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MoonLit  作者:
Lunar Eclipse
34/105

第16話「吸血の儀式」

読んでくださる方に、合う作品であることを祈りつつ。


2018/03/29 加筆修正。

 薄い消毒液の匂いが芳香剤のように香り、カーテンを揺らす心地よい風は、この部屋で眠る青年のまぶたをいつまでも閉じさせるような印象を与えていた。


「いつになれば、目を覚ます?」


「身体の方は、既に完治しておりますが、目覚めに関しましては、何とも言えません」


 担当医は、ありのままの現状をウォレフに述べた。

 入院中に一度は目を覚ましたものの、再び眠りにつき、既に三日が経とうとしていた。

 早く目覚めて欲しい反面、目覚めなければ、クレアが連れ去られた事を知られないで済むという安堵もあった。

 もし、連れ去られた事を知れば、何の策もなく飛び出した末、グリンウェルの手駒にされるのは、目に見えていた。


 開けられた扉を軽くノックして、首をギプスで固めたパドロが入って来た。


「鷹也君は、目覚めましたか?」


「いいや、未だだ。お前の方は、どうだ?」


「私は……首がかゆくても掻けないのが、不自由なくらいです」


 暫く談笑を重ねた後、真剣な面持ちでパドロが切り出した。


「アルベルトさんの研究書物で解った事なんですが……彼のDNAを調べたところ、ドラキュラ特有の『吸血の儀式』が済んでいないようなんです」


 吸血の儀式とは、ドラキュラ界での『成人式』のようなもので、10歳を迎えた時に1人で狩りをし、一人前になったことを証明するものだった。


「そんなことまで、DNAで解るのか。だが、それが何かあるのか?」


「研究書には、吸血の儀式は形式だけの物ではなく、ドラキュラとしての成長の鍵になるものではないか?と記されておりました。で、詳しく調べました結果、それに記された通りでして、鷹也君のDNAは、幼年期のドラキュラと同じで、まだ、成人としてのドラキュラのDNAが活動してないのです。人でもまれに起こる事なんですが、両親の身長が低くくても、その間に生まれた子が、大柄に育つ場合があるんです。それは、成長期が遅れた事による……」


 ウォレフは、手を軽く振って、長くなりそうな説明を打ち切った。


「つまり、何が言いたい?」


「つまり……血を吸えば、彼はもっと強くなるのではないかと……」


「今以上にか!」


「陛下以上に……いや、もしかしたら……」


 その時、静かだった病院に慌ただしく駆ける寄る足音と、それを注意する看護婦の声が響いた。


「閣下!」


「病院で騒ぐな! 何があった?」


「も、申し訳ありません! シュ、シューレットが……何処にも見あたりません!」


「何! 探せ! クレアに続き、シューレットまでも捕まえられる訳にはいかん!」


 思わず出た言葉だった。

 しかし、それはベッドで眠る青年にとってのアラームとなる。

 激しく吹き出した妖気と共に飛び起き、壁に掛けていたローブを殴るように掴むと、窓を割って外へと飛び出した。


「待て! 鷹也!」


 待たない事を解っていても、そう叫ばずにはいられなかった。

 だが、瞬時に冷静を取り戻したウオレフは、周囲に居る憲兵に命じた。


「門を閉めろ! 鷹也を国から出すな!」


 だが鷹也は、そのまま一直線に飛び、閉まろうとする門の間をすり抜けて、レーザーの海へ。

 5m間隔に備えつけられたそれは、土砂降りの雨のように容赦なく、鷹也へと降り注いだ。

 しかし、アルベルトのローブが、全てを無効する。

 あっという間に、イマジニアの包囲網を抜け、鷹也はグリンウェルの城を目指し、飛び去った。


「俺も行かねばならんようだな……メイヲールに……」


 グリンウェルの住む城の名を口にした時、ウォレフは今まで忘れていた、アルベルトの言葉を思い出す。


「いつまでも忘れる事のないように、奴の名……メイヲールをこの城に刻もう」


 それは、恐怖と絶望を伴う名だった。


第17話「山羊の魔人」へ つづく


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