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MoonLit  作者:
Lunar Eclipse
36/105

第18話「メイヲールの誤算」

読んでくださる方に、合う作品であることを祈りつつ。



2018/03/30 加筆修正。

 炎に包まれた城の中で、カーライルは死を覚悟せざるを得なかった。

 その城を炎で包んだけものは、天井よりも高く、その身が収まる部屋など、此処には存在しなかった。

 破壊しなくては、先を進む事すら出来ない窮屈きゅうくつなその場所を不快に感じるどころか、不気味に笑いながら壊し続け、その城のあるじを追い詰めていた。


「蚊ノ族長トハ、ソンナモノカ?」


 カーライルは、決して弱い存在ではなく、歴代のドラキュラ王と比べても5本の指に入るほどだった。

 ただ、突如として目の前に降りたった山羊の顔をした魔人の方が、異常なだけだったのである。


 死から逃れられないことが解っているだけに、ドラキュラの再生能力が返ってうとましく思えた。

 じわじわと死刑台へ続く階段を一歩、また一歩と上るような気分を味わいながら、せめて一矢を報いるチャンスを伺っていたそんな時、相手の気がれるのを感じとった。

 明らかにその視線は、自分の後方を……


 こ、この妖気!


「来るな! カイル! アルベルトを連れて、逃げろ……」


 一瞬の出来事だった。

 振り返って息子へ注意を呼びかけた瞬間、メイヲールの手刀によって、カーライルの身は真っ二つに切り裂かれた。

 この時、既にメイヲールの関心はカーライルには無く、そのカイルと呼ばれた少年に向けられていた。

 なぜなら、子供であるにも関わらず、その身から発せられていた妖気は、既に父親を凌駕していたからである。


 父親が裂かれて行く様を目の当たりにしても、少年は悲鳴をあげる事もなく、それどころか恐怖さえも感じていない様子だった。


 メイヲールは、ゆっくりと少年へ近づき、右拳を振り上げた後、それを少年へ目掛けて振り下ろしす。

 少年は、またたくく事もせず、また、その拳が鼻先をかすめても動こうともせず、目前の死へと招くけものから目を離さなかった。


 メイヲールは、地響じひびきがするほどに笑い、


「楽シミハ、残シテオクカ」


 そう言い残すと、その身を隠すほどの翼を大きく広げ、空の彼方へと消えていった。


  ・

  ・

  ・


 時は過ぎ去り、少年は青年へと成長していた。

 その青年は、弟を伴い、父を殺した獣の城に来ていた。

 その弟も兄に引けを取らない高い妖気、そして、脅えるという言葉を知らないような目をしていた。


「覚えているか? メイヲール!」


「アノ時ノ餓鬼カ? 何シニ来タ? 仇討チニデモ来タノカ?」


「僕が君を見てみたいって言ったから、兄さんに連れて来てもらっただけだよ」


 見せ物呼ばわりした事が、メイヲールの怒りを呼び、身をゆだねていた玉座から立ち上がらせた。

 カイルは構えたが、アルベルトは笑ってこう言った。


「楽しみは、後に残すんじゃなかったのか? 僕らは、まだ成長段階にある。待てば、もっと楽しめると思うよ」


「ナカナカ利口ナ餓鬼ダナ……マァ、ヨカロウ、気ガ変ワラヌ内ニ、失セルガイイ」


 蝙蝠こうもりの兄弟は、山羊の城を後にして、再び深い森を抜けて行った。


「どうだった?」


「思った以上だったよ。戦闘時でもないのに、兄さんの3倍以上の妖気を感じた……」


れそうか?」


「きっと奴は……二度も僕らを逃がした事を後悔するよ」


  ・

  ・

  ・


 カイルは、メイヲールの左手に握り潰されようとしていた。

 他の3名の攻撃も、カイルを握った左手で払うことで、攻撃に一瞬の躊躇ちゅうちょを与え、思うように攻撃が出来ないでいた。


「ど、ど、どうするよぉ! アルベルトォ~! あれ? アルベルトは?」


 気が付けば、アルベルトの姿はなかった。


「逃ゲタカ……ドウスル? オ前達モ逃ゲルカ?」


「そうですね……元々、我々は乗り気ではなかったからね」


「なに言ってんだ、グリン!」


「このまま残っても、犬死するだけですよ。この辺りにして、我々も帰りましょうか……今です! カイル!」


 呻き声をあげ続けていた筈のカイルがニヤリと笑うと、まるで爆発したかのように妖気がふくらみ、握られていた手を破裂させた。


「ナ、ナンダト!」


 更に、上から襲いくる何かを感じとって見上げたが、


「遅い!」


 天井に飾られていた石像に隠れていたアルベルトが、上空から襲いかかり、メイヲールの角を叩き折った。

 メイヲールは怒り狂い、声を荒げる。

 それは、激しい痛みよりも、角を折られた屈辱に対する怒りだった。


「蚊ノ分際デ、我ガ角ヲ! 許サヌ! 許サヌゾ!」


「行くぞ!」


 アルベルトの掛け声により、波状はじょう攻撃が始まる。


「右脇腹だ! ウォレフ!」 


「愚カナ!」


 メイヲールは、その右脇腹へ渾身の右拳を振った。

 だが、そこにウォレフの姿はなく、その間にグリンウェルが左耳を剃ぎ落とした。


「喉が開いてるぞ! アルベルト!」


 喉元を狙うアルベルトを警戒したが、アルベルトは直前で反転し、その間に左足のアキレス腱をカイルによって切り裂かれ、メイヲールは膝を落とした。


「グリンウェル! 右足のアキレス腱も切り裂け!」


「ソンナ、クダラナイ嘘ニ、何度モ……」


 今回もフェイクだと思われた言葉が、現実のものとなりメイヲールは両膝をつく事になる。

 カイル達は、次々と声を掛けて攻撃を繰り出していった。

 虚と実が入り乱れ、メイヲールを混乱させる。


 掛けられた方にしてみれば、複雑に感じるその罠も、先に名前を言えば本当で、先に場所を言えば嘘と、実は極めて単純な物だった。

 そして、怒りに狂うメイヲールが気づく前に、攻撃システムは変わる。


「241」「188」「478」「335」


 さまざまな3桁の数字が、4人から飛び交った。

 聞く側にとって、その数字は暗号というより、まるで呪文のような感じを受け、更なる混乱を呼んだ。


 わずらわしく感じたメイヲールは、自分の周り全てを吹き飛ばすような攻撃に替えたが、逆にそれがメイヲール自身の首を締める。

 当たれば即死する攻撃ではあったが、大振りになった事でカイルが懐に潜り込み、鳩尾みぞおちえぐるように突き上げた。

 息が詰まるような苦しみに、メイヲールは、生まれて初めて膝を突いた。

 そこへ、死角から飛び込んできたウォレフが、両目を傷つける。


「ウォォォォォォォォォォォォォーーーーーーッ!!」


 怒り、苦しみ、屈辱、様々な感情に我を忘れ、メイヲールは見えない敵へ、闇雲に攻撃をし続けた。


「今だ!」


 アルベルト・ウォレフ・グリンウェルの3人は、転移装置を取り出しレーザーを放出、メイヲールを中心に一辺が50mの三角の立方体を築いた。

 その間、カイルは暴れるメイヲールが、範囲外に出ないように攻撃を続ける。


「兄さん!」


 その声を合図に、カイルは原子分解されるエリアから飛び出した。

 メイヲールも、それに続こうとしたが、時既に遅く原子分解が始まる。

 足元から消えていくメイヲールは、アルベルトをにらみながら、こう言い残した。


「ユメユメ忘レルナ! 我ハ必ズ蘇リ! 貴様ラダケデハ無ク! 必ズヤ、地上ニ生キル全テノ者ヲ……皆殺シニシテヤル!」


第19話「ジーク」へ つづく


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