第1話「蝕と呼ばれた男」
読んでくださる方に、合う作品であることを祈りつつ。
2018/02/05 修正しました。
カイルと言う名の王が姿を消してから三ヶ月が過ぎた頃、その玉座を巡る争いが起こり、ヴァンパイア同士の自滅が始まった。
人との争いですら、危うくなってきた二年後。
事態を重く見たグリンウェルと言う名のドラキュラが、王位の保留を提言し、再び人間との領土争いは、ヴァンパイア側へと傾き始める。
後の世に『この頃の人間は、核を用いてもヴァンパイア王を狩れないどころか、5つの都市まで滅ぼされた二十五年前の記憶が、ヴァンパイアを追い込むまでに至らなかったのではないか?』と記される事となる。
雲の隙間から夕日に照らされ城は、主の目覚めを待っているかのように、その姿を主が好むような赤へと染めて行った。
その赤から薄暗い青へと色を変える頃、主が身を起こす前に、一人の招かざる客が訪れた。
その招かざる客は、正門から堂々と入り、その身を止めようとする門番を次々に凪ぎ払って、この城の主を目覚めさせる事となる。
不快な目覚めをさせられた主は、その客人を見るべく、広間へと足を運んだ。
黒衣の男が城主を確認すると、長剣を真一文字に抜きながら、こう言い放つ。
「我が名はエクリプス。月は満ちた、あとは欠け逝くのみ」
「"蝕(エクリプス)"とは、随分とフザケタ名だな。月の住人を蝕むとでも言いたいのか?」
主は、右手を軽く前に振り下ろして、命令を発する。
「どう欠けるのか、見せてもらおうか!」
すると一斉に数え切れない程の家来達が、あらゆる方向からエクリプスに襲い掛かかる。
エクリプスは臆することなく、舞うかのように剣を振り、あっと言う間に骸の山を築いていった。
いつまで経っても、傷一つ付けられない家来に痺れを切らせた主が、それを制した。
「半端な力量が己を過信させたな。人では越えられぬ壁を見せてやろう!」
主は風を切り裂くような速さで正面から近づき、右拳をエクリプスの頬目掛け大きく振った。
突き抜けた!
と思われた拳に殴った感触はなく、目前の人間は、既に剣を振り下ろした後だった。
「バカな……振り下ろした剣が見えぬとは……貴様……ひ、人なのか?」
主が真っ二つに裂けるのを目の当たりにした家来達は、悲鳴をあげて城の外へと飛び去って行った。
読んでくれて、ありがとう。
次回「欠け始めた月」




