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百奇夜行で鬼天烈な。  作者: 留龍隆
GW俗信編
14/38

十四題目 「…………、」と小野が絶句する

GW編終幕。


        #


 赤馬たちが車間距離を詰めて追い越しをかけようとした瞬間に、司たちの乗るハイエースは軽くブレーキをかけてキャラバンに接触をしかけてきた。赤馬はかわそうと右へハンドルを切ったが間に合わず、凄まじい衝撃に乗員全員が固まった直後、さらなる衝撃が六人を襲った。


「……ぐうう」


 エアバッグから顔を上げた踊場は自分の正面に何があるか確認する。ひび割れたフロントガラスの向こうでは、中央分離帯の柵が、たわんで車体を押し留めていた。ひゅんひゅんと眼前を行く車の群れを見、反対車線に突き出していなくてよかった、と心拍のあがった胸を押える。

 だがルームミラー越しに背後がちらりと見えた瞬間、心拍は一気に鳴りを潜めた。


「……口論義! 口論義っ!」


 がちゃがちゃと震える手でシートベルトを外し、後ろに向き直る。真後ろに陣取っていた口論義は、シートベルトのおかげで前に吹き飛ぶようなことにはなっていなかった。しかし、積み荷がある。元々は赤馬が空き缶(とどこから持ってきたかわからない銅線)を換金しにいく途中で無理に乗せてもらったので、最後尾の座席には大量の空き缶の袋がある。

 急停止して慣性のままに飛んで来れば、下手すれば大けがかもしれなかった。


「……うるさいぞ踊場。その様子だとくたばってないようだな」


 だがそこへ答えたのは、廉太郎だった。口論義の隣、真ん中の席に陣取っていた廉太郎は、左腕を後ろに突き出して口論義の頭に空き缶の山が直撃するのを防いでいた。ああ、と嘆息して、今度こそ心拍が限界まで跳ね上がる。油断すると涙腺まで緩んでしまいそうで、踊場は自制するのに苦労を強いられた。


「ぜ、全員無事なのかい?」

「なんとか、ね」


 口論義がふせっていたところから顔を上げて言う。奥で空き缶の山を回避しながらレンズの発動を器用に保持していたサワハも、片手をあげた。

 手が上がらないのは二名。運転席で鼻血を流している赤馬と、なんとなく連れてきてしまったフォッグマンの少年だ。二人とも気絶してしまっていた。


「しっかしふざけたものだぜ。あの連中まさか体当たりしかけてくるとはな。鞭打ちにでもなったらどうすんだ」

「でもマルドメくんいたは確かよ、振り返るでこっち見てたネ」

「小野ちゃんらしき頭も見えてたわね。くそ、もう少しだったのに」


 踊場が右手側、進行方向を見やると、彼方に豆粒のようなサイズになったハイエースが見えた。追い付きかけたのに、逃してしまう。禍々しい気配をまといながら、ハイエースは遠ざかっていく。


「……早く追い付かねばならないのに。取り返しのつかない事態になってしまう前に」

「踊場サン、それどゆこと?」

「いつ事故を起こすかわからないのだよ、あの車両は」


 言い残すとドアを開けて踊場は雨の下に飛び出し、ぐるりと回って運転席に近付く。少しへこんではいたもののドアはすんなり開いたので、シートベルトを外して赤馬を運転席から引っ張りだした。続けて後部座席に押し込んだので、反対から押し出された口論義が助手席に乗せられる形になる。次いで踊場が、運転席にてシートベルトをしめた。


「追いかけるよ口論義」

「……あんたまだ免許取れてないわよね?」

「高速教習もまださ。が、オートマならなんとか運転はできる」


 チェンジレバーをリバースに入れ、踊場はハンドルを握った。前面部はひどくひしゃげていたが、内部にまでは損傷がないのかゆっくりと車体が動きだす。ワイパーを作動させて雨露を払い、準備はできた。


「おっかなびっくりだなオイ、大丈夫か」

「大丈夫なわけないだろう」


 車線に対し垂直になると、踊場はブレーキから完全に足を離した。

 がこんとレバーを入れ、アクセルを踏み込む。動きだした車体はすぐに加速して、速度だけならば周りの車にも溶け込んだ。だが少しハンドルさばきがぎこちないことと、前面部の大きなへこみが威嚇のような効果を表し。周りを走る車は事故に巻き込まれたくないという心理が働いたのか、踊場に道をあける形になっていった。


「……で、なにがなにであの車危ないノ?」

「ああ、それかい。単純な話ではあるのだけどね、」

「ちょ、ちょっと踊場、あんた話してて運転だいじょうぶなの?」

「どうせ大丈夫ではないし、話しながらの方がいくらか気がまぎれるというものなのでね……廉太郎、無学なきみでも〝ハイウェイの幽霊〟くらいは知っているだろう」

「あー知ってる知ってる。うちにもよく出る」


 テキトーな受け答えをした廉太郎を踊場は無視して進めた。


「日本式に言えば〝消えるタクシーの乗客〟だよ。夜道で女を乗せたつもりだったのに、目的地について振り向くと乗せたはずの女がいないという話さ。怪談話の落ちとしてはこのあとに目的地の家で話を伺って、その家の娘が亡くなっていること、今日がその命日であること、などが運転手に語られて終わるのだが……これらの現象について感覚遮断性幻覚という現象で説明をなされていることがある」


 要は五円玉揺らす代わりに車を走らせるのさ、と踊場は説明を加えた。納得のうなずきを示したのは口論義だけである。細かい説明をする必要性を感じ、頭の中で説明文を浮かべた踊場は暗くなりつつある周りに合わせてライトを点灯した。


「高速道路や、外国でならハイウェイで起こることが多いため、ハイウェイヒュプノシスとも呼ばれる現象だ。同じ景色で平坦な道を同じ速度で走り続けると、視覚刺激の単調さから慣性化を引き起こして眠気を催す。五円玉を揺らすのと同じようにね。

 だが運転している以上は緊張感も保たねばならず、精神状態は非常に危うい域に突入するわけだ。するとこの時の精神状態は、催眠にかけられる時の状態に似てくる。結果、夢うつつのまぶたの裏には本来あり得ないものが映り始め、自己催眠による幻覚の一丁上がりさ」

「ちなみに速度は時速七〇キロくらいが一番その状態に近づきやすいと言われてるわ。といっても、最近は高速も居眠り防止用の細かい段差がいくつも設置されてるから、そういうことは起こりにくいらしいけどね」


 口論義が言った途端に、ががががっと車体が細かく振動した。廉太郎も踊場も口論義も薄闇に包まれ始めた向こう側へ目を凝らすが、少々ひび割れてしまったフロントガラスということもあり見通しは悪い。ハイエースの影はまだ見えてこない。


「でもそれがどう関係してくるんだ? たしかにあの連中、集団自殺を目論んでるとかいう話だったが」

「説明のためにはもうひとつ聞かなくてはならないよ。……こっくりさんくらいはさすがに知っているだろうね」

「俺んとこはキューピッドさんだったが、まあ同じやつだろ」


 今度はふざけず廉太郎も真面目に答え、踊場もうなずいた。


「それだよ。ところがあれは安易で容易な交霊術として浸透してしまっているが、一種の集団幻覚、集団ヒステリーを引き起こす要因にもなりうる危険な術なのだよ。というのも女性というのが元来、神域や霊域に近づきやすい存在とされていたからでね。ほら、巫女や沖縄のユタなどは女性がやるものだろう」


 後者については知らなかったので適当に相槌を打った廉太郎とサワハは、先を促す。


「古来、女性にはそうした力があると見なされていたのさ。風土が生んだ民族性によるものでもあるが、詳しい話は割愛しておこう。とにもかくにも、女性には霊性が宿り易い。憑依などはその最たる例だ。ではそうさせるものがなんなのかはわかるかい?」

「群集心理。さっき言った集団幻覚やヒステリーにもつながる、集団が作る心理、でしょ」


 口論義の相の手が、踊場の言葉の足りない部分を補完した。


「そう。一つの群衆、集団が同一の考えの下に集まることは、強い力を持つ。こっくりさんなどは簡易化されて行われることばかりなのでね、実際のとこ術としては未熟であることが多い。とはいえ多人数、しかも感受性の強い若年層の女子のみでその存在を信じて『こっくりさん来てください』と口にすることは、強い憑依状態にまで導かれるほどの言霊と暗示性を生み出すこともある。七十年代から八十年代にかけてブームになった際も憑依例は数あったという」

「たしかにまだあの車、高速降りるはしてないけど……なかで同じことなってる言うノ?」

「とびきりたちの悪いものとしてね。なにしろ集団として持っている方向性が自殺なんだ、どんな幻を視て死に誘われるかわかったものじゃないだろう?」


 踊場は賛同を求める言葉を放ち、直線の道が見えてくるとさらに加速した。まだハイエースは見えてこないが、サワハの視界では高速を降りていないということなので、針路を変えることなく進み続ける。


「でも踊場、具体的にはどう止めるの?」

「ぶつけられた以上、ぶつけ返す他ないと思うよ。横に並んでガードレールの方へ押し込む」

「ずいぶんと強引な手だな。けど、こんだけ破損しちまってんだから、大して変わらんか」

「……きみら、誰の車だと思ってるんだね」


 鼻をすすりながら赤馬が目覚める。

 踊場たち四人は何も言わなくなった。


        #


 踊場たちの会話が聞こえていたはずはないのだが、同時刻にハイエースの針路は高速道路を降りて山を目指し始めた。ほぼ全員が夢うつつの幻の中にいる車内で、司は自分の精神を保つのに必死だった。


「あの車……友達が、仲間が乗ってたのに!」

「そのことにつきましては面目次第もございません。わたくしにとってもっとも唾棄すべき人間の姿が見えましたゆえ、あのような行動に出てしまったのです」

「なんで、どうしてそんなことになったのさ」

「申し上げる必要性を感じません」


 無機質な加良部の音声は、司の心を波立たせた。彼方に置いてけぼりにしてしまった踊場たちが無事かどうか心配であったが、携帯電話はこの車に乗り込む前に奪い去られてしまい今は雨降る路地裏に放置されているはずだ。連絡を取る術は無い。

 どうにもならない状況にも苛立ちを覚え、司は加良部の方へ身を乗り出した。すると加良部の方から、先の司の言葉に対する返答のようなものが発せられた。


「自分だけのものなら、巻き込むな、とおっしゃいましたね」

「言ったよ。周囲を巻き込むなって」

「しかしわたくしは道を示したのみです。おわりを。道を。そこに乗ってついてくる者の責任までをもわたくしが被らなくてはならないのですか? かような道理は通るものではございません」

「なんだ。ついてきた奴が悪いから、そそのかしたあんたは悪くないって言うつもりなの?」

「息苦しい生き苦しいともがく人を放置することが善行であるならば、わたくしは悪とののしられようと一向に構いません。巻き込んだという言い方はいささか心外ではございますが、そこからして既にわたくしとあなた様の間には見解の相違があるのでしょう」


 かたくなに意思を交わすことを拒み、加良部は運転手に針路を山へ向けるように頼む。今走っている最中の人里を通り抜ければ、もはや加良部を止めることのできる場はなくなってしまうように司には感じられた。


「逃げないでよ」

「逃げるとはどういう物言いです? あなたの前進と呼ぶ方向とわたくしの前進と呼ぶ方向が逆であるというだけで、あなたの主観でわたくしの道までをも変えないでいただきたい」

「あんたそうやって、わかり合おうっていうことをしてこなかっただけだよ」


 司にかけられた言葉に、初めて加良部は反応を見せた。だがはかなく短い反応は加良部自身すら気づくことはなく、


「お心遣いは、少しだけ嬉しく思います」


 そのように言いつつも、相変わらず、ルームミラーに映る加良部の表情に変化はなかった。先ほど歯をむき出しにして踊場たちの乗る車をにらんだ時の表情は仮面をかぶっていたのではないだろうか、と司に疑わせるほどに。


「橋本さんともども、お降りなさい。もうわたくしは、そして〝ぜんぶ〟は、すべてを諦めてしまったのです。嬉しみも楽しみもなくただ嫌悪と悲哀だけが傍らに在り続けるのです」

「この人たちも同じとは限らない」

「幸福が用意されているはずだ、と?」


 薄く、酷く冷たい気配を一言にまとわせて、加良部は司の反応を見た。司は動けなかった。


「幸福とは広がりのある概念ですが、広範にわたって存在するだけで範囲全てを満たしているわけではございません。ある一点を見れば確かに在るのでしょうが、それ以外を満たすのは不幸と絶望です。幸福という概念はえてして、狭量な器を介して傲慢な前提を信じるからこそ感じ取れるのです。少なくともわたくしにはもうできません。そして信じ、感じ取れる者は――わたくしの暗示にはかかりません」


 あなた様と、橋本さんのように。

 と言われて、呼ばれたと思ったのか小野がやっと目の焦点が合って、司を見る。スタンガンによる電撃と薬の煙で薄れ沈みかけていた意識が、ようやくきちんと形を成し浮上したらしい。怪我を気取られぬように、司はさっと手をポケットに隠した。


「つ、かさ、さん」

「小野、もう平気?」

「はい。あの、わたし、油断して、ごめんなさ」

「大丈夫。きっと、大丈夫だから」


 なにがどう大丈夫と言えるのかわからなかったが、落ち着かせるために小野に言い聞かせる。言葉は耳から、司の内にも染みいった。踊場たちを案じるあまり暴走しそうな自分を落ち着かせるための言葉ともなったのだろう。

 加良部はそうした二人の様を見て浅く息を吐き、進行方向にあった山道の入口にある、退避場所を指し示した。


「あの場所でお二人には降りていただきます。無理におわりを共に迎えていただく必要はありませんゆえ」

「……身勝手だ」

「わたくしは、自分自身に対しても自分勝手なのでしょうね。誰にも理解されることはなく、けれど他者の承認を欲しがりました。わかっております、己が恥ずべき死願者だということは」


 自嘲する言葉を撒き散らして、加良部はがくりとうなだれ司たちの方を向いた。

 山道が近付き、小野が身震いする。


「与えねば求めてはならない。だからわたくしと〝ぜんぶ〟にできることは、おわりを求めて自らにおわりを与えることしかないのですよ」


 何も感じなくなった加良部の瞳はここに来ても輝きを取り戻すことはなく、静かに目の前を見つめ続けていた。一秒先すら見えていない、消化するだけの試合と言える人生だ。

 そのように思ってほしくはないだろうと気付いたが、それでも司は彼女を「哀れだ」と思うことを止められなかった。


「さあ、幕引きです。お帰りはこちらに。本当に短い間でありましたが、わたくしのことを」


 言葉を切り、加良部は前方を見据える。退避場所が近付いてきていたが、スピードは緩む気配が無い。あっという間に通り過ぎて、山道を凄まじい勢いで登っていく。舗装の崩れた部分が多いのか、がたがたと、揺れが激しくなった。


「……? なぜ、止まらないのですか」


 加良部がはじめて困惑の色を見せた。そして激しい揺れのために最初司は気付けなかったが、小野の身震いも止まっていない。進むにつれ、歯の根を鳴らすようにおびえた。


「小野、小野?」

「つかさ、さん。なんだか、この先、進んではいけない気がして」

「どういう意味?」

「先日の、犬神使いの家の時に似ています。重苦しい空気が、漂ってきていて……でも、あの時よりもっと濃厚な」

「重苦しい、気なんだね?」


 詳しい説明を小野に求めようとして、瞬間――ぞぐん。

 全身がヘドロの海に沈められたように不快な、触覚と嗅覚を押し潰す幻覚。これまでにないほどの密度で身体を覆い襲う第六感の警報の強烈さは、そのままこの先にある何かの危険さを表していた。


(小野も第六感、あるんだね。しかもこっちより早く気付いたってことは、感度がいいみたい)


 感想を漏らす余裕はなく、心中だけで司は思った。その間、上り坂にもかかわらず速度が少しずつ上昇しており、どこのカーブで谷底に落ちてもおかしくなさそうな遠心力が車内の人々を振りまわす。揺られるたび、手の傷が痛んで表情が歪む。加良部は想定外の事態にやっと焦りを見せ始めたが、司にはなんとなく原因が読めていた。


「……この車内の負の気が、峠のモノに引っ張られてる」


 事故死した人々の霊か元から山にある霊性のモノの仕業かは判別つかないが、悪意と害意が車体を乗っ取っていた。その力は、常に断崖絶壁の方へと車体を引き寄せている。外側へ張りだした右折カーブの度に、遠心力以外の何かがずるずると崖へ司たちを引きずり込もうとしていた。

 何も視えないが何かがある。と、確信する司に〝何か〟の正体を見せつけるものがあった。


「手が、手が」


 細い加良部の言葉が指すものが何か、司には見えない。けれど確かになにかがあるように彼女は振る舞い、身を強張らせて自身の前にある空間を掻きむしるようにしていた。小野も同じ方を見ていたので何かあるかと訊ねてみるが、司と同じく何も見えないと言う。

 見えないのに何かがある。その状態は周囲にも伝わり、ほどなくして車内は運転手まで含めて静かな狂乱の中に堕ちた。わらわらと手と手が床を這い天井を這い、司と小野にはみえないものを掻きむしる。一致した意識が想像を具現化する。

 見えない何かは、視えない何かである。

 視力にも霊視にもみること叶わない存在。すなわち、第六感により彼女らは感じ取っている。


「ありゃ幻覚だね。さっきのおくすりがマズかった、っていうのもあるんだろうけど」

「同じ、自殺という思念の方向性を抱えた人間が、六人もいたからですか」

「生き死ににかかわる思念だからなあ……強いよ。これだけの幻覚をみせるくらいには。おまけにこの前の犬神使いの家は土地柄で溜まってただけの正負どっちでもない気だったけど、ここのは混じりっ気なしの負の気だからね」

「対処、法は」

「原因の霊体がはっきり視えてるなら刀刺してどうにかなるかもだけど、今のこれは生き霊っていうか霊にすらなりきれてない、純粋な思いの力だから」

「では車を止めることは」

「そっちに関してはもっと漠然とした〝何か〟の意思によるものだから無理だよ。……止まんないなら、飛び降りるしかない」


 無事な手を後ろに伸ばして、後部のドアを開く。やまない雨に濡れた路面はさぞ滑りやすそうに黒光りしており、カーブにさしかかる度に跳ねる水が車内に飛び込んだ。まだふらついている小野も自分も受け身なんて取れないだろうなと思いながらも、深呼吸でタイミングを計った。なんだかんだでカーブにさしかかる際には、速度が落ちているのである。そこを見計らう。

 こわごわと小野が司を見上げ、下唇を噛んだ。


「本当に、飛び降りろというのですか」

「最悪下敷きにしてくれればいいから」

「……起きぬけでこんなスタントなんて」

「ごめん。もっと早く助けられたら、こんなことにならなかったんだけど」


 そこだけは本当に、司は自分の不手際がうらめしくて黙った。助けに来てくれたのに険しい言葉を投げかけてしまったことに気付くと、小野はもごもごと口ごもった。


「いえ。どうあれ、助けに来てくれたのですから。……勝手を言って申し訳ありません」

「ミイラ取りがミイラ、だけどね。本当にごめん。でも、もうこれしかない」


 司はシートを倒して、外に出やすくした。小野は恐怖心と戦いながらいっそう強く司の袖を握りしめる。そういえばずっと握っていたのか、ということに気付いた司はふっと微笑んだ。

 本当は司も内心ではとても飛び降りられるはずもない、と弱気が絶叫していたが、気力だけで押えこむ。風でばたばたとはためくパーカを払いのけ、慎重に位置を見定めた。


「     」


 話しかけられた気がして、最後に一度だけ加良部を振りかえった。

 加良部は困惑も焦りもまた乗り越えてしまったのか、静かに空を掻く女性たちの中でひとり虚ろな顔をして茫然とフロントガラスを見据えていた。もう、何を語る様子も無い。


「……さよなら」


 かけられる言葉はこのひとつしか思いつかず、司は目を逸らした。

逸らした先には小野の澄んだ瞳があり、心配そうに見つめられるといやでも元気を出さなくてはという気にさせられた。


「それで司さん、位置はどこにするのですか」

「ん、次のカーブだよ」


 短く答えて、先ほど見た光景を思い浮かべる。この先三〇〇メートルほどで、右手を山肌に沿いつつほぼ直角に左に曲がる位置があり、その次は断崖に張りだした右折カーブとなっていたことを。タイミングを逃し降りられなければ次の右折の際に転落する、との確信もあった。

 指が血の気を失いそうなほど強く、小野が司の袖を握った。


「じゃ、いくよ」


 司は呼びかけて、小野のうなずきを得ると黒い路面を見続けた。左折カーブまで直進が続く。

 残り二五〇メートル。覚悟を決めて、深呼吸の後に息を止める。

 残り二二五メートル。ぎちぎちと、心臓がねじきれそうな音を立てるのを聞いた。

 残り二〇〇メートル。小野がいることを確認して、ゆっくりと車体のへりに足をかける。

 残り一七五メートル。足を滑らせたらと嫌な想像が脳裏をよぎる。

 残り――一五〇メートルを切った、というところで、司はまぶしさに目を押えた。


「……あ!」


 小野が声を上げる。まばゆいライトの光は一瞬司たちを照らしたあとすぐに路面へと下げられ、車影が雨の中にぼんやりと浮かび上がってきた。

 前面部が大きくひしゃげたキャラバンが、一〇〇キロにも届きそうな速度で直線の道を駆けあがってくる。司たちの通った軌跡をたどり、司たちよりも遥かに早く。


「みんな、無事だったんだ……」

「し、しかしあの速度で突っ込んでこられても」


 小野が慌てふためく。転落も嫌だが追突事故もごめんである。するとあれほどの速度の中でよくそんなことをする気になったと思うほど窓から身を乗り出した廉太郎が、右腕を大きく上げ下げしている。叫んでもいるようだが、荒れ狂う風に掻き消されて最後まで声は聞こえない。


「あ。あれってこの後部ドアを閉めろ、ということでは?」

「なるほど」


 そこから先の目的は不明だが、小野の助言で行動の意図だけはつかめた。司は手を伸ばしてドアを閉めようとする、が、さらにジェスチュアは続いていた。廉太郎が自分の右肩から左腰へ、腕を上げ下げ。今度は「シートベルトだ」とぴんときた。


「シートベルトしてドア閉めろってことだね」

「……あの、その指示って」


 おとなしく指示に従ってはみたものの、小野は不安そうでまだ司の袖を離していない。

 けれどここまできては司も、もはや笑うしかなく。


「皆まで言わずとも、嫌な予感してるのはこっちも一緒だよ」


 もはやすぐそこまでキャラバンで迫った踊場たちを、信じるしかなかった。

 残り四〇メートル。廉太郎が引っ込み、さらに加速した。

 残り三〇メートル。奥歯を噛みしめて運転する踊場が見えた。

 残り二〇メートル。踊場が車線を右へずらした。

 残り一〇メートル。キャラバンが二車線の幅をいっぱいに使って――ハイエースが普通に曲がろうと横っぱらを見せたところへ、雨で濡れた路面にしぶきをあげてスライドしてくる。その様は、熟練の腕前を思わせる綺麗な弧の描き方をしていた。弧の終着は――鈍い激突音で、締めくくられる。


「っぐっ!!」

「わっ!」


 ドリフトして横付けされるというのはまっすぐに突進されるよりは遥かに軽減された衝撃なのだろうが、それでも身体をショックが突き抜ける。そのままごりごりと押し付けられるようにして二台は並走し、ハイエースはバックミラーがもぎ取れ車体と山肌の間では火花が散った。小野と司はひたすらにこの時間が終わることを望み、べきべきがりがりとボディが砕け崩れる甲高い音が耳を貫いていく。

 小刻みな震動で上下左右に揺さぶられる非常に気持ちの悪い時間はしばらく続いて、続くほどに摩擦で速度は落ちていく。やがて左折カーブが終わるころに、ボロボロになった二台は静かに停車した。振り返れば、剥がれおちた塗装と部品が、道を汚している。


「…………、はあ」


 どちらともなく、無言で溜め息をついた。

 そして後部ドアを叩く口論義の声に同時に振り向き、外に降り立つ。

 雨の降りしきる中、ただ生きてるなあという具体性の無い実感だけが、司の身体を満たしていた。


        #


 夜の峠は肌寒く、降り続いた雨のせいか霧に包まれ始めていた。二台の車を縦に並べてハザードランプを点灯し停止表示板を置いた踊場は、一仕事成したという安心感からアスファルトに倒れた。キャラバンの後部バンパーを背もたれに座り込み、ひらひらと司に手を振る。

 無免許だというのに雨の峠で速度を出したことは、相当なプレッシャーだったらしい。傍らでなにやら複雑そうな顔をしている口論義と、雨音で消える程度の声音で話しあっていた。


「ホントに、今回は助かったよ」

「お礼ならサワハ君に言うべきではないかな。……いや、やはり何も言わずとも良いかもしれないか」

「へ? なに、なんでそんな急に一八〇度意見変わったの」

「今回も廉太郎君以外の微能力はみんな大活躍だったー、ってことよ」


 口論義に言われて、後部ドアの窓越しに缶の山に埋もれかけているサワハと目を合わせる。にま~と笑いながらレンズの発動動作を行ったのを見て、背筋にぞっとする感覚を覚えた。


「いつ、いつ仕掛け、ってあああ、あの入院した時の」

「まずは落ち着きなよ司君。レンズは一度発動したらその場所から移動できないからきみのプライベートは覗き見されないさ。……ひとつしかつけていなければ、だが」

「うわ」


 片手で頭を抱えて悩む司を見て、先ほど喫茶店でからかわれた時の仕返しとばかりに、踊場は腹を抱えて笑った。

 そうしていると三人の視界を、すっと隣の車線まで横切る影がある。誰かと思いそちらを見ると、加良部が崖沿いのガードレールに腰かけていた。少し上半身を後ろへ傾ければまっさかさまに落ちる位置に、平然と居座る。加良部に気付いた口論義の顔に浮かぶ感情が、より複雑さを増した。


「……おしまいですね」


 変わらず、何も感じず考えずの顔で司に言った。

 言外に、今回がうまくいかなかっただけだという意が差し込まれているように司は思った。


「また同じようなこと繰り返す気?」

「ええ」

「嫌がる人も無理に連れてきてまで?」

「本当に嫌がる人はおわりまでご同行いただきませんが、中途までは連れてくるでしょう。今回がそうだったように」


 あなた様も理解しかけたのでは。そう言って加良部はボロボロになって停車したハイエースの中をのぞいた。半狂乱になっていた被害者たちは廉太郎が一喝したおかげか今は平静を取り戻しており、また高速道路を走っていた時のようにぼんやりと中空を見据えていた。

 覇気もない力無い様子に、このまま精神状態が元に戻らないことなどないだろうかと司は心配になり、同時に加良部の求めるものへの道程がこの状態を示すことを確認して首を横へ振った。


「あいにくと今はまだ理解できない。やりたいこともあるし、おわりなんて知りたくもない」

「左様でございますか。ではまた、いつかということで」


 本心から述べているのであろう加良部を司は今さらながらに恐ろしく思った。同時にそこから引き戻してくれた小野に、感謝するしかない。


「……結局、あんたさ。自殺したかったの?」


 簡潔な司の問いかけへ答えることに、加良部は長い時間を要した。果てに彼女は「いえ」と短く告げ、身体を後ろへ反らした。ひゅるり、霧の間を吹きすさぶ風に身を任せたいと願ったように見えた。


「ひとりで死ぬことも、自分で死ぬことも、恐ろしいことです」

「じゃあひとりが怖いんだよ。で、こうして人を集めたんだろ。そうやって関係性を持ちたいなら、死にたいとは限らないんじゃない」

「死にたい? 違います。あなた様は根本から問いがずれているのです。わたくしはおわりたかった。死を願いはしましたが、願いとは手段です。手段の先に求めたのは死ではなくおわりなのでございます」

「わけわかんないや。もっとわかりやすく言ってよ」


 にらみつける口論義、静かに見つめる踊場、視界に捉えておこうとする司、の三者に囲まれて、加良部は主張の根幹、根元にある思いに至る。それを言葉にしようともがく中で思いはより強まり、今すぐにも遂げたいという情念をひしひしと司たちに投げかけた。


「わたくしは、エンドではなくゴールを求めたのです。追い詰められるのではなく自ら進みたいと願いました。死は願いにして手段で、おわりを得るための道具にすぎません。これだけ集めた〝ぜんぶ〟もおわりに刻む墓標の文であり、同時にわたくしも彼女ら〝ぜんぶ〟の墓標にあるための文にすぎないのです。そして文を読むのはあなたがた、生きている者」


 その在り様こそがわたくしの求めるおわり――つぶやきを霧にまとわせ、加良部は真っ暗な目で司をとらえる。


「理解できませんでしょう? ならばあなた様はわたくしのおわりを知り、覚えていてくださる、そちら側の人だったにすぎません」


 最後まで理解を阻む物言いのまま、加良部は言うだけ言って口を閉ざした。全てを把握することなどできはしなかったが、なおも司の頭の中には残響のうなりが留まっていた。おわり。死。彼岸に片足を踏み込んだ者すら視える司にも、このふたつの違いを感じ取ることはできない。ひょっとしたら説明はできるかもしれないが、そんなことに意味は無いのだ。


「でも……ゴール、だとしても……」


 仮定して話を進めようとして、止まってしまった己について司は思う。仮定することすらできないほどに、自分は加良部の論理を認められないのだろうと。わかり合おうとしなかった、などと加良部を批判した己が、同じように理解を放棄したことで、逆説的に司は加良部の心情を理解した。だが自身を恥じた。

 無理だと決めつけてわかろうとしなかったのではなく、努力しても辿りつけないのだと気付いたために恥じた。個々人の間に根付く溝は、認識してしまうとあまりにも深いのである。


 ……たたずむ加良部は放っておいても何もしない、できない。自分をごまかすべくそう信じ込んで目を離し、逃げるように司は小野のところへ行く。キャラバンの後部座席で膝を抱えていた彼女の隣には赤馬が腰かけており、例のごとくゴールデンバットを吸っていた。


「疲れた様子だね司くん」

「……うん」

「きみも吸うかね?」

「遠慮しとく」

「そうか。なんにせよ今回は大変だったねぇ、カーチェイスまでやらされるとは思ってもみなかった」


 喉がひりつく香りの元をくゆらし、赤馬は片手でハンドルを回す所作を演じた。司が沈んでいるのを見越してわざと大仰な振る舞いを成す赤馬に、司は感謝しつつ話を聞く。


「赤馬さんも運転したの?」

「もともとおれが運転してたのを口論義くんたちにカージャックにあったのサ。おれはほれ、後ろに積んである空き缶の山を換金に行くとこだったんだがね」


 ひしゃげた前面部と擦れて塗装の剥がれた側面を向いて、赤馬は大きく溜め息をついた。古い型の品とはいえ愛車をここまで傷つけさせてしまったことに、司は謝らなくてはならない心地にさせられる。しかしそこでサワハが空き缶の山の下を探った。


「ところで赤馬サン、この銅線はなになノ?」

「な、なにを言ってるんだねサワハくん、おれは空き缶しか運んでないぞ」

「おう、太さちょうど電線くらいネ、これ」


 怪しげな運び屋らしかった。一気に赤馬に対して白けた気持ちになり、司は小野に話しかけようとした。すると赤馬は片手を下ろして、司の言葉を遮った。


「おっと司くん、まだ話しかけない方がいいね」

「なんで」

「きみも視える人間なら察したはず。この峠にゃ良くないものがはびこってるよ」


 赤馬は己の三白眼を指差し、煙を吐きながら言った。司は自身の加入以前の霊的トラブルは先代会長、すなわち赤馬によって解決されていたという話を思い出す。


「きみと違いおれは視える聞こえる触れるってなもんでね。そこら中にいるの、見えないかね?」


 言われて、言霊で押しのけた第六感ではなく霊視の眼で周囲を見渡した。すると霧にまぎれて靄のような力の塊が、ふよぶよと地を這いアスファルトに混じりゆくのが視えて驚く。


「この気、悪」「それ以上は喋らない方がいいね」


 司が続けようとした言葉を察したのか、赤馬は素早く制止をかけた。燃え尽きかけた吸いがらにもう一本を押し付けて火を繋げて、二本目を吸い始めた。


「〝良くない〟だけだからね。負の気であってもまだ意思は無い。放っておけば山の中に溶けて混じるのに、きみの言葉で気に形を与えてどうする……ま、そのあとでここに補充された気が将来どうなるかは、おれにもわかんないけどね」

「……あの、じゃあ小野に話しかけない方がいい、っていうのは?」

「知ってるだろう、この子は惹かれやすいってね。特に峠は世俗との境目、人間の文明と自然の狭間。古来で言えば情報の行きかう場でもあり、そこで発した噂の力が〝何か〟を呼ばい形を与えてしまう場でもあったからね。ヘタな刺激は力を形にしちまうよ」


 靄よりも濃くけぶる煙に空気が撹拌され、車内の景色を揺らした。司はこの光景にどこか既視感を覚えたが、どうしてその感覚が生まれたのか説明がつけられないうちに実感を失う。

 だが揺れているというのは事実で、辺りを見回すとところどころ、歪んだ空間の向こうの景色がねじれたり反転したりするのがみえた。靄もいつの間にか出てきたのだし、今度は蜃気楼だろうか、とあり得ないことを司は考える。


「にしても赤馬さん、詳しいね。踊場さんみたい」

「みたい、も何もないもんサ。踊場くんの知識の三割くらいはおれが話して聞かせたものだからね」


 踊場も同じだが人に自分の知識を語って聞かせるのは楽しいらしく、赤馬は上機嫌で煙草を吸った。景色の歪みに、煙が割って入る。


「霧が晴れたら、手早く下山すべきだね。ひとまずこれにて落着、といきたいよ」

「霧もそうだけど、このヘンテコな歪みの方が気になんない?」

「歪み?」

「ほら、そこらへんになんか、蜃気楼みたいになってるとこあるでしょ」


 指し示した空間を視ても、赤馬は何も言わない。ただ、じ、と三白眼を細めて霊視を最大の感度にまで高めるが、歪みなど存在していなかった。


「きみ……まだ車内の残り香で頭やられてるんじゃないかね」

「え、そんな」

「ゆがみ」


 黙っていた小野が自ら声を発した。座席の上で膝を抱える姿は痛々しくもあり、よく見てみれば腕や足がかたかたと震えていた。寒いのだろうか、と司はパーカのジッパーを下ろしかけるが、どうもそうではないらしい。

 峠を登ってきた時と同じような怯え方であり、なんらかの恐怖の対象への反応が身体の震えとして表れているのだった。


「まさかこの歪み、小野も視えるの?」

「いえ、ただ嫌な感じがするとしか……暗闇の中で、周囲に生首が浮いてると言われたような気分といいますか」


 不気味な喩えだが感覚としてはつかみやすい。こうなってしまうと言葉をかわすことの危険性よりも、現状の異質さの方が問題であると感じられた。司と小野は赤馬を挟んで向かい合い、赤馬は二人の視線のやりとりに気づいてはいたが、両者ともに薬の副作用が残っていると判じた様子だった。


「幻覚を引き起こす成分を含むあの種の葉っぱを燃やした臭いだったけどね、まさかきみら吸わされ過ぎたんじゃないのかね」

「五感は薬で簡単に狂うけど、第六感とか霊感はそうはいかないよ」

「そりゃそうだがね。んじゃきみらがみて、感じているものはなんだと」


 自分の発した言葉に、赤馬は解答に至るためのパーツが含まれていたのを感じ取った。

 周囲を見回し、この山の表面を漂っていた負の気がほとんど消えてしまっているのを確認して。次いで、キャラバンの前に止まるハイエースの中に、未だ淀み溜まっている負の気があることを思い出した。


「……や、それこそまさかだね。まさか」

「どしたの?」

「なんでもない、とは、言えないが。……まずい場所になってるかもしんないね、ここは。といって、霧の中を歩いて降りるのもそれはそれでまずいかね」

「なに?」

「その、だね」


 忠言を口にせんとした時には全てが遅かった。

 みしりとキャラバンの車体が揺れる。小野がとっさに近くのものをつかんだ。車外にいた司も異変を感じ、目の前にあった助手席のヘッドレストをひっつかむ。肌がひきつって、傷が痛んだ。ところが赤馬とサワハは不思議そうな顔をしていて、車体の揺れを感じていないようだった。

 三秒もしないうちに揺れは収まり、すぐに背後でガードレールに腰かけていた加良部のことが頭をよぎる。ヘッドレストから離した手を再度ポケットにしまって振り返ると、加良部はいなくなっていた。


「お……ち、た?」

「落ちた? なにが、あ」


 赤馬もガードレールの上に居た人物の不在を目にし、辺りを見回す。人影はどこにもない。

 ガードレールに駆けより、司は加良部の姿を探した。けれど乳白色の霧に覆われた崖下は少しも見通しがきかず、加良部どころか三メートル下もぼやけて見えていた。横には口論義と踊場も並んで加良部を探しており、特に口論義は真剣な面持ちである。


「……くっそ。人を騙してこんなことしといて、とっとと退場するとか何様よっ……!」


 怒気をはらんだ小声で、恨めしそうに文句を叩きつける。隣で踊場が悲しそうな目をしていたが、崖下をにらみ続ける口論義にはそんな近くの彼さえも視界に入っていないようだった。

 二人がなにを思いそんな行動に出ているのかは読めなかったが、落ちたにせよ逃げたにせよ司にできることはもうない。おとなしくキャラバンのドアの前に戻ると、赤馬が路上に降りて煙草の火を踏み消していた。


「落ちたのかね」

「……たぶん。今の揺れのせいだ」


 どこへ向かうのかもわからないような、悔しい気持ちを隠しきれないで司は言う。

 と、赤馬は眉根を寄せて表情に疑問符を浮かべた。


「揺れ? 司くん、今べつに揺れなどはなかったはずだがね」

「は? ついさっき三秒くらい、がたがたって」

「そんなんなかたヨ」

「いえ、わたしも揺れていたと思いました」


 またも感じ取ったのは司と小野だけ。いよいよ赤馬は怪訝な顔を司に近づけた。


「ち、ちがう。薬のせいじゃ、」

「そっちの可能性も捨てきれないけどね、今おれが視てるのはそういう意味ではないから」


 司の瞳を覗きこむ目には、確かに不信の色はあまり見えない。むしろなにか考えあっての疑いをかけているように思われる、澄んだ眼の色だった。時折視線を外しては周囲、司が「歪みがある」と指した場所などを見て、やがてひとつの問いを生んだ。


「……うーん。もしかして揺れではなく、ぶれているように見えたんじゃないかね」


 放たれた問いかけが今さっきの司の感覚を呼び起こし、確認をとらせる。身体感覚の記憶をさかのぼると、左手がつかんだヘッドレストの表面には――揺れなどは、感じなかった。


「あ」

「やっぱりだね」


 嘆息して、赤馬は目を伏せた。なにに納得されたのかさっぱりわからず、司は解答を乞う。赤馬は答えるべきか否か逡巡したが、小野にも頼まれ両側から挟まれるとさすがに折れた。だがまだこの場で語るべきじゃない、と言って、下山の時まで待つように言う。二人は粘ったが、ここの気などが関係するもので、ヘタに説明すれば周りを巻き込みかねないとまで言われては食い下がるわけにもいかなかった。

 ただわからないづくしでは可哀想だと思ったのか、赤馬は一言だけ二人にヒントをくれた。


「……二人とも、よおく周りを見てみるといいね」


 ガードレールの方へ歩いていって、崖下を覗きこむ。赤馬はそれで何やら確信を得たようで、もう少しだけ言葉をつづけた。


「ハイエースからも、この峠からも……気が、消えてないかね?」


        #


「つかれたなぁ」


 布団に寝転がって小野にメールを打ちながら、司はあくびをかました。

 ゴールデンウィークに入る以前に前納が話していた映画に行くという計画に、結局参加してみたのだった。ところがいざ到着してみると前納しかおらず蓮向は欠席だとかで、二人で列に並ぶこととなった。まあ、これはこれでいいかと思いしばし歓談。そうしているとポップコーンを買いに行くと言って司にチケットを預け、前納が列から離れる。


 途端に蓮向が息を切らして司のところまで走ってきて、前納はどうしたとすごい剣幕で詰め寄ってきた。ポップコーンを買いに行ってて今チケットを預かってると正直に言うと、蓮向は少し考え込んで、じつはポップコーンが売り切れで作るのに時間がかかるとかで前納は遅れる、先に入っててくれとのことだと司に説明した。納得した司。その手からチケットをもぎとると蓮向は一瞬列から消え、戻ってきた時に「渡してきた」と言った。司はそれを信じた。


 しかし入場がはじまり席が客で埋まっていっても、前納はやってこなかった。やがて満席になったと思われ、上映がスタートしても、現れなかった。最後尾から三列目の真ん中に位置した司と蓮向は探しに出ることもできず、しかたない大人しく映画観よう、と頭を切り替えた。するとその時乱暴にドアを開けて前納が入ってきた。


 ところが席が無い。どこにも空いていない。満席だった。これはどういう手違いだろうと司が思っていたら蓮向を見つけた前納が静かに近づいてきて、購入したらしいベジマイト味のポップコーンを投げつけてきた。どうやらチケットは最初から二枚しかなかったらしい。司はまた、これはどういう手違いだろうと思った。


 ただ放っておくとポップコーンの投げ合いから蓮向による人間投げ飛ばしに発展しそうだと思ったので、二人に手を振り自分が席を辞した。ぽかんとした表情でつかみあったまま止まった二人を尻目に、司は映画館のあるショッピングモールの中をぶらついて二時間を潰した。なかなか良いパーカを発見して購入に至ったので、わりと充実していた。


 そうして戻ってきたあとで二人に映画の感想を尋ねると、互いにそっぽを向いていて何も語らないわけである。これまたどうしたことだろうと思いつつも、残り半日黙したままの二人と過ごすのは嫌だったので、司は二人の仲の復旧に努めた。

 苦労の甲斐あって一時間ほどでいつも通りの二人に戻ってくれたのだが、そうすると二人して観た映画の話題がちょくちょく挟みこまれるので、今度は司が面白くなかった。


「……そんな、わけで、残りの、休み中、映画、観に行かない? と。送信」


 見逃したタイトルがアクションものだったので、ちょうどいいと思った司は小野を誘ってみたのだった。

 返信は五分ほどで届き、日時と場所を尋ねられた。顔をほころばせて、司はふたたびカチカチと文面を打った。




「ゴールデンウィークもおわりですね」

「だね」


 都市部のシネマコンプレックスで待ち合わせた司と小野は映画がはじまるまで、映画館の下の階にある喫茶店で時間を過ごしていた。今日の小野は長めの丈のスカートに長袖のチュニック、ストールを合わせた格好で、先日の様子からまたいつも通りの印象に戻っている。


「どうかなされましたか」

「ん、普段通りだなと思って」

「失礼な。多少なりともめかしこんできてますのに」

「そういう意味じゃなく。この前着てた服装はほら、被害者に似せた奴だったからさ。小野らしさが出てないというかなんというか? いつも通りがベストというか」

「……本当、その際も言いましたが。言葉を重ねるほど薄っぺらく聞こえますよ」


 ざくりと突き刺さる言葉により司の心が傷を負った。水を呑んで間を繋ごうと焦るが、既に飲み干したあとだった。正面の小野は頬杖をついて呆れた表情である。苦笑いした司が硬直していると、見計らったように抹茶小豆のケーキとコーヒー、苺のミルフィーユと紅茶が運ばれてきた。慌てて受け取り、間を潰す。小野はつんと澄まし顔で司の様子を見ていたが、すぐに吹き出してケーキに手を合わせた。司もそれにならう。

 その所作で手の怪我に気づかれたが、司は工作をしていて突き刺したのだと、嘘をついて流した。小野は疑いもしなかった。


「しっかし、前回も相当な大事件だと思ったけど、今回はカーチェイスまでするなんて思ってもみなかったね」

「わたしは未だに車に乗ることに若干抵抗がありますよ」

「んー、小野は無理やり連れ込まれてさらわれたわけだし、拒否反応出ても仕方ないよたぶん」

「ですかね。……そういえば、機を逸してしまって言いそびれてましたが」

「うん?」

「…………その」


 珍しくはっきりしない、しどろもどろな態度で小野は司を見ていた。視線に気づいてケーキをほおばりながら目を合わせた司は、小野に向かって首をかしげてみせる。


「あのですね。今更になってしまって、申し訳なく思うのですが」

「……なんか物壊したとか?」

「ちがいます」

「じゃ、なに」

「ええと……あの時、連れ去られそうになっていた時から、一応意識はあったんです」


 予期せぬところへ話題が飛んだため、あの時というのがいつを指すのか司の理解が一瞬遅れる。だが続けて言った連れ去りという言葉で先日の事件のことを言っていると気付き、ああ、と鷹揚にうなずいて返した。ところが理解を示して思考が通じたというのに、小野はますます言いづらそうに顔を背けた。


「……だから、司さんが危険を冒してまで車に乗り込んできてくれたことも、ぼんやりとですが覚えているのです」

「そうなんだ。なんか、こっぱずかしいや」

「恥ずかしがらずとも良いと思います。ただ、その……だから司さんに助けていただいてしまったので、その……謝りたくて」

「あやまりたくて?」


 オウム返しに聞き返した司に、小野は大きくうなずいてみせる。司は小野の意図するところがまたもつかめなくなり、素直に「どうして」と訊ねた。小野は、顔を背けたままに語る。


「……わたし、それなりに腕は立つ方だと自負、いや勘違いしていました。しかしそのことが原因で今回……いいえ、よく考えれば犬神使いの時も、助けられましたね。つまり計二度も司さんに迷惑をかけることになってしまったので、お詫び申し上げたく」

「いや、いやいや。なんでそうなんの?」

「自分を過信して、隙に付け込まれて司さんをいらない危険に巻き込みました。どうしようもありませんが、お詫びしかしようがないのです」


 小野は逸らしていた目を再び司に向けると、深々と頭を下げて真摯に謝った。今度は、司の方がしどろもどろになる番だった。


「……うーん」


 謝られても、司はお詫びを口にされるほどのことをした覚えはないのである。

 むしろ、本日の誘いに乗ってくれた理由の九割方がこの謝罪のためだったのだろうか、などと考えるとさめざめと泣きたくなる。もう五月だというのに、心に吹く隙間風は凍てつくように冷たく、身を切るように鋭かった。


「気にしなくても、いいのに」

「そういうわけにはまいりません」

「でもさ、いつか今度はこっちが助けてもらう側になるかもしれないでしょ? したら、そのとき小野はこっちが謝ろうとしなかったら腹立つ? いや、まあ大けがとか、そういうことあったら腹立つだろうけど。今回に限ってはこっちも小野も無傷だったわけだし」

「けれど、命を落として、彼岸と現世の間に投げだされるかもしれなかったのですよ?」


 急に概念的な話題に移った。が、司は小野の言わんとしていることを理解した上で、話しにくいと感じて頬をひきつらせた。

 ――彼岸と現世の狭間。命を落としかねない、危険な空間のことである。その話題は、あの日七人が被害者女性たちを置いて下山の運びになりかけた際に、赤馬から聞かされた話だった。


「〝異界〟……ね」



 あれから霧が晴れた二時間後、下山すべくキャラバンを駆る赤馬は、山から離れてあやしげな洋館に寄ると車ごと空き缶、銅線を買い取ってもらい、白衣のポケットに乱雑に札束(というほどでもない厚さ)を突っ込むと駅まで歩く道すがら、司たちに語ってくれた。


『気が三種類あることは知ってるね?』

『正、負、あとは……』

『どっちでもない、無色の気、でしょ』


 小野の答えに付け足す形で答えた司に、赤馬はうなずいてみせた。


『そう。そして無色の気は正負に傾くこと、または気の溜まる土地が破壊されることがない限り消費されることはなく、ひたすらに溜まっていくというのは知ってるかね』


 犬神使いの時の家がそれだ、と気付いた二人はうなずいて返す。


『では山の気はどちらだと思うね』

『良くないもの、ってさっき言ってましたよね』

『ああ。けれど良くないものが総じて悪いたぁ、限らないのサ。かといって正と言い切れるほどの効能を持つわけでもない。だから両者混在した、無色の気に近い存在が山の気なんだね。んで、無色の気は強い情念、呪いに通ずる執着などに染められると、負の気へと傾いて大きな流れになり術の力を増す。これも知ってるね。じゃあ、流れた力はどこへ向かうと思うね』

『そりゃ、術者が呪った相手でしょ』

『半分正解だ。でも人ひとり殺す程度のために使われる力なんて、そん中じゃごくごく一部。よほどのことがなきゃ余るわけでね。余剰分の力がどこへ向かうかというのが問題なんだね』


 悩む司と小野を見かねたのか、踊場がうしろから解答を教えようとした。しかし赤馬は「答を知ってる奴が言っちゃ面白くない」と言って発言を遮った。

 考え込んだまま足を止めた小野は地面を、歩き続けていた司は上を見て、それぞれに視線の先を指差す。赤馬は大きな声でブーっ、と不正解の意を示した。


『行く先など、どこでもないんだね』

『なにそれ汚い』

『いやはや、勘違いされちゃ困るよ。〝この世には〟存在しないってことサ。ま、そういう意味では二人とも、半分くらいは正解だね』


 軽く手を打ちならして赤馬は笑う。地面を見つめていた小野は顔を上げて、歩き出すとまた視線だけ下に向けた。地の底、獄へと思いをはせて。


『この世には無い……ですか?』

『ああ。多すぎる負の気は留まる場所を持たず、水が低きへ流れるように同じ負の気の多い場へ繋がる。つまり、彼岸にほど近い場所。〝異界〟だね。でも、おれにはみることができない』

『どうして?』

『淨眼と呼ばれる、普通みえないものをみる眼があればなんとかなるらしいがね。異界ってな奴ぁ通常の霊視、おれの眼じゃみえないのサ……だがきみら二人にはみえる。自分の言葉くらいは覚えてるかね? きみらがみた、感じたというあの〝歪み〟だよ』


 蜃気楼のようなイメージが、おぼろげに頭によみがえる。空間にねじれとひずみを生んでいた、なんだか掴みどころの無い力の出入り口。歩きつつ振り返った赤馬は二人の記憶が脳内に像を結んだのを表情から読み取ったのか、鼻を鳴らしてうなずく。


『ふん。おそらくはそれが異界の入口だったのだね。指向性を持ってしまった、膨大すぎる量の気が流れこむ穴ってもんだ。あの場の負の気を作り出した張本人は、流れる負の気に乗ってそこに呑まれたのかもしれないね。――俗に言う、神隠しサ』



 赤馬とはそこで別れて、以来会っていない。だが彼から聞いた話は頭の中に刷り込まれたように残っていて、どうにも時間が空いたりすると司はついついそのことを考えてしまうのだった。


「犬神使いも、自分が生んだ負の力に染められたあの家の気に乗って、異界に消えちゃったのかな」

「わかりません。が、加良部にせよ犬神使いにせよ、帰ってこれない場所へ届いてしまったのは確かです。司さんも、そうなるかもしれなかったんですよ」

「でも、次に〝そうなるかもしれない状況〟になった時、小野が助けにきてくれる可能性だってあるじゃん」

「それは……しかし、」

「続けても水掛け論になりそうだから言わせてもらうけどさ。仲間内でしょっちゅう謝り合うのって、あんまり良くないと思うんだよね。言われた方も言った方も気を使うけど、一歩引いたような、よくない気の使い方になるだろうから」


 押し留めるように手を突き出して言う司に、はっとした表情を見せて小野は黙り込む。

 言い過ぎたかな、と後悔の念が司の心中にとぽとぽと注ぎこまれ、居たたまれない空気になってしまったため真剣に席を立とうかとさえ考えてしまう。息が詰まって、苦しかった。


「ええと、小野、自分のせいだとばっかり思わない方がいいよ。一人でやってるんじゃないし、だれかのミスだってあるだろうから。でも一人じゃできないし、自分のミスも出るだろうけど……ああ、なに言ってんだろ。ごめんちょっとテンパってる」


 思いつくまま言葉を放りだすと、支離滅裂なことを言っている自分に嫌気がさした。けれどそれよりも、小野が悪いわけでもないのに沈んでいることが、司にとっては嫌なことに感じたのだった。

 と、司の放りだした言葉に何か感じ入ることがあったのか、小野は気の晴れた顔を上げる。


「いえ、なんとなく……わかるような気がします。というより、わかりたいと思います」


 挙動不審に頭を抱えていた司に、小野はそんな言葉をかけた。


「……そうです、よね。自分のせいだとばかり考えて、その気持ちを相手に押し付けては、いけませんよね」


 そうだそうか、と納得を噛みしめて、苦い微笑みを散らした。司はあっけにとられていたが、元気を取り戻した小野の笑い顔を見ていたら、問題が全て片付いたような、不思議な気分に襲われた。不意に、小野が笑みを納めて驚いた、新鮮な気付きを覚えた顔になる。


「……あ、そうか」

「どうしたの?」

「言いたいこと、謝る以外の言葉で見つかりました」


 司がへえ、と続きをせがむ声音を弾ませたのち、少しはにかんで、小野は言う。

 謝る感じではなく、それはむしろ逆の言葉だった。


       #


      #


 駅のホームに降り立ったのは、灰色のスリーピースで身を固めた背格好のがっしりした男だった。


 短く白いあごひげを撫でつけつつ改札を抜け、地上に続く階段の手前で足を止める。降り続く雨のことをすっかり失念していて、傘を忘れてきたのだった。どうしたものかと思い、売店で購入しようかとも迷ったが、ちょうどその時構内の端に何本か骨の折れたビニール傘が置かれていることに気付いた。短時間雨をしのぐのみならこれで構わないと判じて、男は雨中に死にかけの海月に似た傘をさしこむ。


 しばし歩き、歓楽街へと進む。中途で大型の白いハイエースとすれ違い、乗っている人間が虚ろな目をした女性たちばかりであるのを確認すると、周りに人がいないのをいいことに腹の奥から笑う声を響かせる。


 さらに先で、男はコンビニに入った。なぜか混んでいたコンビニの傘立ては既にスペースがなく、仕方ないので男は傘をゴミ箱に突き刺す。盗まれることなどないのは保証済みであるし、盗まれたら傘立てから拝借しようと思いつつ。店内のATMで金をおろそうと、財布の中でカードを探した。


 そして店から出ると、見事に傘はなくなっていた。それを確認してすぐ、誰も疑いの目をかけないほどスムーズに、さも自分のものであるかのように男は傘立てから真新しい紺色の傘を盗んだ。通りの向こうでなにやら乱闘めいたことが行われていたが興味は無く、細い路地に入って霞のように姿を消す。


 歩いて、抜けて、歩いて。路地を通って目的の場所へ向かい、男はその途中、つまらなそうに曇天を見上げる少女を見た。


 ――雨に濡れしっとりと頭を覆う黒髪、半月を描く黒曜石のような瞳、透けるように白い肌、小さく澄ました輪郭を縁取る(おとがい)


 男は己の目を疑った。


「……馬鹿な……山女魚(やまめ)? なぜ、お前が……」


 男の問いに答えられる者は誰もいない。


 その事実を理解していたから、男――七無ななしは少女に己を見つけられる前に、足早にそこを去った。




 GW俗信編:終



Name:目取真司

Hobby:パーカ・一人カラオケ

Weakness:ぬれせん

Specialty:水切り石がすごいよく跳ねる

Skill:〝追惜者ゴーストーカー〟霊体の認識。但し声は聞こえず触れもしない。ひたすら視えるだけ。しかし霊媒体質であるため憑依されることで(不本意ながら)口寄せもできる。また第六感が鋭く、触角と嗅覚への幻覚により危険域を察することが可能。――異界をも認識するという、赤馬に指摘された淨眼とは……?

Notes:発言の際に結構苦労している。メンバーのうち二人は司の発言にある「わざわざ苦労しているその点」をおかしいなと気づいている。



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