第1話「帰れる場所」
読んでくださる方に、合う作品であることを祈りつつ。
2018/01/21 加筆修正を行いました。
空が白い……
俺は……
寝ているのか?
それにしても……
悪い夢だった……
ん?
違う!
夢から現実世界に戻された兵士は、気を失った場所と違うことに気づいて、咄嗟にそれを口にした。
「此処は、何処だ!」
「ようやく、目が覚めたか?」
まだ目が霞んでよく見えないが、白い靄の向こう側に、一人の男が立っていた。
男の年齢は、顔の皺や、携えている頭髪と顎鬚に白髪が多く混じっていたことから、推定で60歳ほど。
しかし、その体付きは、推定年齢から掛け離れており、腕は太く、40歳ほどの逞しさを感じた。
「此処は?」
再び、主だと思われる老父へ、同じ質問を繰り返した。
「此処は、ワシの家だ」
聞かれたことだけに答えると、老父は持っていたコーヒーカップに口を付ける。
「アンタ、誰なんだ?」
「随分なご挨拶だな。ワシは、お前を助けた人間なんだがな。化物にでも見えるのか?」
「そうか、俺はあの時、戦場で……す、すまない、助けてくれてありがとう」
その言葉を聞いて、ようやく老人は自分の名を口にした。
「ワシの名は、シューレット。戦場跡に出向いて金品や武器なんぞを拾って暮らしている。拾っているなんて言うと聞こえは良いが、ようは泥棒だな。だが、それを使う人間が居ないのだから取っても構わんだろ? 生きた人間を拾ったのは初めてだがな」
そう言って軽く微笑みながら、コーヒーを差し出した。
俺は、二度目か……
自分が化物である以上、人間である母親に拾われたのだろうと、心の中で皮肉った。
「お前さんは運が良い、戦場で気を失って、生き残るなんてな。さて、今度は、お前さんの名前を聞かせてもらおうか?」
「タカヤだ、助けてくれてありがとう」
「礼なんかいい、その代わりと言っちゃなんだが……ワシの仕事を手伝ってはもらえんか? こんな時代に生きて行くには、仲間は多い方が良いからな」
最早、俺が帰れる場所は何処にも無い。
軍へ戻ることも、同族とはいえ、化物と暮らす気にもなれなかった。
断るどころか、逆にお願いしたいくらいだった。
読んでくださって、ありがとうございます。
恐竜が滅びたように、いずれ人も滅びるのだろうか?
次回「滅びゆく世界」




