表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

うさぎとかめ

作者: 夢咲白憧

ちょっとしたほのぼの?青春ストーリです。

私的にちょっと可愛く書けたかな?と思っています。

もしろしければみてやってくださいm(__)m

《登場人物》


(ハルカ)すすむ…かめ

椿麟太郎(ツバキリンタロウ)…うさぎ

秀聡(ヒデアキラ)…5年1組担任、陸上部顧問。




もしもし かめよ かめさんよ 

せかいのうちに おまえほど

あゆみの のろい ものはない 

どうして そんなに のろいのか




どうして上手く走れないの?…




小学5年生の1月。冬休みが終わる。

三学期。始業式が終わる。

5年1組。


秀先生:始業式お疲れさま。

始業式でも言ってたように今年から全校で持久走大会をする。

大会は2月の中盤!それまで体育の時間などで練習を始める。

皆!やるからには全学年で一位を目指そう!!!


教室がざわめく。

嬉しそうな子もいれば、嫌そうにしている子。

その中でひたすら、

下を向き不安そう(青く)になっている子が一人。


遥すすむ。

すすむは運動が苦手だった。

特に走ることが大の苦手だった。



始業式の次の日は、冬休み明けのテストを1日した。

また次の日の体育の時間。


秀先生:昨日も言ったように、

今日から持久走大会に向けての練習を始める。

今日はそれぞれの実力が分かるように50mのタイムを計る。

それじゃぁ出席番号順にならんで!?


皆出席番号順に並ぶ。


秀先生:みんな気合い入れていけよぉ!!!!!


【ピッ】


スタートの合図の笛の音が運動場に響き渡る。


秀先生:では、次!…椿!? よーい…


【ピッ!】


運動場が少し騒ぐ。


秀先生:椿!お前すごいなぁ。また自己ベスト更新だぞ!!


椿麟太郎。

5年1組のモテ男。

勉強、運動神経共に抜群。陸上部のエース。


麟太郎:何秒だったの?


秀先生:7秒31!先生は嬉しいぞぉ!!!


秀聡。

5年1組の担任&陸上部顧問!

彼はとても熱い男だった。


秀先生:じゃぁ次は…

野口がインフルエンザが休みだから、遥!行ってみよう!!


すすむは恐る恐るラインに立つ。


秀先生:お!遥、緊張してんのか?

大丈夫だ!落ち着いてまっすぐ前を見て走ってみろ?


すすむ:…はぃ。


秀先生:さぁ遥あの夕日に向かって走り出せぇー!!!

位置について、よーい…


【ピッ】


一気に走り出す、すすむ。

ストップウォッチのスイッチが押される。


秀先生:…11秒52か。


すすむ:『11秒52?…

これじゃぁクラスどころか学校一最低記録じゃないか…』


秀先生:遥、前の50mより下がってないか?


すすむ:…


秀:まぁいいか。遥!これから頑張ろう!!…でわ、次!


全員のタイムを取り終えたところで、

キャイムがなり体育の授業が終わる。



学活の時間。


秀先生:今日は昨日したテストを返すからな。


すすむは勉強は得意だった。

特に国語や社会が得意だった。それは、麟太郎以上に。

今回も算数、理科は、麟太郎の方がヤヤ上だったが、

国語と社会は満点でクラスの誰よりも点が高かった。

授業が全て終わり生徒が集まりだす下駄箱。

すすむが靴を出し履こうとしていたそのとき。


麟太郎:よぉ、すすむ…


すすむ:麟太郎くん?


麟太郎:今日の50mタイムお前何秒だった?


すすむ:…


麟太郎:11秒代だってな?


すすむは少し下をむく。麟太郎が笑う。


麟太郎:100mの最高記録目指してんじゃないんだぜ?

…まぁ、クラスのお荷物だけにはなるなよ!??


すすむ:…


嫌味を言う麟太郎に、少し暗くなる すすむ。

麟太郎は負けず嫌いの性格だった。

国語と社会のテストですすむに負けたことが悔しかったんだろう。

そう言い麟太郎は笑いながら帰って行く。




それから一週間。


体育の時間などで長距離を走った後、

何度か短距離(50m)も走ったが、

すすむのタイムは全然変わらない。

ある日の放課後、すすむは秀先生に呼ばれた。


秀先生:遥は走るのが苦手か?


中々伸びないタイムと、

その都度に落ち込むすすむのことが気になったのだ。


秀先生:走ることは好きか?


秀先生がすすむに聞く。


すすむ:あんまり好きじゃない。走るよりも本を読む方が好き。


秀先生:そうか…遥はなぜ本が好きなんだ?


すすむ:だって楽しいもん。


秀先生:そうだな。じゃぁなぜ走るのは嫌いなんだ?


すすむ:…楽しくないから。


秀先生:そうか。…もし今よりも速く走れることが出来たら…

走ることも楽しくて好きにならないか?


すすむ:そりゃ、少しは好きになるかも知れないけど、

速くなんてなれないよ…


秀先生:なぜ速く走れないと思う?

そんな風に思ってたら速くなれるもんもなれないぞ?


すすむ:だって速くなんてなんないもん。

今まで誰よりも遅かったんだもん。


秀先生:遙は誰かに走り方教わったか?


すすむ:走り方?


秀先生は頷く。


秀先生:速く走るコツさえ掴めば誰だって速く走れるさ!


すすむ:ほんとに?


秀先生:ホントさぁ!後はちょっとした努力が必要だがな!!

ココだけの話、あの椿も才能は有ったものの、

部活に入ったばかりの頃は8秒代後半だったんだぞ!


すすむ:麟太郎くんが!?

『…それでも、凄いと思うけど』


秀先生:だから遙も諦めるな!?


すすむは少し元気になった。


そして秀にコツを教わる。



そして放課後が終わり、家に帰ると毎日近くを走るようになる。

そうしていく内に少しずつだが、

確実にすすむのタイムは縮まっていく。


一週間。

11秒代だったタイムが10秒代に変わろうとしている。

タイムが短くなる。

その度にすすむは嬉しくなって、

もっと速く走れるように練習を頑張っていく。



ある日の放課後。

すすむは、近所の公園で、いつものように走る練習をしていた。

その頃、麟太郎は友達の家から帰っていた。

その帰り道、麟太郎はその公園の前を通りかかった。

そして、つい足を止めてしまう。


麟太郎:『…すすむ?』


そこには一生懸命練習をしている、すすむの姿が…


麟太郎:『あいつ…最近少しだけど、

タイムが上がってきてると思ったら……

こんなところで練習してたのか…』


麟太郎:まぁ、俺には関係ないか…


そう言って麟太郎は帰っていった。



それから数日が経つ。

そして、大会の前日。

再びすすむは、秀先生のもとに呼ばれる。


秀先生:遙!最近調子良さそうだな?


すすむ:うん。先生のお陰だよ!?


秀先生:ぉ!嬉しいこと言ってくれるじゃないか♪


秀は喜んでそう言った。


秀先生:この調子なら明日も大丈夫そうだな!?


すすむは深く頷いた。


すすむ:今、毎日家の周り走ってるから、

体力にも大分、自信があるんだ♪


すすむは嬉しそうにそう言った。

それを見て秀もまた嬉しそうに言う。


秀先生:遙…大分逞しくなったな?


すすむ:ぇ?


秀先生:冬休み開けて直ぐの時は、

体育の時間になると下を向いてばかりだったのにな?…


すすむ:ぅん…


すすむは軽く頷いた。

そして秀がすすむに聞く。


秀先生:遙!…あの時の質問をもう一度聞く…


すすむ:?


秀先生:走ることは好きか?


すすむ:…………ぅん!


すすむは深く頷いた。


秀先生:そうか…なぜそう思うんだ?


すすむ:だって楽しいもん。


秀先生:そうだな。じゃぁなぜ走るのが楽しくなった?


すすむ:前より、速く走れるようになったから…


秀先生:なぜ速く走れるようになったと思う?


すすむ:?…先生が速くなるコツ教えてくれたからじゃん??


秀先生:それも有るがな…

一番大きかったのは、遙が努力したからなんだぞ!?


すすむ:…


秀先生:俺がいくらアドバイスしたとしても、

それを実行しないと意味がない!

しかしそれでも、ただ実行したからといって、

一度や二度したぐらいで速くなりはしない!


すすむ:先生は何が言いたいの??


秀先生:つまり、遙が速くなれたのは俺のお陰じゃない…


すすむ:?


秀先生:遙が速くなれたのは、遙自身が、

日々毎日努力したからだ!…よく頑張ったな!?


秀はそう笑顔で言う。

そしてすすむの頭に手を起き、その頭を思いっきり撫でた。


すすむ:…


すすむは少し照れるように下を向く。


秀先生:遙覚えておけ?努力は大事だ!

努力すれば誰でもそれ(目標)に近づけるんだ!!


すすむ:…うん!


すすむは下を向いたまま深く頷いた。




かめだって、努力すれば速く走れるんだ…




大会当日。

四年生が走り終わる。

いよいよ五年生男子が走る番。



そして、


「位置について」


皆、スタートラインに経つ。


「よーい」


いよいよ…


【バンッ!】


合図がなる。



五年生男子の皆が、一斉に走り出す。


すすむは真ん中の方を走っていた。

そんなすすむに一人近寄ってきた。


すすむ:『…麟太郎くん!?』


麟太郎:…


麟太郎はすすむの方を見る。


すすむ:?


麟太郎:…ま、頑張れよ?


すすむ:ぇ!?


麟太郎はそう言うと最前列の方へ駆けていく。


すすむ:…麟太郎くん!?



大会も中盤に差し掛かる。

麟太郎は最前列を走っていた。


麟太郎:『すすむの奴…今どの辺走ってんのかな?』


その時、後ろで話し声が聞こえた。



「聞いたか?」

「なにが??」

「なんか後ろの方で怪我人出たらしいって…」

「マジで!?」


麟太郎:『怪我人?…』


「先生知ってんの?」

「さぁ?」

「…それで?」

「ン?」

「だから、そいつって誰?俺等のクラス??」

「嫌…確か……」


麟太郎:…



大会後半を迎え、ゴールを終えた選手も何人かいた。

だけど、その中に、麟太郎の姿はなかった。



麟太郎:…


『嫌…確か……一組の…』




すすむ:…ナンデ


その頃、すすむは泣いていた。


すすむ:…ナンデ…こうなるの??


すすむは最後尾を一人 歩いていた。



やっぱり…かめはかめなんだ…



そんなすすむの元へ、


「すすむ~!?」


前の方から誰かが一人、

走り寄ってきた。


すすむ:!?…麟太郎くん!??


麟太郎はすすむの元に着くと息を切らせていた。


すすむ:…なんで!?…なんで、麟太郎くんがここに!??


麟太郎:ハァハァ




麟太郎:『一組!?』


「一組の誰?」

「え…と、誰だっけ?」

「なんだ…知らねぇのか?」

「ン~…、確か……ぁ!亀だよ、亀!!」

「亀?」

「ぁぁ!一組の亀…」

「なんだぁ、亀か…じゃぁどっち道ビリじゃん??」

「まぁな…」


二人は笑う。


麟太郎:『一組の亀……すすむの事か…』



麟太郎:『…俺には関係ない………』



麟太郎:『俺には………』




麟太郎:ハァハァ


すすむ:麟太郎くん!?


麟太郎:………ガ


すすむ:ぇ?


麟太郎:……ケガ…したんだって?


すすむ:……………


すすむは軽く頷く。


すすむ:でも何で??


麟太郎:五組の奴等が言ってた…


すすむ:ぇ??


麟太郎:一組の亀が怪我したって…


すすむ:一組の亀って……僕のこと!??


麟太郎:他に誰がいるんだよ!?


すすむ:『…その通りだけど……

そんなにハッキリ言わなくても………』


麟太郎:それで?


すすむ:?


麟太郎:怪我したんだろ?平気なのか!??


すすむ:ぁー…


すすむは自分の足を見る。麟太郎もその足を見る。

その足は腫れていた。


麟太郎:…これ………


すすむ:麟太郎くん?


麟太郎:捻挫してるかも…


すすむ:……………ぅん


すすむは軽く頷いた。


麟太郎:これじゃぁ、もうゴールは無理なんじゃ…


すすむ:嫌だ!!


麟太郎:すすむ?…


すすむ:ぁ……嫌…そのぉ……


麟太郎:…


麟太郎はすすむの横に着く。


すすむ:麟太郎くん!??


そして、すすむの肩を組む。


麟太郎:この方が足に負担掛けないだろ?


すすむ:…


すすむが不思議そうに麟太郎を見る。

それを見て麟太郎は言う。


麟太郎:ゴールするんだろ!!?


すすむ:…麟太郎くん!?………ぅん…


すすむは深く頷いた。


そして、少しずつ歩いて行く。


すすむは再び、麟太郎を見る。

それに麟太郎が気づく。


麟太郎:なに?


すすむ:ぇ?……嫌…ただ…何でかなって………


麟太郎:?なにが??


すすむ:だから…何で、麟太郎くんはこんなことするの?

…最前列に居たんでしょ?それなのに…


麟太郎:…


すすむ:それに、どっち道…

僕はビリだったかもしれない………


すすむは少し哀しそうにそう言った。


麟太郎:…なんだ、そんなことか?


すすむ:ぇ?


麟太郎:お前は確かに亀だけど…

俺は努力する奴は嫌いじゃない…ただそれだけだ……


すすむ:麟太郎くん…


麟太郎:ビリでもさぁ…この俺と一緒にゴールするんだ!

……だから、そんな顔でゴールすんなよ?


すすむ:ぇ?


麟太郎:自信持て!?…俺はもう、お前を遅いなんて言わない……


すすむ:…


麟太郎: …だから……胸張ってゴールするぞ!!?


すすむ:…うん!……麟太郎くん?


麟太郎:ン?


すすむ:………アリガトウ


麟太郎:…



数十分後。

秀先生:!!?見えたぞ!!…最後の二人だ!!!


ゴール手前、大勢の声援が二人へ響く。


そして二人はゆっくり腕を上げゴールする。



もしもし かめよ かめさんよ 

せかいのうちに おまえほど

あゆみの のろい ものはない 

どうして そんなに のろいのか






努力すれば誰でも報われる。

努力すればかめだってゴールできる。

だけど、一人では何もできない。

沢山の手を借りながら少しずつゴールしていく。


一番がいれば必ずビリがいる。

誰かは必ずビリになる。

何もしないビリはカッコ悪い。

だけど、何かをしたビリなら…

胸を張ってゴールすればいい。


この…うさぎとかめのように。



このお話を通して何か共感して頂けたら幸いですvv

私も、努力しよ;;

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 先生の「なぜ嫌いなのか?」の部分にはハッとさせられました。 うさぎである麟太郎が戻ってくるところ。 [気になる点] でわ → では が正しいです [一言] 感動しました。 本家の「うさぎと…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ