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やり込んだゲームのエンディングを変えるために奮闘して死んだら、続編でヒロインが闇堕ちしてた  作者: かませ犬


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5.クソ野郎

 ロビンと話すことでタマモさまが仰っていたことが事実であると確認できた。


 敵対して戦ったとはいえ、ロビンはかつての仲間だ。ロビンが仲間として加わってる時に俺が抜けていたとかもなく、普通に一緒に行動していた。


 そのロビンが俺を見てもこの反応だ。


 声をかけて言葉を交わし、鉄格子越しではあるがお互いに顔を見た。2年以上の牢屋生活で容姿が変化したロビンと違い、俺はそのままのはず。


 にも関わらず、ロビンはあたかも初対面のような対応をする。タマモさまが仰っていたように、俺のことをガイド・ルーカスとして認識していないんだろうな。


 そんでもって、ロビンには悪いが最初に会ったのがこいつで良かった。


 最初に会うのがそれこそクラリスやアデル、カーチスといった俺にとって親しい人物だったなら、覚悟していたとはいえショックは受けた。きついなって正直に思ったことだろう。


 ロビンは違う。別にこいつにガイド・ルーカスとして認識されていなくてもショックがない。うん、全部辛くないわ。


「でだ、そこのファン一号。まずは名乗れ。そしたらファンサービスくらいはしてやる」


 本当にふざけた男だな。勝手にファン認定して、俺がファンサービスを求めていると勝手に解釈してやがる。まぁ、これでこそロビンカスだよな。


「⋯⋯ガイド・ルーカスだ」


「ほぅ、ガイドか。オレさまほどじゃないが、なかなかセンスのある名前をしてるじゃねーか」


 ロビンに対して名前を名乗っても反応はこれか。姿形が俺と認識できなくても、自分と縁のある名前なら少しくらい反応するはず。ここまで初対面の対応をされると名前すら別の認識になっていると思っていい。


「それだけか?」


「あん?なんだ、まだ褒められ足りないのか?だが、ダメだ。ファンサービスは一回だけって決めてるからな」


 姿形、声、名前、その全てが別の認識になっている。俺であるのに、俺じゃない。どんな姿で、どんな声で、どんな名前を名乗っているのか俺視点じゃない自分が気になって仕方ない。


 まぁ、それは追追確認するとしよう。


 さて、ここら辺でロビンがどういうやつか改めて再確認しておこう。記憶に深く残っているのはゲームのロビン。裏切りが服を着て歩いているようなやつだ。


 最初に出会った時は猫を被っており、丁寧な言葉遣いと中性的で美しい顔のロビンに気を許したくらいのタイミングで、一度目の裏切り。


 その時は脅されて仕方なくと涙を流しながら謝罪し、主人公が許すことでパーティーに再加入。物語の中盤くらいまで行動を共にすることになる。


 仲間に再加入した後は落ち込んでいるパーティーの仲間のことを気にかけたり、面倒な雑用を率先したりと行動で誠意を見せて、プレイヤーがロビンのことを許したくらいのタイミングで、二度目の裏切り。


 この時の裏切りは家族である妹が人質に取られているとプレイヤー達にも分かりやすい状態なため、辛そうな表情で主人公たちに剣を向けるロビンに同情する者も多くいた。


 主人公たちの活躍もあって、妹を無事に取り返すことに成功すると、主人公たちと敵対する理由がなくなったロビンと共闘して章のボスを倒すという展開になる。


 戦闘終了後にロビンがそのまま仲間に加入するかと思えば、『妹が人質に取られていたとはいえ、大切な仲間をまた裏切ってしまった。こんな人間は君たちと一緒にいてはいけない』と言い残してパーティーを離脱。


 しばらくは別行動を取ることになる。


 ちなみにだが、人質になっていた妹も実はロビンとグルだったことが発覚して、二度目の裏切りも許せねぇと掌がクルックルっと返るのだが⋯⋯余談なので置いて置くとしよう。


 その後、町の住人から度々ロビンのことを聞くことはあるが主人公たちが会うことはなく⋯⋯物語の最終章に入ったタイミングで、ロビンと再会。


 敵の策でパーティーがバラバラになり、一人で行動中に敵に囲まれ窮地に陥っていた主人公をロビンが助けるという王道展開に、ヴァルキリー戦記のプレイヤーは胸が熱くなったことだろう。初見の時は俺もそうだった。


『わたしは二度も君を裏切ってしまった愚かな人間だ。⋯⋯こんなわたしでも、まだ君の力になれるだろうか』


『悲しいことを言うなよ、仲間だろ俺たち』


 そんな熱いやり取りを交わしてロビンがパーティーに再加入。ロビンと協力して仲間を探すという展開になるのだが⋯⋯。


『悪いな、この女を攫うってのがオレ様の仕事なんだわ』


 クラリスと合流したタイミングで、まさかの三度目の裏切り。


 ここにきてようやく本性を表し、今のような荒っぽい口調で主人公のことを嘲笑ってクラリスを攫っていく。


 巷では流麗の騎士などと呼ばれる高潔な騎士さまが、ここまでの裏切りクソ野郎になるなど誰が予想できるだろうか。


 そんなわけでまたもや一人になった主人公を操作し、仲間と合流してからクラリスを助けるためにラスボスのいる総本山へと向かうという流れになる。


 敵組織の幹部を倒しながら最終ダンジョンを進んでいくと、行く手を阻むように立ちはだかるロビンと出くわす。


『すみません。わたしとしたことが、敵に操られてしまったようで⋯⋯』


 このような白々しい嘘で、自分は裏切るつもりはなかったと主人公たちに弁明するが、通じるわけもなく戦闘開始。


 仲間にいた時よりも、適として登場した方が強いというテンプレはあるが、溜まりに溜まった鬱憤を晴らす為に全力を出したプレイヤーは多いことだろう。


 戦闘に敗れた後は、ブチ切れた主人公にぶん殴られて窓を突き破って高所から落下。遺体も確認できず消息不明となっていた。


 その後、ダウンロードコンテンツでロビンのサイドストーリーが追加されると、どうしてロビンが主人公を裏切ったのかが分かる。ただ、崇高な目的があるわけじゃない。


 こいつは、ただの金の亡者だ。


 金を積まれたから裏切った。金になりそうだから主人公と行動を共にしていた。金のためだけに動く。


 ロビン・フィデリティはそういう男だ。


 最終的に金に目が眩んだロビンが貴族のクーデターに加担し、その後敗北。そして今に至るわけだ。


 俺はゲームを通してロビンが金の亡者であることを知っていた。なので何とか裏切りを抑止できないかと、何かと理由をつけてお金をあげていたのだが、裏切りを阻止することはできなかったな。


 その行為が全て無駄になったわけじゃないのがせめてもの救い。お金をあげていたお陰か、パーティーの仲間の中では俺に気を許していたのか度々俺を酒の席に誘って、夜通し言葉を交えたりした。


 ゲームだけでは知り得ない、ロビンの人なりを知ることができた。自惚れでなければ友達まではいかずとも酒の相手くらいにはなっていたはずだ。


 俺の言葉なら、もしかしたら⋯⋯ロビンも踏みとどまってくれるんじゃないかと思い上がっていた。




 ───普通に裏切られた。




 それでもゲームで起こるクラリス誘拐は事前に分かっていたので、ロ(・)ビ(・)ン(・)に(・)よ(・)る(・)誘(・)拐(・)は(・)阻止することが出来た。


 その場で戦闘の流れとなり、ゲームの時よりもキツイ戦いを強いられたな。バラバラになったパーティーが合流する前の戦いだから仕方ない。


 俺とアデルとクラリスの三人で協力して、ロビンをぶっ倒して、解決。ってなる時に、ゲームにおいてはこのタイミングで登場しない敵の幹部がどこからともなく現れ、クラリスを攫った。


 その隙にロビンも逃走し、ゲームのように敵の総本山にロビンは出て来なかったので消息不明となっていた。今の状況を見るとその後は、サイドストーリー通りだろうな。


 こうして振り返ると、自分の甘さがよく目立って嫌気がする。知識という先入観があるとはいえ、クラリスを狙っているのが分かっていたんだ。どうして、しっかり気にかけていなかったんだろうな俺は⋯⋯。


 結果的に、ゲームと同じような展開になってしまっていた。


「さて、オレさまもそろそろ動くとするか」


 物思いに耽っていると寝転がっていたロビンが飛び起きた。


 コキコキと体の骨の音を鳴らしながら、まるで体の調子を確認するように体のパーツを動かし、満足がいったのか俺に向かってニッと笑う。


「お前もちょうどいいタイミングで来たな。なんせ、オレさまの脱獄の瞬間を見れるんだからな!」 


「は?」


 脱獄? その言葉を認識した時には既にロビンが動いていた。お腹に手を当てて、強く押したと思うと「おえぇ」っと口から何かを吐き出した。するはずのない金属音がした。


 吐瀉物にまみれて床に落ちたのは、鍵?


「どういう目的かは知らないが、俺に出てきて欲しい勢力がいるらしい」


 また、俺を見て笑う。


 今のは俺に対する説明か。何故、鍵を持っているのか。その答えまでは言ってくれなかったが、何者かがロビンに鍵を渡したのだけは分かった。


 床に落ちた吐瀉物の中から鍵を拾ったロビンは器用に鉄格子から腕を出して自分で鍵を開ける。もう少し細かい鉄格子ならできなかった脱出方法だったな。


「さて⋯⋯」


 扉を開けて、ロビンが出てきた瞬間に嫌な予感がした。




「悪いがちょっとばかり眠ってくれ、俺を脱獄させた犯人としてな!!!」




 殴りかかってきたロビンを見て思う。


 本当にクソ野郎だな、こいつ。

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