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1 悩み。

「離縁します!」の夫サイドのお話しになります。

時間軸は、「離縁します!」の妻視点が始まる少し前です。

※夫のイメージが激しく壊れてしまう可能性もありますので、ご注意を!!


 明け方近く。

 目を開けるまでもなく、腕の中に抱えこんでしまっている存在に、またか、と嘆息する。


 ゆっくりと目を開ければ、どこまでも無防備に、気持ち良さそうに眠る、俺の妻。


 眠る前に細心の注意でもって引き離しているはずなのに。

 それにも関わらず、目が覚めればいつも必ず妻をしっかりと腕に抱きかかえた状態になっている。

 最初のうちは寝相が悪いというか、寝相もおかしい妻が寝ている間にくっついてきているのだろうと思っていたのだが、どうやらそうじゃないらしいことに気がついた。


 俺が。

 寝ている間に引き寄せてしまっているらしい。


 ・・・あと少しで夜が明ける。

 少し体温が高い妻は、肌寒い朝には、ひどく心地よく、手放し難いな、と思いつつも妻を起こさないように、そっと腕を解く。

 その振動を嫌がるように身じろぎした妻は、狭い寝台の中を壁側に向かって転がっていった。


 眠りが浅くなってきているのか、寝具の冷たさに小さく身震いした妻に上掛けをしっかりと掛けてやってから目を閉じる。


 しばらくして、陽が登りきるのとほぼ同時に、妻がゆっくりと寝台の上で体を起こす気配を感じた。

 そのまま動かずにいれば、そっと小さな手が腕に触れてくる。


「・・なさま、旦那さま。おはようございます」


 ささやくような小さな声が耳をくすぐる。


 視線を合わせないように薄く目を開けながら頷いて少し足を曲げると、妻は隙間からするり、と寝台を降りていく。

 着替えるために部屋を出て行く背中を見送って、まだ妻のぬくもりが残っている奥側へ移動した。


 やはり、温かい。


 毎朝のことながら、急激に襲ってくる眠気に目を閉じる。

 一瞬で意識が落ちていき、妻が部屋に入ってきた気配に、すぐにまた浮上する。


「旦那さま。旦那さま、起きてください。朝ごはんできましたよ?」


 目を瞑ったまま動かずに居れば、優しく腕をゆすられながら、少し大きめの声で声をかけられる。それに、ひとつ頷いて応えると、一歩離れた場所から妻が見つめてくる視線を感じたが、しばらくすると何も言わずに寝室から出て行った。


 薄く目を開けて、その後ろ姿を見送ってからゆっくりと身体を起こし、額に手をつくと、深いため息が漏れる。


 今日もまた。

 妻に声をかけることが出来なかった。


 ここのところ、妻の様子がおかしいことには気付いている。


 もともと、普段から少し変わった言動が目立つ妻だが、それはそれでなかなか面白くて気に入っているから問題ない。


 突飛な言動とは別に、なにがどうおかしいのかはっきりとはわからないのだが、最近なんだか妙に落ち込んでいたり、考え事をしていることが多い気がする。

 悲しそうな雰囲気になることもあり、そんな時は決まって何か言いたげな様子を見せるのだが、妻から何かをいってくることはない。

 常に考え事をしているせいか、動きにも精彩がなく、俺と視線を合わせることも少なくなって来ていた。


 何か、悩みでもあるのだろうか?


 月に一度、強制的に参加が義務付られている勉強会の主催者であるシディアに、何か変わったことがなかったか確認したが、特にこれと言って何もないという。

 ただ、勉強会の最中もやはり元気がなく、ぼんやりとしていることが多いらしい。


 一体、何をそんなに悩んでいるのだろうか?

 その悩みを聞き出して、原因を排除してやりたいと、毎朝妻に声をかけようと思っているのだが。

 いつも直前になると、ひとつの可能性への不安が、言葉を飲み込ませる。


 もしも。

 妻が実家に帰りたい、と言い出したなら?


 妻は、この街の出身ではない。この大陸の出身ですらない。

 誰にも行き着くことの出来ない遥か彼方で生まれ育った、訪れし者と呼ばれる存在。その妻を実家へ帰す方法は、ひとつだけだが、確かにある。


 鍵となるのは、4ヵ月後のリーフェリア祭。


 しかし、一度元いた場所へと帰った訪れし者は、二度とこちらへは戻って来ないということもわかっている。


 ・・・それでも俺は、妻を帰してやれるのだろうか?




 自分で決めた締め切りに思いっきり絞められるという、ある意味予想通りの展開で、始まってしまいました、夫視点!

 妻よりも広い視野でお送りする予定ですが、なにぶん、好き勝手に動き回る夫なので、どうなることやら・・・(汗)


 週1更新を目指して頑張りたいと思っていますので、気長によろしくお願いします!


おこた

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