出ようとしたその時、門の前に突如として現れた得体の知れない大きな気配に、飲み込まれる。
「な、なんだ? この妖気は……まさか! メイヲールか?」
「違う! 兄さん、これは妖気なんかじゃない! しかも、メイヲールよりも遥かに……危険な感じがする!」
門の居る者は光に包まれていて、実体が何なのか解らない。
その光が放つプレッシャーに、メイヲールと闘った勇者である筈のウォレフとグリンウェルは、動くどころか声さえも出す事が出来ないでいた。
「貴様! 何者だ!」
その光は、声を出す事なく、地上に居る全てのヴァンパイアの精神に響かせた。
「全ての魔を浄化しに来た、神の遣いだと! ふざけるな!」
「兄さん!」
アルベルトでさえも、声を出すのが背一杯だった。
そんな中で、唯一カイルは妖気を最大限に高め、その光に向かって飛び掛かる。
しかし、その光が放つプレッシャーは、まるで風圧のように襲いかかり、カイルを10m以内に近づけさせなかった。
空気に溶け込むように、別の空間へと引きずり込まれながらも、カイルは最後まで叫んでいた。
「貴様の名は忘れんぞ! ジー……ザ……」
第20話「王の器」へ つづく




