うさぎとかめ
ちょっとしたほのぼの?青春ストーリです。
私的にちょっと可愛く書けたかな?と思っています。
もしろしければみてやってくださいm(__)m
《登場人物》
遥すすむ…かめ
椿麟太郎…うさぎ
秀聡…5年1組担任、陸上部顧問。
もしもし かめよ かめさんよ
せかいのうちに おまえほど
あゆみの のろい ものはない
どうして そんなに のろいのか
どうして上手く走れないの?…
小学5年生の1月。冬休みが終わる。
三学期。始業式が終わる。
5年1組。
秀先生:始業式お疲れさま。
始業式でも言ってたように今年から全校で持久走大会をする。
大会は2月の中盤!それまで体育の時間などで練習を始める。
皆!やるからには全学年で一位を目指そう!!!
教室がざわめく。
嬉しそうな子もいれば、嫌そうにしている子。
その中でひたすら、
下を向き不安そう(青く)になっている子が一人。
遥すすむ。
すすむは運動が苦手だった。
特に走ることが大の苦手だった。
始業式の次の日は、冬休み明けのテストを1日した。
また次の日の体育の時間。
秀先生:昨日も言ったように、
今日から持久走大会に向けての練習を始める。
今日はそれぞれの実力が分かるように50mのタイムを計る。
それじゃぁ出席番号順にならんで!?
皆出席番号順に並ぶ。
秀先生:みんな気合い入れていけよぉ!!!!!
【ピッ】
スタートの合図の笛の音が運動場に響き渡る。
秀先生:では、次!…椿!? よーい…
【ピッ!】
運動場が少し騒ぐ。
秀先生:椿!お前すごいなぁ。また自己ベスト更新だぞ!!
椿麟太郎。
5年1組のモテ男。
勉強、運動神経共に抜群。陸上部のエース。
麟太郎:何秒だったの?
秀先生:7秒31!先生は嬉しいぞぉ!!!
秀聡。
5年1組の担任&陸上部顧問!
彼はとても熱い男だった。
秀先生:じゃぁ次は…
野口がインフルエンザが休みだから、遥!行ってみよう!!
すすむは恐る恐るラインに立つ。
秀先生:お!遥、緊張してんのか?
大丈夫だ!落ち着いてまっすぐ前を見て走ってみろ?
すすむ:…はぃ。
秀先生:さぁ遥あの夕日に向かって走り出せぇー!!!
位置について、よーい…
【ピッ】
一気に走り出す、すすむ。
ストップウォッチのスイッチが押される。
秀先生:…11秒52か。
すすむ:『11秒52?…
これじゃぁクラスどころか学校一最低記録じゃないか…』
秀先生:遥、前の50mより下がってないか?
すすむ:…
秀:まぁいいか。遥!これから頑張ろう!!…でわ、次!
全員のタイムを取り終えたところで、
キャイムがなり体育の授業が終わる。
学活の時間。
秀先生:今日は昨日したテストを返すからな。
すすむは勉強は得意だった。
特に国語や社会が得意だった。それは、麟太郎以上に。
今回も算数、理科は、麟太郎の方がヤヤ上だったが、
国語と社会は満点でクラスの誰よりも点が高かった。
授業が全て終わり生徒が集まりだす下駄箱。
すすむが靴を出し履こうとしていたそのとき。
麟太郎:よぉ、すすむ…
すすむ:麟太郎くん?
麟太郎:今日の50mタイムお前何秒だった?
すすむ:…
麟太郎:11秒代だってな?
すすむは少し下をむく。麟太郎が笑う。
麟太郎:100mの最高記録目指してんじゃないんだぜ?
…まぁ、クラスのお荷物だけにはなるなよ!??
すすむ:…
嫌味を言う麟太郎に、少し暗くなる すすむ。
麟太郎は負けず嫌いの性格だった。
国語と社会のテストですすむに負けたことが悔しかったんだろう。
そう言い麟太郎は笑いながら帰って行く。
それから一週間。
体育の時間などで長距離を走った後、
何度か短距離(50m)も走ったが、
すすむのタイムは全然変わらない。
ある日の放課後、すすむは秀先生に呼ばれた。
秀先生:遥は走るのが苦手か?
中々伸びないタイムと、
その都度に落ち込むすすむのことが気になったのだ。
秀先生:走ることは好きか?
秀先生がすすむに聞く。
すすむ:あんまり好きじゃない。走るよりも本を読む方が好き。
秀先生:そうか…遥はなぜ本が好きなんだ?
すすむ:だって楽しいもん。
秀先生:そうだな。じゃぁなぜ走るのは嫌いなんだ?
すすむ:…楽しくないから。
秀先生:そうか。…もし今よりも速く走れることが出来たら…
走ることも楽しくて好きにならないか?
すすむ:そりゃ、少しは好きになるかも知れないけど、
速くなんてなれないよ…
秀先生:なぜ速く走れないと思う?
そんな風に思ってたら速くなれるもんもなれないぞ?
すすむ:だって速くなんてなんないもん。
今まで誰よりも遅かったんだもん。
秀先生:遙は誰かに走り方教わったか?
すすむ:走り方?
秀先生は頷く。
秀先生:速く走るコツさえ掴めば誰だって速く走れるさ!
すすむ:ほんとに?
秀先生:ホントさぁ!後はちょっとした努力が必要だがな!!
ココだけの話、あの椿も才能は有ったものの、
部活に入ったばかりの頃は8秒代後半だったんだぞ!
すすむ:麟太郎くんが!?
『…それでも、凄いと思うけど』
秀先生:だから遙も諦めるな!?
すすむは少し元気になった。
そして秀にコツを教わる。
そして放課後が終わり、家に帰ると毎日近くを走るようになる。
そうしていく内に少しずつだが、
確実にすすむのタイムは縮まっていく。
一週間。
11秒代だったタイムが10秒代に変わろうとしている。
タイムが短くなる。
その度にすすむは嬉しくなって、
もっと速く走れるように練習を頑張っていく。
ある日の放課後。
すすむは、近所の公園で、いつものように走る練習をしていた。
その頃、麟太郎は友達の家から帰っていた。
その帰り道、麟太郎はその公園の前を通りかかった。
そして、つい足を止めてしまう。
麟太郎:『…すすむ?』
そこには一生懸命練習をしている、すすむの姿が…
麟太郎:『あいつ…最近少しだけど、
タイムが上がってきてると思ったら……
こんなところで練習してたのか…』
麟太郎:まぁ、俺には関係ないか…
そう言って麟太郎は帰っていった。
それから数日が経つ。
そして、大会の前日。
再びすすむは、秀先生のもとに呼ばれる。
秀先生:遙!最近調子良さそうだな?
すすむ:うん。先生のお陰だよ!?
秀先生:ぉ!嬉しいこと言ってくれるじゃないか♪
秀は喜んでそう言った。
秀先生:この調子なら明日も大丈夫そうだな!?
すすむは深く頷いた。
すすむ:今、毎日家の周り走ってるから、
体力にも大分、自信があるんだ♪
すすむは嬉しそうにそう言った。
それを見て秀もまた嬉しそうに言う。
秀先生:遙…大分逞しくなったな?
すすむ:ぇ?
秀先生:冬休み開けて直ぐの時は、
体育の時間になると下を向いてばかりだったのにな?…
すすむ:ぅん…
すすむは軽く頷いた。
そして秀がすすむに聞く。
秀先生:遙!…あの時の質問をもう一度聞く…
すすむ:?
秀先生:走ることは好きか?
すすむ:…………ぅん!
すすむは深く頷いた。
秀先生:そうか…なぜそう思うんだ?
すすむ:だって楽しいもん。
秀先生:そうだな。じゃぁなぜ走るのが楽しくなった?
すすむ:前より、速く走れるようになったから…
秀先生:なぜ速く走れるようになったと思う?
すすむ:?…先生が速くなるコツ教えてくれたからじゃん??
秀先生:それも有るがな…
一番大きかったのは、遙が努力したからなんだぞ!?
すすむ:…
秀先生:俺がいくらアドバイスしたとしても、
それを実行しないと意味がない!
しかしそれでも、ただ実行したからといって、
一度や二度したぐらいで速くなりはしない!
すすむ:先生は何が言いたいの??
秀先生:つまり、遙が速くなれたのは俺のお陰じゃない…
すすむ:?
秀先生:遙が速くなれたのは、遙自身が、
日々毎日努力したからだ!…よく頑張ったな!?
秀はそう笑顔で言う。
そしてすすむの頭に手を起き、その頭を思いっきり撫でた。
すすむ:…
すすむは少し照れるように下を向く。
秀先生:遙覚えておけ?努力は大事だ!
努力すれば誰でもそれ(目標)に近づけるんだ!!
すすむ:…うん!
すすむは下を向いたまま深く頷いた。
かめだって、努力すれば速く走れるんだ…
大会当日。
四年生が走り終わる。
いよいよ五年生男子が走る番。
そして、
「位置について」
皆、スタートラインに経つ。
「よーい」
いよいよ…
【バンッ!】
合図がなる。
五年生男子の皆が、一斉に走り出す。
すすむは真ん中の方を走っていた。
そんなすすむに一人近寄ってきた。
すすむ:『…麟太郎くん!?』
麟太郎:…
麟太郎はすすむの方を見る。
すすむ:?
麟太郎:…ま、頑張れよ?
すすむ:ぇ!?
麟太郎はそう言うと最前列の方へ駆けていく。
すすむ:…麟太郎くん!?
大会も中盤に差し掛かる。
麟太郎は最前列を走っていた。
麟太郎:『すすむの奴…今どの辺走ってんのかな?』
その時、後ろで話し声が聞こえた。
「聞いたか?」
「なにが??」
「なんか後ろの方で怪我人出たらしいって…」
「マジで!?」
麟太郎:『怪我人?…』
「先生知ってんの?」
「さぁ?」
「…それで?」
「ン?」
「だから、そいつって誰?俺等のクラス??」
「嫌…確か……」
麟太郎:…
大会後半を迎え、ゴールを終えた選手も何人かいた。
だけど、その中に、麟太郎の姿はなかった。
麟太郎:…
『嫌…確か……一組の…』
すすむ:…ナンデ
その頃、すすむは泣いていた。
すすむ:…ナンデ…こうなるの??
すすむは最後尾を一人 歩いていた。
やっぱり…かめはかめなんだ…
そんなすすむの元へ、
「すすむ~!?」
前の方から誰かが一人、
走り寄ってきた。
すすむ:!?…麟太郎くん!??
麟太郎はすすむの元に着くと息を切らせていた。
すすむ:…なんで!?…なんで、麟太郎くんがここに!??
麟太郎:ハァハァ
麟太郎:『一組!?』
「一組の誰?」
「え…と、誰だっけ?」
「なんだ…知らねぇのか?」
「ン~…、確か……ぁ!亀だよ、亀!!」
「亀?」
「ぁぁ!一組の亀…」
「なんだぁ、亀か…じゃぁどっち道ビリじゃん??」
「まぁな…」
二人は笑う。
麟太郎:『一組の亀……すすむの事か…』
…
麟太郎:『…俺には関係ない………』
…
麟太郎:『俺には………』
麟太郎:ハァハァ
すすむ:麟太郎くん!?
麟太郎:………ガ
すすむ:ぇ?
麟太郎:……ケガ…したんだって?
すすむ:……………
すすむは軽く頷く。
すすむ:でも何で??
麟太郎:五組の奴等が言ってた…
すすむ:ぇ??
麟太郎:一組の亀が怪我したって…
すすむ:一組の亀って……僕のこと!??
麟太郎:他に誰がいるんだよ!?
すすむ:『…その通りだけど……
そんなにハッキリ言わなくても………』
麟太郎:それで?
すすむ:?
麟太郎:怪我したんだろ?平気なのか!??
すすむ:ぁー…
すすむは自分の足を見る。麟太郎もその足を見る。
その足は腫れていた。
麟太郎:…これ………
すすむ:麟太郎くん?
麟太郎:捻挫してるかも…
すすむ:……………ぅん
すすむは軽く頷いた。
麟太郎:これじゃぁ、もうゴールは無理なんじゃ…
すすむ:嫌だ!!
麟太郎:すすむ?…
すすむ:ぁ……嫌…そのぉ……
麟太郎:…
麟太郎はすすむの横に着く。
すすむ:麟太郎くん!??
そして、すすむの肩を組む。
麟太郎:この方が足に負担掛けないだろ?
すすむ:…
すすむが不思議そうに麟太郎を見る。
それを見て麟太郎は言う。
麟太郎:ゴールするんだろ!!?
すすむ:…麟太郎くん!?………ぅん…
すすむは深く頷いた。
そして、少しずつ歩いて行く。
すすむは再び、麟太郎を見る。
それに麟太郎が気づく。
麟太郎:なに?
すすむ:ぇ?……嫌…ただ…何でかなって………
麟太郎:?なにが??
すすむ:だから…何で、麟太郎くんはこんなことするの?
…最前列に居たんでしょ?それなのに…
麟太郎:…
すすむ:それに、どっち道…
僕はビリだったかもしれない………
すすむは少し哀しそうにそう言った。
麟太郎:…なんだ、そんなことか?
すすむ:ぇ?
麟太郎:お前は確かに亀だけど…
俺は努力する奴は嫌いじゃない…ただそれだけだ……
すすむ:麟太郎くん…
麟太郎:ビリでもさぁ…この俺と一緒にゴールするんだ!
……だから、そんな顔でゴールすんなよ?
すすむ:ぇ?
麟太郎:自信持て!?…俺はもう、お前を遅いなんて言わない……
すすむ:…
麟太郎: …だから……胸張ってゴールするぞ!!?
すすむ:…うん!……麟太郎くん?
麟太郎:ン?
すすむ:………アリガトウ
麟太郎:…
数十分後。
秀先生:!!?見えたぞ!!…最後の二人だ!!!
ゴール手前、大勢の声援が二人へ響く。
そして二人はゆっくり腕を上げゴールする。
もしもし かめよ かめさんよ
せかいのうちに おまえほど
あゆみの のろい ものはない
どうして そんなに のろいのか
努力すれば誰でも報われる。
努力すればかめだってゴールできる。
だけど、一人では何もできない。
沢山の手を借りながら少しずつゴールしていく。
一番がいれば必ずビリがいる。
誰かは必ずビリになる。
何もしないビリはカッコ悪い。
だけど、何かをしたビリなら…
胸を張ってゴールすればいい。
この…うさぎとかめのように。
このお話を通して何か共感して頂けたら幸いですvv
私も、努力しよ;;