第7話「鷹也」
読んでくださる方に、合う作品であることを祈りつつ。
2018/03/26 加筆修正。
短剣ほどに伸びた爪、噴き出している妖気の大きさが、ウォレフを一回り大きく見せた。
「覚悟は、出来たか?」
その問いに、エクリプスは攻撃する事で答える。
大きく振られた剣を左爪で弾き返した後、残った右爪で、下から掬い上げた。
エクリプスは、反射的に後ろへ飛んだものの、僅かだがローブを切り裂かれた。
続けてウォレフは止まることなく、両手の爪をまるで槍のように突いたり、鞭のように撓らせてみせた。
爪ばかりに注意が行っていたエクリプスは、ウォレフの蹴りで薙払われ、地面に倒される。
そこへ容赦なく、豪雨のような爪の攻撃が、激しく降り注いだ。
エクリプスは、ゴロゴロと地面を転がりながらも、剣でウォレフの足を刈りに行く。
飛ばれて避けられはしたが、再び間合いは開かれ、立ち上がることが出来た。
「カイルから、この国を守って来たのは、伊達ではないのでな。そろそろ、終わりにしようか?」
不審な妖気が気になっていたグリンウェルは、陽が沈むのを待って、ラズウェルドの城へ出向いていた。
「やはり、殺されていたか……」
ラズウェルドの亡骸は、左肩から股下に斬り裂かれており、恐怖のままに固まった顔が、如何に恐ろしかったかを想像させた。
「ん? まただ!」
再び、現れた大きな妖気に、神経を集中させる。
「あの方向……ウォレフが、全開で飛ばしているだと!?」
一体、何が居る!
ぶつかり合う二つの大きな妖気を目指し、グリンウェルはラズウェルドの城を後にした。
追い詰められたエクリプスは、妖気を限界まで上昇させる。
まだ、完成しちゃいないが、試してみるか……
覚悟を決めたエクリプスとは相反して、ウォレフは闘っている相手よりも、別の方角を気にしていた。
こちらに、来るか?
突然、ウォレフは咆哮し、それと呼応するように、重量感ある音を出して正門が開かれる。
「鷹也! 中に入れ!」
「何故、俺の名を知っている!」
「説明は後だ! 急げ!」
言われるがままに鷹也は、開かれた門へ飛び込んだ。
入ったと同時に、再び、門は閉ざされた。
「思ったより、早かったな……」
風を切り裂いて、一羽のコウモリが舞い降りた。
「久しぶりだなウォレフ、アルベルトの葬儀以来か?」
「何しに来た?」
「闘っていた相手は、誰だ?」
「カイルだ」
「笑わせるな、あの程度がカイルなものか! 忘れたのか? 私もカイルの力を知っている一人だと言うことを!」
「そうだったな」
「質問を変えよう、国の中へ入れたのか?」
アルベルトが人間との和平を持ち出す際に、少しでも信頼を得ようと、人間へ妖気を計測できるレーダーを渡していた。
だが、そのレーダーを見る事によって、留守中に人間からの侵略が懸念された為、アルベルトは、国を持つヴァンパイア王たちにも、妖気を遮断する装置を渡していたのである。
だが中には、ラズウェルドのように、力を誇示することに喜びを感じ、あえて装置を設置しない者も少なくはなかった。
他の国々では、城を覆うのがやっとだったが、イマジニアでは国全体を覆うほどの装置が存在していたのである。
「そうであろうとなかろうと、貴様の質問に答える義理はなかった筈だが? それとも、力尽くで聞くか?」
「相変わらず、嘘が下手だな。カイルと言っておきながら、隠す必要があるのか? まぁ、いいだろう、見当は付いている」
グリンウェルは、再び翼を広げ自分の治める国へと飛び去っていた。
「おそらく、あの時の……カイルを狩ったヴァンパイアに間違いないだろう。ウォレフにガーランド、それにエクリプスも居たな……面倒なことになった」
第8話「回想」へ つづく




