『シキ・ブレイブ』
〈シキ・ブレイブ〉
「…繰り返すようだけど、ここは魔王の管轄内だ。
だから、魔王と出逢ったらまず逃げられない。
多分、コヨミの転移魔法でもね
だから、少なくとも僕も戦うつもりで来た。」
そもそも、ここまで来てにげようなんて思ってないしね
「それは楽しみだ
静かに殺さずにわざわざ目の前に出向いてやったのだから貴様らは感謝するといい」
「「っ!?」
振り向くと、そこには黒の体に真紅の目をした生物…
魔王がいた
「コヨミ!」
それを視認してすぐにコヨミに合図を送る
「わかってる!〈ノックバックブロー〉!」
僕の合図より先に動いてた。やっぱりコヨミとは息があう
「残念だったな。我に魔法は効かない」
「僕らは魔法主体じゃない!〈牙突〉」
「わざわざ目の前に出てきたのだ。対策をしていない訳がないだろう?」
そう言った魔王の体は赤く光っている。
この光が物理攻撃を軽減しているのだろう。
「ん、シキ!あれ“不壊の新月”ってアイテムだったはず!
レア度が高いだけアイテムなだけあって多分かなり防御力が高い!」
「えぇ!?弱点とかないの?」
「ある…はず!」
「どんなの?」
「え、」
「え?」
ちょっと待って、まさか…
「えっーと…うん。忘れた」
相方の記憶力が貧弱すぎる
「ちょっ、思い出してよ!?」
そうこうしているうちにも魔王とは打ち合っている
が、こちらの攻撃が無効化される以上相手に押されているのが現状だ
「…頑張る」
なるべく早く思い出してもらわないと、負けたって不思議ではないだろう。
「…この我と実力が拮抗しているか。仕方がない〈闇の波動〉」
「なっ、〈魔法破壊〉…いや、〈対象化LV7〉」
魔王が放った魔法に対して、辺り一体のスキルを全て吸い取り、更にこちらの技レベル未満の物を無効化するスキルを使い対応する。
「…ん?シキ?なんかあっちから飛んできてない?」
そういってコヨミがどこかを指刺す
「見てる余裕ないかも!」
魔法を無効化しただけでまだ魔王とは戦っているのだ
「じゃー私が見る、あれ多分複合魔法だよ。
炎と地の複合かな?かなり強いね。」
「ちょっ、打ち消せる!?」
対象化は魔法を集めてる途中に中断できない。
だから、僕に向かってきてるなら外から打ち消してもらうしかない。
「むり。対象化あるし、打ち消そうとした魔法もそっちに行く」
ああ、〈対象化〉はパーティーメンバーにも効果があるんだった…
「あ〜…コヨミ」
「ん〜?」
「テレポート、試してみて。」
「ええ?こんな最終決戦感だしといて?
できるのかもわかんないのにさぁ。
…やりはするけどさ?〈集団転移〉っと」
そう詠唱して、コヨミは転移魔法を使った
(使えた)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「良かった…逃げ切れたか。今代の魔王は【逃走不能】を持ってなかったのかな」
「ああ〜思い出した〜」
コヨミが、街への転移を成功させた後そんなことを言い出した
「ん?何を?」
「魔王が持ってた不壊の新月の弱点」
「え?今…なんだったの?」
コヨミはこういう節がある。もっと早ければ逃げずに済んだかもしれないのに
「複合魔法。“思い出しても”だったね」
あ、“魔法”か…
早く気づけばの逃げ道が絶たれた
「もっと早く気づいてたら対象化使う前に倒せてたんじゃないかな?」
「いや、でも〈魔法破壊〉を使わずに対象化使ったのはシキの判断でしょ?
魔王の魔法がLV7を下回ってるかもわかんなかったのに」
…それはそうだ
「まぁ、粗めに鑑定したら多分7以下だったし…
うん。この話はやめね」
ちなみに僕の鑑定の精度はそこまで高くない。
そんな僕が雑な鑑定をしたのなら、敵の方がレベル高くても不思議ではなかった
「あ、逃げた。
襲流の剣士様がそれでいいの?襲の掟の方に敗走不可ってなかったっけ?」
襲流っていうのは僕が使ってる剣技の流派のことだ。
世間ではかなり強いとされてるらしい
「いいんだよ。そもそも“襲流を修めた”とも言い難いしね」
襲流:コヨミと同じ転生者が持ち込んだ武術道場の流派。
剣術以外にも柔術や弓術などもある。
武器を扱う技術が発達していない異世界からすると(元の世界でも)かなり強い。
多分この後の話でも長いこと出てくる。
コヨミは襲の師範の子供と仲良し