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百奇夜行で鬼天烈な。  作者: 留龍隆
粛生の理編
32/38

三十二題目 「梁渾の変貌」と司が臆した

明かされていく真実。加速していく状況。


「……どういうこった」


 意識を取り戻した廉太郎になじるように言われて、司はたじろいだ。立ち並んでいたコンクリートの柱を背もたれに地面に座り込んでいる彼は、まだ痛むのか胸をさすりながら、司の言葉を復唱した。


「じいちゃん、だと?」

「うん、じいちゃん……ずっと行方不明っていうか、失踪してたんだけど……まさか、七無を名乗って動いてたなんて」

「わしゃァ個人の呪術師として多少名が知られとるからな。奴と思しき奴が名乗っとったこの名を使う方が、いろいろ便利と思うたのよ。よぉ諸君、お初ではないが、一応名乗っておこう。わしの本当の名は喜一きいち、目取真喜一だ」


 あごひげを掻く七無――もとい、目取真喜一という老人は、悪びれることもなく言ってのけた。警戒して損したぜ、とつぶやく廉太郎は深く肩を落とし、掌をぐーぱーと閉じたり開いたりした。


「んまあ、でも結果的に得したか。まだあの無拍子の動き、感覚として手足に残ってる」

「わしもひさびさに骨のあるガキに会えたと期待を持ったが、予想以上だったぞ。小僧、最後の一撃に関しちゃァ、確実にお前さんが上だった」

「だろ。へへ、悪いな爺さん。あんたの半世紀、この一戦で盗ませてもらった感じだぜ」

「持ってけ持ってけ。どぉせ老い先短ェ老木だ、切り倒されて若人の肥やしになるのァ大歓迎よ」


 にやりと笑みをかわす二人は、なにか武術家として通じあったところがあるように見えた。あいにくと祖父から鉄拳のての字も教わらなかった司は、そんな様子にも血気盛んだなあという印象しか抱かなかったのだが、小野はしみじみとなにか感じ入っている様子だった。

 サワハと踊場も、司たちの介入のすぐあとにやってきて、状況の推移を見守っている。司は廉太郎と喜一のやりとりにひと段落ついたところで、現状把握に努めるべく、会話をはじめた。

 あの通話から、ゆうに一年以上。直接に会うのは八年ぶりである、祖父との会話だった。


「……さてと。久しぶりだね、じいちゃん」

「ああ、久しいなァ。大きくなっとるな、孫よ」


 記憶の中の祖父と、さしたる違いはない。ただ少しだけ頬がこけ、痩せた面持ちが、祖父の過ごしてきた日々の過酷さを物語っていた。向こうも、しげしげと司を見やる。再会に際して、思うところあるのは互いに同じであるらしい。


「淨眼の力、取り戻したか」

「わかるんだ」

「封じたのはわし、と、ばあさんだからなァ。あれから十五年、か。いまなら、十全に使いこなせるだろぉ」

「や、まだ全開では使ってないよ。半分くらいは、御手洗さんに頼んで閉じてもらってる」

「御手洗の娘か。奴とも久しく会ってねェなァ。必要以上にお前に情報が渡らんよう、なるだけ接触を控えとったもんでな」

「情報が渡らんよう?」

「ああなに、こっちの話だ。詳しい事情はおいおい話しゃァいいだろ。……そんで、司。こいつらが、お前の仲間か」


 腕組みして仁王立ちしている喜一の目線に射られて、サワハは肩をすくめた。踊場は軽く会釈をした。小野も、ならうように頭を下げる。内から湧いて出た笑みを隠しもせず、祖父に司は紹介した。


「うん、友達」

「友達……そうか、そうか」


 快活に笑い、喜一は嬉しそうに上をあおいだ。友達を家族に紹介するのはなんだか気恥ずかしい心地がして、こそばゆい背筋を正した司はちょっとだけ横に目をやる。小野も恥ずかしそうに笑んでいて、目が合ってしまうと余計緊張した。

 友達、の括りから、小野はどのくらいのところにいるのだろう。友達以上、なんとか、未満。


「呪術師の友は、結局一人もおらなんだかァ。結構なこった。ただ、そこの子と、そこの子からは、なにかわしらに似た匂いがあるな」

「ああ、小野……と、サワハさんも?」


 指摘される相手として、小野はたしかに該当する。司と同じく淨眼に目覚め、歪みをみてとることすら可能となった、異能の眼を持つのだから。しかしきょとんとしているサワハは、同じ視界に関する能力とはいえ、司たちとはまったく別の分野に類する能力なのだが。廉太郎の脇でコンクリートに背をもたせかけた踊場は、ふむ、と一声、推測を語った。


「微能力の有無ということかな。いまや小野くんは、微妙でもなんでもない異能力者だがね」


 ここで、場が静まった。


「……ちぃとまて。いま、だれを小野と……」


 踊場の言葉を受けてつぶやいた喜一は、腕組みをほどいて、小野の顔をしかと見つめた。急な反応にしどろもどろになる小野だが、すぐにこの反応の源に思い当たり、喜一に自分から詰め寄る。


「まさか、母をご存じで――?」

「……やはりか。生き映し……てなァ言葉がしっくりくる。山女魚は、まったく呪術と所縁のない男のところへ嫁いだと聞いとったが、まさか子に力が継承されとるたァな。清庭の二人が――揃っちまったわけだ」


 感慨深そうに、喜一は返した。その最後の部分が、司の耳に引っ掛かる。


「じいちゃんも、その、さやにわとかいうのを知ってるの?」

「知るもなにも、その二人を揃えんためにこそ、わしゃァ今日まで単独で動いてきたんだ。淨眼使いの人間が二人揃ってしまえば、七無の計画が完遂される」

「七無の?」

「わしの七無との名乗りに反応したてェことァ、お前らもやつに関わってはきたんだろうが。わしは七無の計画を止めるべく、半生を過ごしてきたといっても過言じゃない。語るにゃ、ちぃとばかし長い時を要する。――こっちの話ァあとでまとめて語ろう、まずはお前らがなぜ、ここに辿り着いたかについて聞かせェ」


 ここまでですでに気になる部分はたくさん出ていたが、たしかに、お互いの話を交互に語らうよりも、まず一方の話を聞かせて、うまく咀嚼させてから他方の話をするのがよいことは、司にもわかった。

 ひとまずは目線を周囲にめぐらして、踊場に、まずここまでの過程を語ってもらうことにした。


「お願い、踊場さん」

「……まあ全体を把握していて、一番きてれつ研に属している期間が長いのも僕だからね。では語るとするかい。まずは……司くんと、僕らの出会い。それからかいつまんで、僕らきてれつ研の会員の事情を話そう」


 さすがに普段から饒舌にいろいろと語るだけはあり、踊場の説明は簡潔に――といっても二十分ほどはかかったが――要点をおさえて喜一に現状を伝えた。


 司が入会した経緯。それぞれがきてれつ研に入った理由。

 呪術師を背景に持つ、犬神使いを追ったこと。

 七無を名乗る男のからむ、集団自殺に遭遇したこと。

 呪いを借りうけたという、巫女の復讐に立ちあったこと。

 火野江未不子(丙水子)の存在を知って、奴の原点である村を訪れたこと。


 さまざまな事件に遭い、歪みの存在や七無の事件への干渉、慈雨の暗躍などいろいろなことに気付き、複雑怪奇に自分たちの人生へからみついた呪いという事象へ立ち向かう覚悟を決めたこと。

 この四カ月で、実に多くの経験があった。愉しいことも、苦しいことも。そのすべてが、たったひとつの、小野との出会いによってなされていたのだと、司は再認識した。


「……なァるほど。こりゃ、孫が世話になったな。皆、ありがとぉよ」


 話を最後までじっくりと聞いた喜一は、疑問を述べることや戸惑いを表すことよりもまず、司と共にここまで来てくれたきてれつ研のメンバーに、お礼を口にした。お互い様ですよ、とすかさず小野がいって、司は心に温かさが満ちる感触に頬を緩ませた。

 あとは、こちらの疑問点の解消である。


「じゃあ、じいちゃんの方の話に移ろっか」

「そういやマルドメ、お前らここにある歪みの向こうに行ってたんだよな」


 ようやく復調した廉太郎が、出鼻をくじく発言をしつつ大きく伸びをしていた。


「……それもいまから説明するけど。そこで確認なんだけど、ことここに至って合流するっていうのは、やっぱりじいちゃんも歪みの先の村を目指してたの?」

「いんや。わしゃァ梁渾りょうこんを目指しとったわけでは、ない」

「りょうこん?」

「ん、なんだァ、まだ村の名前も知らなんだか? あの場は、梁渾というんだ。どこの連中が呼びだしたのかは知らねェが、おそらくは〝霊魂〟がなまった結果だろう」


 訛り、と聞いて司が思い出したのは、谷峰よりも穂波田村だった。あの神代と古川のことなどを、思い出していたためかもしれない。


「そういえば、神代に神社の中を案内してもらったときに、りょうこんという単語が出てきませんでしたか?」

「あ、そうだ……たしか山での神隠しにあった人が、帰還したときにいってたとかって」


 そしてその人物の死因は、全身の火傷。ここまで想起されては、司もひとつの事柄を思い出さざるを得ない。小野も、同じところへ思考が行き着いたのだろう。

 丙水子による、紅蓮の炎。すべてを、霊体さえ焼き尽くす、燎原之火。こらん、と下駄を鳴らして歩き出した喜一は、司たちの来た方向、すなわち建物内部へ続く階段を、見に行った。


「歪みの向こう、あの場は霊魂が一時的に滞在し、彼岸へ抜けるための通過点よ。わしらァ呪術師は気の吹きだまりとして利用する他、通り道に使うやつもおったなァ」

「あの世への通過点、ですか」

「所詮は通過点、だ。それ以上のもんではねェよ。だが七無から身を潜めるにゃうってつけだったんでなァ、幼少期、七つになるまでは司をあそこで育てることにした」

「なんで七つまでなノネ?」

「とおりゃんせを知らないのかい、サワハくん」


 七つまでは神様の子、という言葉がある。踊場が説明をはじめた。

 七五三の祝いと同じ由来による言葉である。昔はいまのように医療が発達しているわけではなく、子供は七歳まで生きられるかもわからなかった。ゆえに七・五・三の歳を数えるたびに祝い、千歳あめなどを与えた。

 これと同様に、七つまでは神様の子なのだから、召されることがあっても仕方がない、という諦めに似た考えである。そしてとおりゃんせはその歌詞のうちで、召されることがないように神の元へヒトガタの紙を置くことで身代わりとなし、七つになった際にそれを取りに行く歌だという解釈が存在している。


「もっとも、七無ではなく異形の者どもに連れてかれる可能性もあった。守るのは骨がおれたわい、淨眼などなくとも、子供のうちは異界の存在をみ易いものだからなァ。そして七つを過ぎて力も低く安定したところで、まったく異能を継がず普通の社会に暮らしとった息子のところぉへ、司を返した」


 あとは知ってるだろう、と言わんばかりに、言葉を切った喜一は四人から目線を切る。司の方からも顔を逸らし、じっと耐えるようにうつむき加減に続けた。


「むごい話だとは、思うたがな。勝手に引き離して育て、もはや他人となったころに、戻すたァよ」

「わかってるよ。だからじいちゃんたちを恨んじゃいない。……父さんたちと仲良くすることは、いまもできてないけど。でも啓兄も一姉もよくしてくれた。友達もできた。別に、不都合はなにもないよ」


 司の本心は、この言葉の中にあった。

 生みの親ではあるけれど、他人行儀でよそよそしい。でもいつかはわかりあえるのかもしれないし、その日まで耐えることができるだけの、友達もいる。むごいなどとは、思っていない。だれかがだれかを思う気持ちは、それそのものは決して悪いものであるはずはないと、司は思っていた。喜一は、顔をあげた。


「そういってくれると、助かる。……言い訳ェ続けるようだが、あのときは他にお前の命を繋ぐ方法がなかったもんでなァ……」

「七無に捕まったら、殺されるってこと?」

「死にゃしまい。お前自身にゃ、さしたる害もなかろう。だが凄まじい混乱の引き金となりかねん、危険すぎる行為の媒介を、お前が成すこととなっただろぉよ」


 脅すような口調であるが、誇張でも冗談でもなく危険な行為なのだということは、ひしひしと伝わってきた。いったいなにをさせるつもりだったのか、と核心に触れようかと思った司ではあったが、聞くのがこわいという感情もまた、心中深くで頭をもたげていた。


「じゃあ、なんで狙われる要因になる淨眼を、取り戻させたのさ」

「七無は己の計画のため、慈雨を介して人工的に歪みを生む実験まで行いだしとった。その過程でもし、わしが封じたお前の淨眼の力を見つけられたら、どのように利用されるかわからん。かといってわし自身で回収するのァ不可能だ。七無に対して妨害を行うわしを、奴の方でも見張っておるからな。わしが力を手にしたと知りゃァ、奴はなりふりかまわず行動に出る。ゆえに、秘密裏にお前に取り戻してほしかった。遠回りして、少しずつ知恵をつけ、歪みを渡るよう。御手洗にも極力情報を与えず、行動の縛りは緩めにするよう頼んだ」

「……ずいぶん、いろいろ手をまわしてくれたんだね。それは、いいんだけど。その、人工的な歪みの実験、ってのは」

「おそらくはお前らの遭遇した事件……冬の集団ヒステリーとやらも含め、五つのすべてが、人工的に歪みを生みだそうという奴の実験によるものだろぉよ。中でも、確実な死者が出た上に仕込みに月日を要しとる穂波田村と谷峰の件は、本命の実験といっていい。犬神と集団自殺の件は、当たれば幸運という程度の気持ちで全国に奴がばらまいた、呪いの種子の発芽に過ぎんがな」

「死者が出ることが、本命?」


 反吐も枯れつくしたような顔で、喜一は目を伏せた。聞かない方がいい真実が彼の口の中に淀んでいると察して、全員がこわばる。


「当然だ。奴の目的は――生死無き世界の創造(、、、、、、、、、)

「……生死無き、せかい?」

「境目を、叩き壊す。死者のすべてを(、、、、、、、)この世に呼び戻す(、、、、、、、、)黄泉比良坂よもつひらさかを塞ぐ千人所引ちびき磐石いわを、除く。それが――奴の〝反魂計画〟だ」


 死者の回帰、と聞いて、小野の方を司が見てしまったのは、無理からぬことだった。すぐに、自制するべきだった、と気付いて顔を背けたが、不安と憎悪と期待と恐怖、あらゆる感情がないまぜになった小野の顔は、まぶたの裏に焼きついた。

 驚愕の一言に、司も震えた。けれど踊場たちの震えと、司の震えはちがう。

 司と小野は、ただ恐怖したわけでは、ない。


「……なら、もう手遅れなんじゃ」

「なにをいう、司」

「だって、小野とさっき歪みの向こうで……死んだはずの神代と古川を、みたんだよ」


        #


 歪み、もとい切れ目として認識できるようになった、空間の向こう。通り抜けた先で、司と小野は広い更地に降り立った。第六感により肌が粟立つが、すぐさま幻視を振り払う。寒々しい空気の中で、静かな森が、少し遠くに見えていた。


「あの森、前に落ちてきたとこかな」

「わたしも谷峰でここへ落ちた時、森の中でしたよ」


 とにもかくにも、ここで加良部を探し出し、慈雨について情報を得なくてはならない。まだこの村をうろついていることを祈りつつ、司と小野は歩き出した。空は相変わらず灰色で、マーブリングのように時折、黒い影が混じる。森へ近づくと、薄く、霧にまかれた。

 周囲への警戒も怠らぬよう注意しながら、森の土を踏みしめた。何かあった時のため、小刀をポケットの中でつかんでおく司。小野も、万一のときのためか足取りはきびきびとしており、蹴りの準備はできていると思われた。


「しかし、あてなくうろつくのもあれだよね」

「なにか手掛かりはないものでしょうか」

「うーん……そういやあいつ、まだだれかとの関わりを持つことに、執着があるみたいだったよ。ほら、ここなら呪術師も現れるから、必然的に霊視能力を持ってる人も来るし。そいつらと接して、いつか〝おわり〟を迎えるとかいってた」

「まだ、言っているんですね。それ」

「簡単には変わらないよ。強い意志が死を越えさせようとしたんだから、なおさらさ」


 話しながら森をさまよう。湿気た森の空気は冷えていて、どこか煙をくすぶらせたようなにおいがした。鼻先をかすめるにおいは、郷愁と共に嫌悪の感情を呼んだ。この香りから逃れるように、あてどなく歩くうち、二人並んで森を抜ける。

 出た場所は以前司が降り立った、すり鉢状に地形がえぐれ、崩落した崖だった。


「ここは」

「見覚えがあるのですか?」

「うん。この前は、ここに出た」


 と話すうち、思い至る。加良部は他者との接触を試みようとしているのだから、このように人気のない森へは、姿を現さないのではないかと。

 前と同じ場所にいるとも限らなかったが、司は自分の生家へ足を運ぶことにした。小野もなにも言わず追従し、二人、村の中を通る。加良部以外に見つかるのは厄介なので、村落に降り立つといっそう息を潜め、じりじりと静かに移動した。

 古めかしい木造の家屋が建ち並ぶ通りは、司のいた八年前からずっと、いまにも朽ちそうな形を保って存在しつづけている。大声を出しただけで崩れそうな、静寂を押し固めて作った箱庭のような家々だ。角から顔を出して辺りをうかがい、司は後ろの小野に呼びかけた。


「だれもいないよ。いまのうちに通り抜けよう」

「了解です。では……あっ」

「どうしたの」

「いえ、少々、目が痛んだだけです」


 片手でまぶたを押さえる。その様子を不思議に思い、司がそっと手をどける。目に異常は見受けられない……いつも通りの、端正な面立ちを、真正面からまじまじと見ることになるだけだった。しかし、ふと思い立って、じっと〝視る〟ことに専念する。すると小野の周囲に、淀んだ気が集まり始めているのが視えた。

 あわてて自分の身の回りも確かめると、負の気が充満していた。あまりにも多く、一帯を取り巻くように満ちていたために、負の気があることにさえ気付けていなかったのだ。


「なん、っで……? 前はここまで、負の気が溢れてなんか、」

「でも司さん、考えてもみたら、犬神使いのときも加良部のときも、神代のときも谷峰のときも。歪みが開けば、その向こうへと負の気は流れていたわけですよね。でしたら、ここに溜まっているというのも、有り得ないことではないのかもしれません」

「ここはあくまでダムみたいなものだから、留まるのなんてわずかなひとときのはず――」


 口にしながら、自分の言葉を頭の中で反芻した司は、はっとする。

 ダムであっても、豪雨にさらされて、放水量を上回るようなことになれば。ダム湖は満ち満ちて、縁いっぱいにまで水を湛えることとなる。では、もしかしたら。同じようなことが、ここでも起きているのかもしれない――

 横を見れば、まだ痛むのか、瞳を半分閉じたままで司を見る小野がいた。彼女も、同じ推論に辿り着いたと見えた。


「……思ったよりも、事態が深刻なのかもしれないね」

「急ぎましょう。目は、大事ありませんので」

「だめ。急ぐのは急ぐけど、そのまま目を酷使するのはまずいよ。この真取眼がどんな目にあったか、さっき話したじゃないか」


 親指で自らの目を指して、司は嘆息した。ではどうするので、と小野に問われて、司はその親指の腹で、小野のまぶたを閉じさせた。


「目が力の通り道なんだから、なにも見なければ影響されない」

「けれど、司さんの目は大丈夫なんですか?」

「こっちは治療のときに御手洗さんから術をもらって、真取眼の力を半分閉じてるから、大丈夫。必要な状況がくるまでは、そのまま目を閉じてて」


 言って、司は目を閉じた小野を前に、少しどぎまぎしながら、手を繋いだ。驚いたのかふっと目を開ける小野だが、すぐにぎゅっと閉じ直し、次いで力を込めて、司の手を握り返す。あとはもう小野の方を見ないで、司はゆっくりと、足場をしかと気にしつつ、再び進みだした。だが武術を習っていたと思えないほど柔らかな小野の掌に、どうしても意識がいく。

 しばらく進み、家屋建ち並ぶ通りを過ぎた。けっきょく人影はどこにもなく、生家へと続く坂を歩み、上から見下ろしてみても、村落から人の気配を察することはできなかった。

 悪路が長かったためにだいぶ時間がかかってしまったが、なんとか家の下に着くと、慎重に辺りをうかがい、耳を澄ましてから、司は土間に滑り込んだ。だれか人がいるのではないか、と気が気でなかったが、幸いにもそんなこともなく、しんとして埃の中に埋もれた家屋からはなんの温度も感じない。

 ふすまを開くと、囲炉裏に向かう加良部が座りこんでいた。


「うわ」

「お帰りなさいませ」


 なんの冗談か、無表情なままにそう返してきた。




「橋本さん……では、なかったのでしたか」

「ええ。なりすましていただけです。本当の名は小野といいます」


 小野の姿を見た加良部は、囲炉裏越しに問いかけて、ふむと納得の声を漏らした。小野はまだ目を閉じたままで、加良部のことも目に入っておらず、視線に気づかない様子でうつむき加減に答えを返していた。

 三人で火の無い囲炉裏をかこみ、薄い座布団越しに床の冷えを感じる。谷峰からここへ飛ばされた際に会った時からずっと、加良部はこの家に滞在していたらしい。勝手に生家へ住み憑かれていたというのはわずかながら気持ちにもやを残すが、その辺りは触れても仕方がないので流すことにした。


「なるほど。またお会いできるとは思ってもみませんでしたが、縁あってのことなのでしょう。して、丸留さん。あなたもまたこちらへ、なにをしにいらっしゃったのですか」


 そういえば偽名を訂正しないままだった、とここに至って気付いた司だが、本名を名乗って呼ばわりを受けるのも嫌なので、特に直すこともなく向けられた水を受ける。


「この前ここで別れたとき、あんたが話してたことについて。ちょっと話を聞きにきたんだよ」

「なにか気になることがございましたか」

「うん。あんたが冬に起こした、サークルの一件。あのときに首謀者の一人だった男が、途中で抜けたって言ってたよね」

「たしかに申し上げました。彼がどうかなさったので?」

「抜けた理由、宗教団体の方が忙しくなったから……だったか。教義は『得難き幸福を忘れなさい』」

「『ただ今の自分を思う、易き幸福の下に』ですよ。これについてですか」

「うん。その男、ひいては入信してた宗教について、知ってることを教えてほしい」


 一拍おいて、ふむ、と。納得ではなく、どこか含みのある様子で、加良部はうなずいた。声を聞いているだけの小野も違和感を覚えたのか、眉根を寄せていぶかしげな表情を形作る。

 数秒、加良部は考え込んだように待って、司に目を向ける。そこには常の死に沈む感情の無い光ではなく、思うところのある人間らしい光が、宿されていた。


「条件がございます」

「教えるには、ってこと?」

「ええ」


 死に臨むほどすべてに興味を失くした人間から、要求が出てくるとはさしもの司も思ってもみなかった。小野の様子を探れば、やはりあの集団自殺未遂のときの加良部を知っているためだろう、ひどく驚いて息を止めていた。


「どんな条件かにもよるから、まず聞かせてもらっていいかな」

「結構ですよ。といっても、そう構えていただくほど大きな事柄ではございません。べつに、共に死んでくれなどと言うつもりではありませんよ」


 彼女なりの冗句のつもりだったか、言葉のあとに連なる感情は薄く唇に笑みをもたらしめたが、以前に彼女が行ったことを思うとまるきり冗談のようにも思えず、うんざりして司は気遅れした。そんな気配を察したか、笑みをひっこめた加良部は、常の真顔でぼそりと望みを口にした。


「条件は、その男……日月秀十たちもりひでとがいま、どこでなにをしているか。これを調べて、お教えください」

「ええ? そんな、本人の行方がわかってたらあんたのとこになんて来ないよ。直接本人に訊いてるさ」

「承知しております。ですから、条件を満たしていただくのは後々で構いません。要は、約束してほしいのですよ。情報の見返りを、あとから与えてくれると」


 真剣な面差しで、加良部はいった。司はまだ少し疑念に心中を浸されていたが、横合いから小野が口を挟んだので、口腔まで込み上げた反論を呑みこんだ。


「あのゴールデンウィークの日、あなたは死に向かったのですよね」

「その通りでございます」

「死んだら、この世と関わりを持てなくなるということは理解していましたよね。霊視能力者でもないあなたは、死後の世界、こうして幽霊として現世に留まれる可能性を考えていなかったでしょうし」

「無論。わたくしが求めたのは、死によっておわりを周囲へ示すことだったのですから」

「ならばなぜ今になって。関わりを棄てたはずの現世に、未練があったようなことを言うんです」


 小野の中にあったのは、純粋な疑問だったのだろう。司も、同じことは考えていた。道理の通らないことに対する、ただの疑問。人は矛盾を抱える生き物であるが、それにしたところで、加良部のような行動を起こすものが矛盾を許したまま死に臨むだろうか、という。

 問われた加良部はしばし考え込み、無言のままに空へ目を走らせた。記憶を思い起こす素振りとも、いまの自分の心境を判じているともとれた。両方かもしれない。


「死して世界が広がったから、でしょうね」


 静かに停滞した空気の中に、震えを交えながら加良部は答えた。


「おかしな、たいそうおかしな話ですが。死んだことでわたくしにとっては、世界が広がりを見せたように感じたのです。関わりを閉ざし、己の中に埋没するだけとなるはずだったわたくしは、ここにきてやっと、多様な考えを持てるに、至りました。至って、しまったのですよ」

「あれだけ自分の思想に固執して、死に向かって走ったくせに?」

「アプローチとして無駄の無為であったとは思っておりません。ただあれだけがゴールではないと知りました。死後の先は、あったのですから。そうなってくると、……ああ、このような言葉を今になって用いるのは恥としか思えませんが、他に表しようがないので、仕方ありませんね…………欲が、出てきたのでございます」


 目を伏せて、告白した。

 すべて捨てようとした人間から欲の話が出てきて、またも司たちは驚いた。


「その人に一目会いたいとか、そういうことですか」

「いいえ。あいにくとわたくしは、恋愛どころか思慕の情すら抱いたことがございません。わたくしに芽生えたのは――覚えていてもらいたい、刻みつけたいという承認欲求ではなく、〝知識欲〟にございます。目標は、変わっておりません。いまもこの世から消えるにあたってのアプローチ、刻みつける瞬間の考慮は欠かしておりません。ですが……同じようにおわりを迎えようとしたのに、去っていった彼。彼がどのような思想に至り、ここを離れたのか。それが、知りたいのです」


 真摯に、告げられた。司も閉口した。

 死んで、死後の世界の存在を知ったことで、生前の自分とちがう考えを持つに至り。かつて共に死を選ぼうとして、いなくなった彼の考えを、心変わりの要因を知りたいということらしい。

 人は変わる。死を持ってすべてを終わらせようとしたものさえ例外はなく、変われるのだ。


「慈雨について追うのであれば、彼の行方にも多少は触れると思います。いえ、直接の言葉を伝えてもらうのでなくとも、かまいません。彼がもし慈雨からもいなくなっていたとしても、残る人々から彼について聞ければと、それだけを望んでおります」


 どうか、と頼まれ、小野は目を閉じたままに、うなずきを返した。理由を問おうと司が見ると、視線に気づいたか、小野が首を傾けて顔の向きを合わせた。


「他に、すぐに手に入りそうな手掛かりもありませんし」

「そうだけど」


 釈然としない自分の心持ちに気付き、司は原因を探ってみる。

 おそらくそれは、理不尽な死の運命にさらされたのではなく、自らの終幕を自らで定めようとしたはずの加良部から、現世に関わりたい旨を伝えられたからだと判じた。ほかに現世へ関わる方法をもたない霊という存在になってしまったとはいえ、呑みこめない気持ちがあることに変わりはなかった。


「よく聞く気になれたね」

「調べるだけならばさほど手間でもないでしょうし、前払いで情報はいただけるのですし。それに、けっきょくは加良部も、不慮の事故で死んだのですよ」


 彼女の最期は、意図しない場面で体勢を崩したことによる転落死。たしかに、終幕を自ら生み出そうとしたとはいえ、結果は理不尽に与えられたといってもいい。


「気に食わない人ではありますが、過程はどうあれ、こうして会話を交わしてしまうと、感覚が変わってくるようですね。……霊と話すというのは、こういうことなんですね」


 実感を噛みしめるように、言った。そして加良部に条件の承諾を伝え、日月についての情報を得ようとしたところで、

 司は怖気を感じた。悲鳴を耳にしたように、不穏な空気を全身で受け止めた。小野も、同じ感覚にさらされたらしい。思わず目を開けてしまった彼女と視線をかわし、加良部の横を抜けると、ふすまの向こうの土間へ出る。表から、凄まじい負の気が流入してきている。


「まさか歪みが――いや、ちがうのですか?!」


 歪み、切れ目などは見受けられない。ただ、ふたつの人影が、あった。

 そして、緋色。鮮烈に真っ赤なしぶきが散る。もともと赤い意匠の衣が、点々と散る血に染められる。肉を裂く音と布を裂く音が交叉して、刃が引きぬかれる。司たちの足が止まる。


「おま、え、は……」


 絶句した司は、再度見ることになる。

 紅の迸り。朱色の肉片。緋袴に、白い襦袢の染め上がり。壮絶な負の気の流出が止まらず、真取眼の力を封じられているはずの司でさえ、目の奥に後頭部を殴られたような鈍痛を覚える。急いで小野には目を閉じさせ、指先から浸食されそうな狂気の空間に、


「失せろ、失せろ、失せろっ……!」


 幻覚ではないのかと、言霊を投げつける。けれどやまない。凶行は繰り返され、幾度も幾度も刃が引きぬかれる。


「なんです? お二人とも、どうなさったのですか」

「どうもこうもあるか。こんな――霊体同士で、生前の――」

「霊体同士?」


 後ろから追いついてきた加良部は、司の言葉に首をかしげる。視えてないのか、と恐慌から叫びだしそうな声音を押さえて低い声にてうめくと、加良部はわからないという様子で虚空を指差した。


「なにを仰っているのですか? そこには(、、、、)なにもありませんよ(、、、、、、、、、)?」


 え、と司が振り向くと同時、小野が目を押さえたまま膝より崩れ、そちらに意識がいった途端、二人は姿を消した。ほんのわずかな、またたきほどの間の出来事ではあったが。

 生前の、絶命の瞬間を再現し続けていた古川と神代(、、、、、)が、姿を消していた。


「なんでだ……霊はお互いを認識できるはずなのに、加良部には、視えてない――みえてない?」


 はたと思い当たり、辺りを見回す。先ほどまでとなにも変わりない空間が広がっていた。


「……いや、ちがう、のか。変わりないわけじゃ、ない。おい、これってまさか……」


 みることに意識を集中し、少々のダメージを覚悟で、司は淨眼を使った。すると気付く。負の気が、辺り一帯から消失し、空間の印象を虚ろなものにしていると。


「負の気の流れは一方通行、現世に流れることはない……ダムに溜まった水が雲に帰ることがないのと同じだ。水は溜まれば放出されるだけ……の、はず」


 では、負の気が一帯から消えたということは。

 霊である加良部に認識されない二人の存在とは。

 この村に溢れる負の気とは。

 これらが、示唆するのは――


        #


「黄泉への出入り口が、開こうとしとる」


 司の話を聞き終えた喜一は、結論付けて頭を掻いた。


「加良部とやらが認識できないのも当然だァな。彼の世の存在となった者は、淨眼使いにしかみえん。現世から幽世をみ通す、淨眼使いにしかな」

「開いたら、どうなっちまうんだ」


 廉太郎に問われて、喜一はわずかな逡巡の後に応じた。


「さっき言った通りだ。本来は未練を残しとって、さらには体力でも霊力でもないある種の才能ある者だけが成れるはずの〝現世滞在者〟幽霊という存在に、これまでの人類史で死したすべての者が、成る。日本列島が人口過密で埋まっちまわァ」


 冗談めかして締めたが、喜一の表情には強張りしか見えない。

 生死無き世界。生きていようと死んでいようと、この世に顕在し続ける世界。理不尽な死も不条理の運命もみな等しく、価値無き出来事であるかのように、無為のものとして確立するだろう。


「すべての死者の願いを、この世に還元する。本来は先ほど述べたような才ある者だけの権利だった幽霊としての顕在化、これをどこまでも均質に全員へ与える。……莫大な負の気ぃを携えて戻ってきた日にゃ、どの霊も容易に呪いを扱える存在と化しとるだろぉよ」

「つまり、死者の復讐が恒常化する、呪いの横行が当たり前となった世界の創造が、七無の目的ということですか」

「おおまかに言やァな。そこに留まるとも、限らんが。……なんにせよ、司、小野香魚香。御苦労だったなァ。ながながとこんなとこで語らせちまった。とりあえず今日は、わしの取っとる宿へ行き、休もう」

「行くっても、急に部屋とれてないでしょ」

「なァに、旧知の奴がやってるとこなんでな。異能者ではない故事情は話せんが、わしの名を出しゃ安く二部屋ばかしあけてくれらァ」


 紅梅んとこなら事情も話せるんだがなー、とよくわからないことを言いつつ、両手それぞれで司と小野の頭を撫でた喜一は、きびすを返すと建物から離れていこうとする。てっきりこのまま行動を起こす段階に移るのだと思っていた司は、肩すかしをくらったようで力が抜ける。


「じいちゃんが何してたかとか聞いて、もう行動を起こすんだと思ったのに」

「馬鹿言っちゃァいかん。体調を万全にしてからでなければ、ことを成すことなど出来はせんよ」

「まあそれもそうだけど。廉太郎さんと戦って、じいちゃんも疲れてるだろうし」

「わしの体調じゃァない、お前とその子の体調だ」


 言われて、司は怪訝な顔を返した。喜一は溜め息と共に司の肩を叩き、なにやらぶつぶつと文言を口の中に唱えた。途端に、司の身体が重くなった。胸部が圧迫されている感覚があり、肌着の隙間に粘液でも流し込まれたように、気持ちの悪さが全身を覆った。内臓も重みを増して身体の奥底に沈んでいくようで、胃からせりあがってくるものを喉元に感じた。


「え、なに、これ……」

「御手洗がかけた術を解いた。淨眼の通り道によってお前の身体にゃフタバ、つまり死霊による場の穢れが、イチヂャマとして形を変え浸食をはじめとるんだ」

「イチ、ヂャマ?」

「その辺りの話も宿へ行ってからだァな。目を閉じさせたのは正解だが、小野の娘も同じように浸食されとるんだ。気丈に耐えとるものの、かなりきつくなってきてるはずだぞ」

「……多少熱っぽいと思ってましたが、そういうことですか」


 しれっと言ってのける小野は、しかし表情だけなら平気そうに見えてしまう。無理するのが得意なんだな、と取り留めもないことを思って、司はだるくなった身体を引きずり喜一に肩を借りる。


「ひとまず移動だ。お前らもご苦労だったな、今日はゆっくり休んどけェ」


 あいた片手で喜一は廉太郎、踊場の頭をぽんぽんと叩いた。サワハには「文化的に頭叩かれるのタブー」とガードされたので、握手で済ませた。


「しかし、司くんの淨眼は凄まじいね。先月の谷峰でも人魚の魂を見切ったと話していたし。反動がここまで強いのも、当然か」


 背丈的に丁度いいので踊場が反対の肩を貸しつつ言うと、喜一が否と返した。


「視たとこ、まだ司の真取眼は全開に達しとらん。御手洗に封じさせたのを差し引いても、開花具合は四割がいいとこよ」

「え、御手洗さんには開花の度合いは最高だって」

「そりゃァ淨眼の位の中では、だ。等級が七ある中で最高の一等級だとて、一等級の中でもまた七段に分かれとる。お前の本気は、一等級の中の一段。……開き方は、わかっとるはずだぞ」


 暗に使うな、と命ずるように、喜一はささやいた。司もこの言葉に想起させられるものがあり、ああ、とうなずいて、静かに自分の目に手をあてがった。

 市街地まで着くとタクシーを呼び、車中で踊場に加良部から得た情報を話すと、司はすぐさままどろみの中へ落ちていった。



淨眼など霊視の等級は「いろはにほへと」の七等級×七段階の四十九種。という設定。


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