3 白い紙
次の日。
夜更かしした私は9時に起きて、おばあちゃんが用意してくれていたおにぎりを食べた。梅干しも、おかかも好きだけど、一番好きなのは鮭。今日はおばあちゃんが鮭と昆布の二種類を作ってくれていた。
うん、美味しい。
「おじいちゃんは仕事?」
「あの人、今日、休みだから朝早くから釣りに行ったわよ」
「え。一緒に夜更かししたのに?」
「ジジイだから寝なくてもいいんでしょ。マオ、私はお昼前にパートに行くから。帰りは四時過ぎね」
「うん、分かった」
「熱中症にだけは気をつけて。ジジイに会ったらしっかり水分取るように言って頂戴。あ、私が帰るまでは呑むなって言ってね」
「うん。お酒だね?」
おにぎりを食べて、また宿題をしているとおじいちゃんが戻ってきた。おばあちゃんの伝言を伝えると、「あー。分かった分かった」と言って、本を広げて読んでいた。
お昼になると、宿題を止め、おじいちゃんとそうめんを食べていると「マオ、暇なら昼から出かけるか?クーラー聞いてる、児童館でも行くか」と言われた。
児童館には漫画も置いてある。アニメや映画も見れる。
本を借りて、夜寝る前に読むのにいいかもしれない。それに図書館で宿題をするのもいい。
「うん。行きたい」
「よし。じゃあ、飯食ったら行くぞ」
そうめんを食べ終わると、私はおじいちゃんに近所の児童館に連れて行って貰った。
今日みたいに暑くなければ一人で歩いて来れるけれど、児童館に着くころには溶けているかもしれない。
おじいちゃんの古い車だと五分かからないくらいで着いた。
「よし。俺も釣りの本でも探すか。じゃあ、俺はあの辺にいるからな。もし分からなくなったら受付の人に言ってくれ。バス停はあそこだな。もし、マオ、一人できたいときはあそこでバス乗ったらいいぞ」
「うん」
「帰りにコロッケでも買って帰るか。今日はどんな悪い事するか、考えておけよ。まずは買い食いだな」
「うん」
そういうとおじいちゃんはすぐに釣りの本がある方へと歩いて行った。
私はアニメや漫画のコーナーを見てから、学校で流行っている妖怪の本や占いの本を見たりした。血液型占い、姓名判断……。世界の怖い話、本当にあった怖い話……。
どれを読もうかな。あ、この本にしようかな。
怪談話の本と女の子が主人公の冒険の本、それに料理を作る女の子の話を持って、空いているソファーに座って読みだした。
怪談話は思ったよりも怖くて、ゾクゾクしながら読み進めていたので、隣に誰か座ったのをちっとも気付かなかった。
「ふう」という、溜息で気付いて、パッと顔を上げると、綺麗なお姉さんと目が合った。
「ごめんね、邪魔しちゃった?」
「いいえ」
私は首を横に振って、お姉さんの方に置いていた本を自分の膝の上に置いた。
それから黙って二人共本を読んでいたらお姉さんが立ち上がったので、私も顔を上げた。
ハラリとお姉さんが歩き出してすぐに何か私の足元に落ちた。
「あの、落ちました」
「え?」
私が足元に落ちた紙を拾ってお姉さんに渡そうとするとお姉さんは不思議そうな顔をした。
「何か落としたかしら?」
「え?えっと、紙?」
「本当?何も落としてないようだけど?」
お姉さんは床を見て、自分の手元を見て「ね?」と言ったけど、私の手元は何も見ていなかった。
「あ、あ。すみません」
「ふふ、いいえ」
お姉さんは本を持つと受付の方へと歩いていった。
私は手元に残った紙を見ると、それは勉強で使っているノートよりはちょっと小さい大きさの真っ白な紙だった。
「本に挟んであったのかな?まっしろだ。でもなんか変な紙」
触るとざらざらしている。なんだろう?私が裏返したり、何か書いてないかと見ているとおじいちゃんがやってきた。
「おお。ここにいたか。そろそろ帰るか。借りる本は決まったか?」
「うん。ちょっと待って」
私はソファーに置いた本を抱えると、おじいちゃんと受付に行き、貸出手続きをして、そのままおじいちゃんとコロッケを買い食いして帰った。
おじいちゃんの家に帰って本をバッグから出してから、あの紙をそのまま持って帰って来てしまったのに、気付いた。
「あ。受付のお姉さんに聞けばよかった。あの変な紙、もって帰ってきちゃった」
まあ、こんど本を返す時に聞いてみよう。
そうして、またその紙を私の部屋(仮)に置いて、夕ご飯を食べて、お風呂に入って、布団にもぐって借りてきた本を開いた。
途中で眠くなったので、あの紙を栞代わりにして、本の間に挟んで電気を消して寝てしまった。