第一話
古い夢を見ていた。
懐かしい夢だ。
そこには師匠がいた。
俺に居合術を教えてくれた人だ。
スキルに恵まれず、へこたれていた頃に出会った。
出来ることなら
また、あの日常に戻りたい。
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リアン・フォージンは恵まれている。
大国レックス王国でも最高位に位置する貴族、
フォージン公爵家の四男として生まれた。
四男のため家督を継ぐことはないが、
兄たちには可愛がられて育った。
幼い頃から勤勉で、努力を怠らなかった。
フォージン公爵家は文武両道な家系である。
現当主フィリス公爵は文官寄り。
長男は文に優れ、
次男と三男は武に秀でている。
だがリアンはどうか。
文も武も、それなりに出来た。
良く言えば文武両道。
悪く言えば器用貧乏。
スキルを鑑定するまでは希望を持っていた。
もしかしたら自分にも驚異的な才能がきっとあるんだと。
自分のスキルを知ったとき、リアンは内心落胆した。
与えられたスキルは《抜刀術》といった。
決して弱いわけではない
スキルだったが兄達のスキルには見劣りした。
実際十で神童、十五で才子、二十歳過ぎればただの人という言葉が貴族間の陰口として言われていた。
フォージン公爵家の恥とまで言われた。
だがそれでも家族の態度は変わらなかった。
それに報いたくて
リアンはひたすら剣を振った。
リアンは、自分が恵まれていると理解している。
努力を重ね、成績も上位を保ち、
王立学園にも優秀な成績で入学した。
そして彼の人生が大きく動いたのは、
勇者アールが学園に転入してきてからだ。
当時のアールは、良くも悪くも目立っていた。
王家の推薦による特別入学。
それだけで注目を集めるには十分だった。
入学してしばらくは関わりはなかった。
ただ、何度か見かけたことがある。
放課後の教室で、
一人で必死に勉強している姿を。
(……努力家なんだな)
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突然だが、自己紹介をさせてもらおう。
俺の名前はリアン。
大国レックス王国でも有数の大貴族、
フォージン公爵家の四男だ。
家督は継げない。
だが、別に気にしていない。
そもそも腹芸は好きじゃないし、
貴族らしい振る舞いも性に合わなかった。
貴族としての教養は学んだ。
将来は騎士にでもなろうか。
そんな風にぼんやり考えていた。
だが、人生は思い通りにはいかない。
今の俺は
勇者パーティーの一員だ。




