第2話「欠け始めた月」
読んでくださる方に、合う作品であることを祈りつつ。
20118/02/05 修正しました。
――ドラキュラを狩る人間が居る。
エクリプスが、その名を轟かせるのに、時間は掛からなかった。
何故なら、軍が所持する紫外線兵器でさえ、不死の能力を持つドラキュラに致命傷を与えられず、ドラキュラを狩った実績が無かったからである。
報酬は高くつくが、多くの人々から英雄のように呼ばれていた。
しかし、それを疎ましく思う人間も居た。
軍の上層部である。
「今まで世界を守って来たのは、誰だと思ってるんだ! このままでは、いずれ軍の縮小を唱える者も現れるだろう」
「どうでしょう? いっそエクリプスとやらを軍に抱えてみては?」
「軍の縮小が早まるだけだ。奴一人で事足りるのだからな! 幾ら奴の報酬が高いとは言え、軍の維持費からすれば微々たるものだ」
一方その頃、ヴァンパイア側でも、緊急会議が開かれていた。
"王の保留"以来の会議であっただけに、会議室には重苦しい空気が流れていた。
全員が揃ったことを確認して、議長を勤めるグリンウェルが口を開いた。
「最近、エクリプスと言う名の人間がドラキュラを狩っている。そこでだが……我々が協力して"その人間"を葬り去らんか?」
「何かと思えば、人間如きに協力だと? 呆けたか、グリンウェル?」
「だがなラズウェルド。エバンス、バーグマン、アクロリアル……既にドラキュラが三人も殺られている。もしかしたら、姿を見せないカイルも……」
「馬鹿な! カイルを殺れる人間など居るものか!」
「忘れたのか? ジークを!」
ジーク。
それは、一瞬で彼らを封印した人間。
彼らは忌み嫌って、神の実子をジークと略して呼んでいた。
「ジ、ジークは、人の手によって殺されたのだぞ………幾ら温厚な神でも……」
「堕落した人間共に、もう一度、神の威厳を見せたいのかも知れんぞ? 過大評価かも知れんが、エクリプスの名で既に三人消されているのは事実だ。賛同して頂きたい!」
その時、三人のドラキュラが席を立ち部屋を出ようとした。
「何処へ行く!」
その一人が、グリンウェルの質問に答える。
「王を決めるのかと思えば随分とクダラナイ会議だ。エクリプスだかジークだか知らんが、例えカイルを殺ったとしても、我らの敵では無い!」
グリンウェルが、王の保留を持ちかけたのも、実は『この3兄弟がドラキュラを死滅に追い込み兼ねない』と考えたからであった。三人揃えばカイルをも凌駕するとさえ言われており、カイルの暗殺まで疑われていたのである。
「お前らはジークを知らんから、そんなことが言えるんじゃ!」
「爺、その身で教えてやろうか?」
「止めろ! ガーランド!」
「グリン、テメェ王になったつもりか? まぁ、いいだろう。今の内に、王でも気取っておくんだな!」
あざ笑うかのような背中を残し、3人は部屋をあとにした。これで反対者は出ないであろうと思われたのだが、何処に現れるか解らないエクリプスの為に、ドラキュラが1ヶ所に集まれば、その他の統治している国が人間に奪われ兼ねないことを懸念され、会議は何も決まらないままに終了した。
読んでくれて、ありがとう。
次回「流浪」




