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11 宮廷入りと新世界の始まり
皇宮の正門で、エミリアは金色の羊皮紙に記された正式な辞令を受け取った。
「専属味覚師エミリア・ド・ベルクール殿」
重々しい声で読み上げられる称号が、彼女の新しい人生の始まりを告げている。
案内された専用厨房は、エミリアの想像を遥かに超える豪華さだった。大理石のカウンター、最高級の調理器具、そして異次元の調味料を保管できる特別な魔法陣が刻まれた保管庫まで用意されている。
「こんな立派な場所で……」
専用居室もまた、平民出身の彼女には信じられないほど優雅だった。天蓋付きのベッド、絹のカーテン、窓からは美しい中庭が一望できる。
「よろしくお願いします、エミリア様」
侍女の少女が深々と頭を下げる。昨日まで借金取りに頭を下げていた自分が「様」付けで呼ばれる現実に、エミリアは戸惑いを隠せなかった。
廊下を歩く宮廷の人々の冷たい視線と陰口が、彼女の耳に届く。
「あんな平民が……」
「皇帝陛下を惑わすつもりでしょうか」
夕日が宮廷の窓を照らし、エミリアは決意を新たにする。
「ここからが本当の戦いの始まり……」




