二題目 「怪しくないです」と小野が答えた
「ではまた放課後にここにいらしてください。詳しい活動内容の説明などをしたいと思います」
「待った、まって。入んなきゃいけない流れなの、これ」
「出来ればそうしていただけると、私たちは嬉しいのですが。なんだかんだでこの研究会は慢性的な人員不足に悩まされていますので」
ぜひに、と告げて小野は部屋を出て行った。続いて会長も姿を消し、残された司はどうしたものか迷ったが、とりあえず授業に出た方がいいと判じて部屋をあとにする。
四階建て校舎の三階に位置する司の教室の窓からは、グラウンドを挟んで向こう側に斜に構えたクラブ棟を望むことが出来た。急ぎ足で駆け込んできた司は窓側最後尾にある自分の席に座り、「今日は遅かったな」などと前の席の男に話しかけられるのを曖昧な笑みでかわした。
「ちょっと、ね。校門のところで、捕まって」
「制服チェックか? 確かにおめー、学ラン第二ボタンまで開けてっかんなー。まだ入学してから日が浅ぇんだから、もうちょい服装整えといた方がいいんでないの」
前の席に座る男はじろじろと司の服装を見据えてそう言うが、彼もまた学ランの中にはカッターシャツではなく柄モノのシャツを着こんでいるので明らかに校則に違反している。しかし走ってきたせいで息の上がっていた司は指摘するのも面倒に思えて、掌を振って適当に相槌を打っておいた。
前の席の男はふふんと笑って天然ものと思しきパーマのかかった髪をかきあげ、ぎっこぎっこ椅子を前後に揺らしながら話を続ける。
「ところでさーメドルマ」
「司でいい、って何回も言った」
「あーそうだっけ、すまんすまん。そんでさー司。おめーはどっか部活とか決めたか? ほら、昨日は部活動勧誘だったろー」
「あったね。でも特別心ひかれるものはなかったから、どこにも入る気ない」
そっけない返しをすると、前の席の男はきょとんとして、首を四十五度ほど斜めに傾げた。
「そんなの、もったいねー。せっかくの高校生活、おれらがティーンで居られる最高の期間だしょ? 青春の謳歌イコール若さイコール今ここにしかないこの日この時」
「朝からテンション高いな……いいじゃん帰宅部でも。青春は大学行ってから考えるよ」
「んーなこと言ってっと大学でひとりぼっちになるぞー。うちの兄貴はそんな感じで損な感じだもんよ。一緒にどっか入ろーぞ。実はおれ落語研究会に『きみは稀代のルーキーだ!』とか言われてスカウトされててさ」
こっちもついさっき不運にもスカウトされたところだ、などと司は言わなかった。
この学校における研究会は公式の部活動よりも人員、実績が少ないために活動費もあまり貰えず、いつ消滅してもおかしくない、要するに同好会のことである。つまりとにかく人員を欲しているだけで、まず間違いなく誰にでもそう言っているんだよ、と司は優しく諭してやったが、彼は鼻を鳴らして司に指を突き付け説明を始めた。いや、説明というより自慢だったが。
曰く、彼は中学の頃から地元のデイサービスなどで落語公演を行っていたらしく、近隣の中高では名が知られている少年落語家なのだ、とのこと。司は少し驚かされた。
「というわけでどうだ? 手取り足とり教えっからさー、共に笑いの道を極めないか?」
「やめとく。部活以外でやりたいことあるから。というか、なんできみと一緒が前提なの」
「えー、だっておれ、わりと人見知り」「嘘つけ」
けらけら笑う前の席の男だったが、担任である牛勿が教室に入ってきて号令をかけたので仕方なさそうに前を向く。が、司から見て斜向かいの席の男とまた何かごにょごにょと話し始めており、牛勿から静かに注意を受けていた。そこでおどけるので、クラスが薄い笑いに包まれる。いいキャラしてるな、と司は思い、窓の外に意識を移した。
司の視界の下方左側、方角としてはだいたい西の方にあたる校門から今頃入ってきた生徒が生活指導部に止められていた。セーター姿の男はスケボーに乗っており、教師を無視してすり抜けようとしている。根性あるなと思いつつ、視線を上に向けた。
ちょうどここは三階。窓の向こうに見えるクラブ棟の三階とは、同じ高さにある。右から部屋の数をかぞえていって、四番目の部屋を見つけると視線に力を込めてみた。目じりに力を入れてぎゅっとまぶた全体に力を入れると、もやもやとした気配だけは強く感じられた。
「なんだか、ね」
瞳を閉じた司は、あくびをかますと机に突っ伏した。
#
放課後になると、稀代のルーキー二人にはお迎えが来ていたので、司は逃げ道を阻まれた。
「お迎えにあがりました」
小野はぼうっとした眠そうな目でこちらを見上げ、手招きしている。それに対して授業中しっかり睡眠をとって眠気すっきりの司は、露骨に嫌そうな顔をして一歩退いてみせた。
「なんだ、おめー入るとこあったんか。おれ兼部してそっちも行こっかな」
冗談か本気か、迎えに来てくれた落研の人々の眼前でそんなことを言う前の席の男。違う、入るつもりなんてない、と言いかけた司の前で、小野は前の席の男をじっと見て、ぼそりと、至近距離の司に聞こえるかどうかという声でつぶやく。
「…………ない」
「え」
司がつぶやきを返す。人員不足などと言っていたくせに、わずかでも入部の意思を持った者に自ら「ない」と突っぱねる小野に、軽く引いた。とんでもない態度である。
「げ」
そして次に声をあげたのは、司のクラスメイトを迎えにきた落研の会長だった。
「誰かと思えば、き、きてれつ研の……そうか、きみは、今年から女子校生」
「はい。それがなにか?」
クールに、表情を変えることもなく返した小野に臆したのか、落研会長は眼鏡の位置を正しながらじりじりと退いていった。
「いや、なにも。なにもない。行こう、前納くん」
「へ? ああはい。んじゃ司、また明日な―」
「うん。…………ああ、あいつ前納って名前だったんだ……」
「なんか言ったかー?」
「なにも」
わだかまりを残すこともなく綺麗に別れ、一年六組の教室の前には司と小野が残される。司は大きく伸びをすると、学生鞄を肩に担ぐようにして持って、小野に宣言するように言った。
「……じゃ、帰ろうかな」
「お待ちください」
定型のパターンを一応踏襲した司のベルトをひっつかんで、小野は物理実験室の方へと引っ張った。
引っ張られつつ、司は小野に確認を取る。
「さっき、落研の会長さんがあんたのこと『今年から高校生』とか言ってた気がするんだけど」
「ええ、事実ですよ。一年三組出席番号五番。小野香魚香と申します」
「なんで新一年生なのにこんな精力的に部員集めしてるのさ」
「中学生の時分から『きてれつ研』には出入りしておりましたので。私としては新一年生という感じではないのです」
理由は納得したが、またわからない言葉が出てきたので、素直に質問する。その間も司はずるずると引きずられてなされるがままであったが、さすがに人目が気になったのでちゃんと立ち上がって小野の横を歩くことにした。
「きてれつ……研?」
「奇怪事件展覧列挙研究会。略してきてれつです」
「なんでもかんでも略して四文字にする風潮、どうかと思うよ」
「私たちが決めたのではなく先代の会長が決めましたので。どうにもなりません」
嘆息を漏らす小野の憂いを帯びた横顔はなにやら幸薄そうな気がして、少しだけ可哀想に見えた。けれど自分が巻き込まれる必然性はない、という思いの方が強かった。
「これからどうするつもり」
「ぶ室で話を聞いてもらおうかと」
「研究会なんだから部室じゃないって」
「物理実験準備室。略して」「あんたも実は略すの好きだよね」
特別教室棟に入ると、グラウンドの運動部が発する喧騒などもぐっと小さくなり、棟全体に静謐な空気が漂うように感じられる。物理実験室を通り過ぎ姿見のドアを抜けると、中にはまだ誰も居なかった。
「そういや、物理部ってこの学校なかったっけ」
「化学部あたりと仲良くしているのでこの部屋は必要ないそうです」
話していると、小野は椅子を引いてくれた。厚意に甘えて座らせてもらうと、続けて彼女はポットからお湯を注いで緑茶を淹れてくれた。さらに茶菓子までずずいと前に差し出され、予想外の厚遇に司は面食らう。申し訳なく思い肩を縮めると、小野はかぶりを振った。
「おかまいなく。お茶くみは一番下の新入りの仕事ですので」
「なるほど……ってあれ? じゃあ入部したらこの仕事やるのって……」
「まあその話はいいではないですか」
「そんな下手くそな逸らし方されても」
緑茶をすすりながら司は苦笑いして、そのあとでお茶がすごく苦いことに気付いた。口直しに和三盆を使っていると思われる菓子をつまんで、上質な砂糖のほどける感触を楽しむと、それっきり、沈黙が落ちる。
引っ張ってきたわりに何を話すか考えていなかったのか、小野は悩んだような素振りを見せていた。司もこのまま失敗したお見合いのような空気の中に取り残されるのは嫌だったので、なんとか話題を考えた。
しかしぐるりと部屋を見回してみても、話題に出来そうなものは机の上に無造作に置かれたスクラップや、コンビニにおいてありそうな胡散臭い「怪奇事件集」くらいしかない。
「あー、おほん。この研究会って、結局なにをするところなのかな」
「あ、はい。奇怪な事件について調べて、その事例を展覧出来るよう並べておくところです」
「へえ、そのままだね」
「はい」
「…………へえ」
終わってしまった。なにも進展がない。ひょっとして小野はものすごく口下手か人見知りなのではと思った司が試しに沈黙を維持してみると、驚くほど何もしゃべらない。自分から話題を提供するのが苦手なタイプだと分析した司だったが、どんな話題なら食いついてくるかわからないのではどうしようもなかった。
「なによ、この失敗したお見合いみたいな雰囲気」
会長が現れたのは沈黙がはじまって五分ほど経ってからだった。助かった、と思ったのは小野も司も一緒だったに違いない。
後ろには会長よりごくわずかに背の低い少年がついてきており、彼は司に気付くと軽く頭を下げてほほ笑んだ。くせのない柔らかそうな髪は襟足を少し伸ばしていて、背が低く小柄なことと相まって性別の判断を誤らせてしまいそうな外見となっている。さわやかな笑顔ばかりが印象に残る少年だった。
「きみ、新しくこの研究会に入る子かい?」
「はい、たぶん」
少年の問いにはっきりした口調で曖昧に答えたのは小野で、さっきまで黙っていたのはなんだったのかと司は心中でぼやく。そんな心中はつゆ知らず、少年は司に手を差し出した。
「はじめまして。僕は三年の踊場小太郎という。踊場と呼んでくれ」
「はあ、どうも」
背のことを気にしているのか、やけに「三年」を強調した挨拶だった。そして司は入るつもりがあんまり無いにもかかわらず握手をかわしてしまったことに、なんとなくばつが悪くなる。
「そういえばあたしも自己紹介まだだった。同じく三年の口論義風鈴よ、よろしくね」
「え、あの」
「私はもう先ほど紹介しましたね。あとは二年生の方が二人、廉太郎さんとサワハさんという方がいらっしゃるのですが」
「いや、あの」
「サワハは今日、店の手伝いだそうよ。廉太郎はスケボーに乗って遅刻してきたせいで生活指導部」
「普通の神経をしているならば馬鹿も休み休みやるべきだろうにね。あの男は毎日毎日本当にご苦労様なことだよ、一度色んな人に頭を下げさせたい思いだ」
「あ、その」
「お二人の分もお茶を用意しましょうか」
「頼むわー」
「なら僕もお願いさせてもらうとしようかな」
聞いちゃいなかった。踊場と口論義の分もお茶を淹れ始めた小野は司と二人にされた時とは違い生き生きとしており、そのことがまた微妙に疎外感を覚えさせた。
肩身の狭い思いをしつつお茶をすする司は、自分がなんでこんなことになっているのかと窓の向こう、遠くの空に問いかける。答えはもちろん返ってこず、むなしさの内に精神だけが空から帰ってきた。焦点を目の前に合わせると、三人に凝視されていたことに少しひるんだ。
「さて、それじゃ志望動機を聞かせてもらおうかしら」
「え、そんな突然……というか待て。一体いつ、自ら志して望んでここに来たことになった」
「今さっきそう答えたはずじゃないか。入部するのではなかったのかい?」
「それ答えたの小野だよ」
言って腰を浮かす司の正面に小野、斜向かいに踊場、一番奥の窓に近いところに口論義という並びがいつの間にか構成されていて、入口に一番近い司は下座にされていた。すでに、序列が示されている。恐れおののく司に口論義はそっと掌を差し出して、座るようにうながした。
「まあ落ち着きなさいな。とりあえずせんぶり茶でもどうぞ」
「せんぶりって罰ゲームで使うあれか。どうりで苦いと思ったよ畜生」
「うん、確かに苦いといえば苦い。しかし体に対しては実に良い効能ばかりだと思うけれどね。うまい、もう一杯、なんてね」
「青汁でも飲めばいいよ。というか、だから、入部するなんて一言も言ってないんだってば」
言うと、明らかに三人のテンションは落ちた。口論義に至っては「ええー」という発音通りの口の形を示している。正面に座る小野は、机に身を乗り出すようにして叫んだ。
「どうしても入ってくださらないんですか」
「くださらない」
「どうして入ってくださらないんですか」
「祖父母からの言いつけ。力は見世物にするな、ってね」
「ちょっと、あたしたちは見世物にするつもりなんかないわよ。真剣に研究してるの」
口をとがらせて司を指差す口論義。すると司も指先を向ける。ただし、正面の小野へ。
「そう? でも真剣にやってるならもっとちゃんと会員集めればいいのに。さっき小野が教室に来た時にもさ、冗談かもしれないけど『入ろうかな』って言った奴いたんだよ。なのに小野はなんて言ったと思う。『ない』ってひとことだ。どういう基準か知らないけど、募集してるくせに選り好みするってのはどうなんだ」
「それは別に『入れたくない』って意味じゃないわ。選り好みではなく篩分けって奴よ」
「はあ? どういう基準の?」
「微能力の有無、です」
指差されていた小野が即答した。発言の意味はわかるが意図がわからず、司は首をかしげる。
小野は続けた。
「いえ、別段我が研究会は微妙なものだけを集めているわけではないので〝異能力〟と普通の言い方に換えていただいても構いませんが」
「そこに首かしげたんじゃなくて。有無、って。わかんの?」
「はい。ぱっと見た瞬間に判断出来ます。先ほど司さんのクラスメイトに『ない』と言ってしまったのも、能力の有無を判じていただけでして」
「……信じられない」
「幽霊が見える人に言われても困るわよ」
いたずらっぽく笑う口論義に言われてしまうが、確かに返す言葉もない。世の中にはいろんな人が居る、というだけのことなのだ。
「ちなみに今この研究会に在籍してる人の中では、踊場以外全員がなんかの微能力者よ。現代科学では原理を説明することは出来ない、けれどあたしたちがやろうとすればそれは起こる。そういう、微妙だけど確実に既存の法則から矛盾した力」
「口論義さんも、能力を?」
「うん。わりと使い勝手もいい能力。でも発動条件がいくつかあってねえ。今朝会った時にあたし戸棚に隠れてたでしょ? ああしないと能力使えないのよ」
頬杖をついてくっくくと笑う。踊場もにこにこしていて、小野はかすかに口元を緩めた。
急に、自分が異質な空間に投げだされてしまったように感じて、司は足場がぬかるんだような不安感を覚えた。これまでの司は自身が幽霊を見ることの出来る異能力者であったためにそうした異常な世界に対してオープンに構えているつもりだったが、自分以外で異能力を持つ者に出会うことはなかったのだ。
「そんな連中集めて、どうするつもり?」
「ふぁはははは、世界征服だ。……なーんてこと言えればカッコつくんでしょうけどね」
「あいにくと僕らにあるのは、単純な知的好奇心にすぎないのだろうね。これでお金を稼ぐつもりじゃあるまいし、好奇心の充足さえあるならばそれでいいのさ。世にはびこる奇怪な事件や、不思議なこと。そうしたものをそのままにしておけず色々と調べたくなる性分だっただけなんでね。原因究明、過程の記述こそがモットーさ。ただただ、知りたいだけ。僕は俗っぽいという字の方の『民ぞく学』にも興味があるんだ」
踊場は述べた。他の方がどういう字なのか、またそれらの間にどういう違いがあるのか司にはわからなかったが、二人の説明だけ聞くと意外にもしっかりとした学術的な研究会のように聞こえた。
「ま、気になったら籍だけ置いておくってのもアリよ。実際のとこ好奇心の他にも目的を持ってここを利用してる人もいるし。面白いことあったらお互い知らせてね、ってわけ。うちらの情報収集力は結構すごいから」
最後の部分を聞いて、司はぴくりと反応した。
「……そのへんに置いてるスクラップとかくらいじゃないの?」
「いやね、この電脳の時代にアナクロな手法だけで情報集めてるわけないじゃない。データバンクは別に持ってるし、随時更新中。そこの閲覧も会員だったらご自由にどうぞ」
「…………」
自分の抱える事情もろもろを思い出して、司はしばし悩んだ。己の力を秘匿したい理由。祖父母が遺した、いくつかの言いつけ。それらが頭の中をぐるぐると回り、容易に判断を下すことをためらわせていた。そんな心情を察したかのように、踊場が口を開く。
「僕らはきみを見世物のように扱うつもりはないし、周囲に向けて能力のことを吹聴するつもりもないよ。単なる協力関係だと、そのように受け取ってもらえればよいのではないのかな」
なおもだんまりを決め込む司に、小野も言葉をかけた。
「六人以下となると同好会としても活動出来なくなってしまいます。ですから、名前だけでも置いていただけませんか? 会費徴収などもありませんし」
「……んー。じゃあ、それに加えていくつか条件つけていい?」
「ものによりますが、なるべくご希望に添えるよう努力はいたします」
小野がはきはきと答えて、それでもまだ司には迷いがあったが。結局言いつけと目的とを天秤にかけて、目的の方に重きが置かれたと納得した。
「恣意的、また私的に力を使わせようとしないでほしい。必要な時とそうでない時の判断は自分で下す。それと……変な村についての情報があったら、欠かさず教えてほしい」
「犬鳴村とか、杉沢村ですか?」
「ちがう。実を言うと名前もよくわからないんだけど、とにかくそういう怪奇事件とかの起こってそうな村なんだ」
奇妙な申し出であることを理解している司はなにか訝しげな反応をされるかもしれない、と思っていた。だが、予想に反して三人はすんなりと提案を受け入れてくれた。なんらかの目的があるのは口論義や踊場、小野も同じなのか、互いに目くばせして理解を示した表情を見せている。
「わかったわ。その条件を呑みましょう」
立場上自分が言うべきだと思ったのか、口論義がそうしめくくり。
「では、今日からお互いにがんばりましょう」「……互いの目的のためにね」
小野の言葉になにやら含みのある様子で踊り場が付け加え、手を打ちならした。