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嘘つきは泥棒(初恋)の始まり⑧


 夜中、私の家に怪我をした二人が現れる。ボロボロの服に身を包んだ二人に私は正直な言葉を出す。


「いっぺんしね、二度しね」


「おほーほほ!! しにかけましたわ!!」


「オブリビオン。この都市のヒーロー強いわね」


「100万人越えた都市は強いのが普通」


 黒い長髪と金髪のお嬢様に私はブジギレしたい気持ちを圧し殺し、部屋に上げる。マンションの一室を永劫借りている私の部屋に彼女らわマジマジと眺めた。総統に「負けた」旨の報告。ボロボロの服の処理と私の家の宅配BOXに入っていた衣類を渡す。


 Tシャツにパンツ、スポーツブラなどの下着類である。彼女らはシャワーで体の汚れを流す。そんな彼女らに600ミリリットルのお茶ボトルを手渡した。


「ご飯は食べて来たの? 来てないわね、今からチンする。口は肥えてないでしょ?」


 レンジに冷凍チャーハンをぶちこみ、お湯を沸かしてカップ麺を用意した。手料理出すよりも早く、速く便利である。お嬢様はそれをがっつき。それを確認して外行きの服を来た。スペアの鍵を二人に預け、任せる。


「オブリビオン手慣れてるわね。あれ、何処に行く

の? 着替えて」


「今日、あなたたちをボコしたヒーローの家。『剣』のヒーロー」


「「!?」」


「大人しくしておいてね。ベットは二人分ある。2段ベッド」


 二人に緊張が走る。それはそうだ、二人で戦って逃げて来た相手に私は今から会いに行く。


「オブリビオンなら勝てるかもしれないわね……」


「悔しいですわ。でも、仕方ないですわね」


「いえ、普通に怪我と状態を見に行くだけです。疲れて居るのでしょうからカレー作り置きします」


「「ん……」」


「私の潜入先のヒーローです。そして……いえ」


 私は黙っておく。何か言いたげな雰囲気を見捨てて、そのまま、部屋を出て彼の家に向かうのだった。





 彼の家に合鍵を持たず入る。「鍵を締める」という記憶を喰っているので「締め忘れ」が起きる。泥棒など入られる事もない治安のお陰であり、そのまま家に入る。


「マサキ、生きてる?」


 音はない、明るい部屋にポタポタと血糊がある。「きゅっ」とする心に私は勇気を振り絞って入った。血糊を辿ると腕を負傷した彼がソファーでぐったりしていた。病院行けばいいのに行かない事を怒る気もなれず、傷の記憶を喰い千切る。傷を負ったというのを忘れた皮膚は綺麗な状態に戻る。


 完璧に避けきったと言うことになっており、彼の寝息が苦しい物ではなく。穏やかな疲れからくる寝息へと変わる。タオルケットを寝室から持っていき彼にかけた後で、キッチンに立った。


「はぁ~あ」


 そのまま買い置きのタマネギ、ニンジン、お肉などを使い。カレーを作って、白米も炊いた。いい匂いがし、煮込み具合もよくなった時に彼を起こした。


「ヒーロー、起きて。ご飯だぞ」


「……うーん」


 「寝たい」と言う記憶を喰う。眠気が吹き飛んだ彼が目を覚ます。


「ふわぁあああ、ヒム。来たのか……鍵は開いてたのか」


「合鍵ほしいね。たまたま開いてたから良かったけど。ご飯用意したよヒーロー。今回、ニュース見てたけど凄い相手だったね」


「ああ、実際。誰か死んでもおかしくない相手だった。辛勝……多くの犠牲者を出したよ」


「先生も入院?」


「1日な。俺は軽傷だったから」


「そっか」


 私は彼の手を取り、笑顔を向ける。


「良かった、帰って来てくれて」


「うん、それよりもお腹空いたから。カレー食べたいな。俺が勝ったから作ったんだろ?」


「そう、テレビで撃退したって発表あったから」


 私は嘘をつく。現場に居た。そして「怪人二人の記憶を喰い」って支援した。故に致命傷、最悪な攻撃の発想力が全くなくなった。


「じゃぁ、用意するね。ヒーロー」


「うん、頑張ったよ俺」


 褒めてあげながら私は嘘を重ねる。


「頑張れヒーローこれからも、『私のために』ね」


「なんか、活動目的を変えて来てない?」


「だってそうでしょ? 私を護ることは『世界観を護る』ことに繋がる。『全く道理からはずれた。とんでもない』。一言で言うなら『大それた』。その目的は身を滅ぼす」


 私は私に言い聞かせる。


「大それた目的か……」


「何かあるの?」


「何もない」


「そういえば私には夢を語らせてさ、マサキの聞きたいな」


「カレー食べてからでいい?」


「いいよ」






 食事も風呂も終わり、私は寝巻きを借りて身軽な姿でソファーに座る。電話すると先生の負傷で明日学校は休みにならないらしい。授業の代理をAiがすると言うのは本当に面倒な日が多い。サボれない。


「明日、学校あるんだって」


「授業が押してるしな、隣いい?」


「いいよ」


 私の隣に彼は座り、600mlのコーラの飲みかけを持ってくる。私はそれを見て、考えた。


「ねぇ、私にもコーラ頂戴」


「え、新しいの冷蔵庫にある」


「それでいいよ」


「まじか……」


 ペットボトルを奪い、蓋を取る。そして、私はそれを見ながら考える。


「飲まないのか?」


「意識する」


「勢いが大事だろ」


「わかってる」


「………」


 私は蓋を締める。諦めた。心臓は高く跳ねており、体が熱い。キスはまだまだ先なのだろう。私にはまだ度胸がでない。


「全く、目を閉じろ」


「……?」


 呆れたヒーロー様が私の肩を掴む。そのまま、私を抱き寄せて口に触れた。唐突な行為に時が止まったような気がして、一瞬の出来事なのに永遠を感じさせてくれた。そんな行為のあと、彼は離れる。


「勢いが大事だろ……」


「う、うん」


「これで意識せずに飲めるだろ……」


「うん……」


「………」


「………」


 沈黙、私は唇に触れた後に口をつけて一口含み、笑みを彼に向けたが。そっぽ向いてる彼に私は問いかけた。


「甘いね、コーラ」


 彼は頷きもせず。恥ずかしい空気だけが静かに流れる、その緊張を壊したのは彼である。


「夢って……叶わないばかりの物だけじゃないよな」


「………そうだね」


 作り笑いする。


「会いたい人を探すために公安部隊員、立候補しようと思ってる」


「警察に居るの?」


「いや、わからないけど。情報は持ってる筈。推薦状も書いてくれるらしいし、飛び込んでみようと思う」


「会いたい人ってどんな人?」


「多分、女性。俺が怪人に襲われてる時に目の前に現れて怪人を力で撃退したんだ。公安部隊員だと思うんだけど……ただわからないんだ。顔も声も会えば多分、思い出す」


「そっか……推薦かぁ……頑張ってるもんね。評価されて良かった。気をつけてね、すぐに調子乗って、格好いい事をしようと思うんだから。怪人に甘いのもダメよ」


「欲は出さないように鍛えるよ。甘いか?」


「あまい、でも大人になるってそういう事だから。私は応援してる」


 彼の手を握って私は応援の旨を伝える。


「あっ!! だからと言ってお金の支援は憚れるよ」


「わかってるよ!! ヒム、なんでそう……変な事を言うんだよ」


「子供だから。私たちはまだ『学生』だからね」


「学生がお金の支援の話はしないと思う」


「今の子は賢いんだよ」


 残念ながら、私は怪人で他の子とは違うのだ。


「じゃぁ、今日は帰るね」


「泊まっていけば……」


「知り合いが遊びに来てるの」


「えっ、ならなんで俺んちに」


「彼氏の死地からの帰りに何もしない女性は魅力的?」


「……」


 玄関まで見送ってもらった後、私は笑顔で「さようなら」と伝えた。「またね」は絶対に言わないつもりでいつも「さようなら」だけを言うのだった。






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