第6話「狼と鷹」
読んでくださる方に、合う作品であることを祈りつつ。
2018/03/26 加筆修正。
――平和。
その言葉を実現する為に、イマジニアは進化を遂げてきた。
ヴァンパイアが存在するこんな時代で、独立し平和を維持するには、装備や医療は勿論のこと、様々《さまざま》な分野で発展する必要があった。
待遇を良くすることで人材を募り、研究に多くの国費を投入してきた。
人材が人材を呼び、そして、最新技術が生まれることで、更に研究者たちを呼んで、現在の要塞とまで呼ばれる国までになったのである。
「大きな妖気を持った者が、あと5分ほどでコチラに来ます!」
「ヴァンパイア用、対空追尾ミサイル用意、撃て!」
一発のミサイルが唸りを上げ、ヴァンパイアに向かって飛んで行く。
そのミサイルが、接触まで3kmを切った所で破裂すると、中から1000発の小型ミサイルが、妖気を感知する相手に襲い掛かる。
しかし、エクリプスは動揺することなく長剣を抜くと、それを悉く斬り払って、進路を変更しないまま一直線にイマジニアへと向かう。
エクリプスの視界にイマジニアが入った頃、今度は壁面に配置された無数のレーザー砲が、エクリプスを狙う。
しかし、レーザーは正確にエクリプスを捉えたものの、エクリプスが羽織るローブによって全て跳ね返され、傷一つ与えられないまま、審査エリア前の正門まで侵入を許してしまう。
「止まれ!」
憲兵の指図に耳を傾ける事なく、黒衣の侵入者エクリプスは、堅く閉ざされた正門の前へと歩み出した。
「武器を所持したまま、入国させる訳には行かん!」
前に立ち塞がった憲兵に、エクリプスは長剣を向け、
「退かぬなら、斬る」
異常事態を知らせる警告音が響き渡ると、横幅30mからなる鋼鉄の正門を隠す程に、憲兵が集まった。
「狼でも、群れるんだな……」
兵達に聞こえたかどうかは、定かではない。
その時、突如として門が開き、この国の王が現れる。
「狼王ウォレフだな、エクリプスの名において、貴様を狩りに来た」
ウォレフは、憲兵達を門の中へ入るように指示する。
「俺には、敵が多い……人にも、ヴァンパイアにもな。だが、お前が俺の敵になるとは思わなかった。やはりハンターは、ハンターでしかないのか?」
「貴様は確かに、王として素晴らしい。殺すには、実に惜しいのも確かだ……だが、貴様の後は、どうなる? 良き王に成ると言えるか?」
「芽は摘むと言う訳か……ならば、ヴァンパイアを狩った後……人も狩るのか?」
「あの世で、その答えを待つんだな……月は満ちた、あとは欠け逝くのみ」
風よりも速く襲いかかるエクリプスをウォレフは右の拳1つで弾き飛ばした。
「随分と舐められたものだな。人のままで、俺を狩れるとでも思ったか? ラズウェルドを殺った時は、そんな程度じゃなかったろ?」
「そんなに見たければ、見せてやる!」
エクリプスは、心の赴くままに妖気を解放した。
「ほぉ……その力で、カイルを狩ったと言う訳か?」
会話に興味のなくなったエクリプスは、それに答えないまま長剣を振り出した。
エクリプスの剣は速く、ウォレフに攻撃へ転じるこを許さない。
防戦一方だったウォレフは、後方に大きく跳んで、間合いを開き、攻撃に転じるために構える。
「その程度で、よくカイルに勝てたな。今度は、私の番だ! よく見るがいい!」
まるで突風のような妖気が、ウォレフの体から吹き上げていく。
第7話「鷹也」へ つづく




