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MoonLit  作者:
Lunar Eclipse
27/105

第9話「食事をはじめよう」

読んでくださる方に、合う作品であることを祈りつつ。


2018/03/27 加筆修正


物語の中に、残虐な文章があります。

気分を害されるかもしれませんので、ご注意ください。


「俺は、助けられたのかも知れない」


 かたきでもあったが、最後に残った親族でもあった。

 敵対するその瞬間まで、カイルは優しい伯父に見えた。

 あれが演じていたとは、今でも思えない。


 矢張り……あの時、俺を呼んだのは、カイルだったのだろうか?


「口には出さなかったが、カイルはアルベルトを失って、いていたようだった」


 ウォレフにとってカイルは、友の命を奪った仇ではあったが、そのカイルもまた友の一人だった。


「俺は今でも……お前の母を殺したのは、グリンウェルの入れ知恵じゃないかと思ってる」


「グリンウェル?」


「あぁ、今し方お前との闘いを見に来たドラキュラだ。奴には野心があり、策士だからな……」


  ・

  ・

  ・


「カイル! 貴様!」


 ウォレフは、カイルの姿を見るなり、飛び掛かる。

 放たれた拳は、カイルに届く前に、横に居たグリンウェルに手首をつかまれ抑えられる。


「ウォレフ、謀叛むほんでも起こす気か?」


謀叛むほんだと? じゃぁ、王のアルベルトをったのは、謀叛むほんじゃねーのか?」


「何を言っているんだ。アルベルトを殺したのは、人間じゃないか」


「お前……お前なのか?」


 グリンウェルほどのヴァンパイアが、アルベルトとカイルが闘っていた妖気に、気付かない訳がない。

 つかまれた手首を振りほどき、怒りのおもむくままに怒鳴った。


「グリンの入れ知恵にでも乗ったか、カイル!」


「何のことだ? 言い掛かりも、大概たいがいにしてもらおうか!」


「俺は、カイルに聞いてる! お前になど聞いていない!」


 カイルは、何も答えないままに、その場を立ち去ろうとする。


「待て、カイル! 未だ、話は終わってねーぞ!」


 ウォレフは、カイルの背を追おうとしたが、その前にグリンウェルが立ちはだかる。


「ウォレフ、アルベルトの葬儀に免じて、ここは見逃してやる。国へ帰れ!」


「テメーに、指図される覚えはねーな!」


 ウォレフは、大きく呼吸して、戦闘体勢に入った。

 それを見て、グリンウェルは鼻で笑う。


「ウォレフ、私は構わないが……アルベルト亡き今、イマジニアを守るのは、お前じゃないのか?」


 ――あとは、頼む。

 

 脳裏にアルベルトの言葉がよぎる。


 落ち着け、落ち着くんだ!

 今やれば、間違いなく犬死だ。

 喉を喰い千切ちぎってやりたいが、ここは我慢だ!

 

 ウォレフは、血が出る程に歯を喰いしばりながらも、何も言わず、その場を去るのだった。



 そして、姿なきまま、アルベルトの葬儀が行われる。

 それは、全てのヴァンパイアが集められ、更にはテレビ中継まで行う、異様な光景だった。

 テレビから流れ出る歓声は、おぞましい狂喜で満ち溢れており、人々はミサイルを撃った人間を、軍を、政府を恨んだ。


 カイルに代わって、喪主を務めるグリンウェルが壇上に立ち、全世界へメッセージを送る。


 いつの時代も、人は愚かだ。


 ぶんわきまえず、

 過信かしんし、

 慢心まんしんし、

 傲慢ごうまんで、

 神にでも、成った気でいる。


 おのれに、正義が無きゆえに、

 神の名をかたって、

 争いを起こす。


 その欲は、

 底がないほどに罪深く、みにくい。


 かつて、その欲を満たすため、

 神の子をめた!

 にも関わらず、にも関わらずである!

 それをかえりみず!

 そこから、学ぼうともせず!

 再び、同じあやまちを犯した!


 人に優しい手を差し伸べた、

 我らの王にまで、

 その非道なるけがれた手を伸ばした!


 我が友、

 我が同胞たちよ!

 今こそ、

 人間が我らのかてで在ることを

 思い知らせようではないか!


 兄弟たちよ、

 何が、喰いたい?


 喉越しがいい、赤い血か?

 脂の乗った脇腹か?

 とろけるような口当たりの脳か?

 張りの良い、旨そうな女の太腿か?

 乳飲み子のやわらかい尻の肉か?

 骨の髄まで、しゃぶり尽くそうではないか!


 さぁ、食事をはじめよう!


第10話「再会」へ つづく


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