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嘘つきは泥棒(初恋)の始まり⑥


 最近、私は幹部会を欠席していた。理由は心境の変化によって総統と生で会った場合に『裏切り行為』を指摘されるのを恐れてだ。出席するべきなのだが、非常に気まずく。ボロが出ない事を祈る日々である。


 厳重注意され、今日もサボる気でいた。だが、今回は流石に許してはくれなかった。刺客が来るのだ。


「おうおう、サボり癖ついてるぞ。オブリビオン」


「学校でその名を口にするな。バレたらどうする」


 唐突な怪人名に私は睨み付けた。廊下で会った相手は怪人名は「ファーフル」。名前はヤマダキョウコだ。短髪に切り揃えたショートボブに八重歯をむき出すような鋭い表情を見せる。同じ学校に潜入した怪人仲間だ。


「ああん? そんときは記憶を喰ってくれ」


「だから、無闇にしたら跡を残す」


「ふん、便利な能力なのに使いまくればいいのにもったいぶって」


「…………」


「私なら、総統に進言してヒーロー全員の記憶を喰って崩壊させるけどなぁー」


「そんな大量に喰えないし、バレて殺される。私はあなたほど『生命力も力もない』。うらやましい、悩みないでしょ?」


「あああああん!? 悩みあるわ!! 部活でいっつも手加減!! 本気でやったらプロ行けるのに我慢するの滅茶苦茶嫌だし、勉強だって嫌だ。それにお前みたいなスカした奴をわざわざ呼びに来なくっちゃいけないのはもっと嫌だ。サボるな!! おめぇ部活入ってないからいいものの!! そんなのチームに迷惑だろ!!」


「あああ、うるさいうるさいうるさい!! 一緒に行けばいいでしょ。全く……あと本当に『プロ行ける』と思ってる? 野球なめてない?」


 私は彼女の近くへ寄る。彼女の部活は野球部。毎日毎日忙しい彼女がわざわざ顔を出すのは珍しい。野球で忙しいからだ。だからこそ、私は彼女が「嘘をついた事」に憤る。


「あん、なんだよいきなり……いきなり」


「毎日毎日、部活で練習して能力使わずに『サシ』で戦ってるの知っている。何度も何度も『投手』やりたくて影で努力してるのも知っている。それでもベンチで悔しい思いもしてるの知ってる。『努力が実らない』ことにヤキモキしてるの私は知ってる。だから、卑下しないで。応援……してるんだからさ。私を嫌いになってもいい。だけど、自分自身を嫌いにならないで」


「お、おう……ありがとう。あいつと同じ言い方するんだなお前……」


「あいつ?」


「お前のお気に入りだよ。どこでお前ら見てるかわからないな、全く。ほら行くぞ。待ってる」


「わかった。まぁ、彼の影響ね。ねぇ……今度いつ試合あるの?」


「…………お前、なんか変わったな」


「変わった。だから、行きたくないの」


「はん、まぁ……わかった。せいぜい『消されない』ようにお互い頑張ろうぜ」


「ねぇ……野球って楽しい?」


「楽しい」


「見るより?」


「両方やれ」


「絶対、面倒、嫌」


「はぁ、これだからピアニストは……お前がさ、嫌いなの思い出した」


「なに?」


「その指、凄く柔らかいし強いから変化球の起動が綺麗なんだよ。ズルいから、ムカつく。なんで、私じゃないんだって……」


「でも、私はあんな真っ直ぐ速い球は投げれない。出来ない事を嘆く前に『他人が出来ない事』を見つけて伸ばせばいいよ」


「………本当にかわっちまったな」


「あいつのせいでね」


 私は悪態をつきながら苦笑いし、スマホアプリを起動する。それは一瞬で私達を黒い世界に落とす。どういった能力なのか私にはわからない。しかし、何処に居ても瞬時に呼べるのは最高に最悪な方法が思い付くほど強力な物である。


 そんな空間に私たちは居る。他に居るのは二人であり、一人は金髪碧眼の私が最初にモデルとなったお嬢様「ドラゴン」にメガネをかけた長い黒顔が特徴的な子「マインド」である。


 皆、女性に擬態している理由は何故だろうか。私は相手に依存している。特にヤマダは不思議だ。


「さぁ、こんにちは。上位の子達。会いたかったぞ」


 総統の軽快な声が響く。そして、私たちは跪き顔を下げる。


「いや、その無駄な行為はやめよう。礼をし、席に座って報告会だ。まぁ、報告は既に上がっており……顔を見て私が話を振るのが目的だが」


 椅子が出され、机とおやつが出る。おやつはチーズおかきであり、ヤマダは不満を爆発させて私はクスッと笑ってしまった。お嬢様とメガネっ子は静かである。


「ふむ、君たち二人は非常に擬態が上手いな」


 褒められお嬢様が顔をしかめっ面にする。


「そんな下品な笑いしませんわ。それに総統が出された物に文句はいけませんわ」


「そうね、私もそう思う」


 メガネの子とお嬢様の言葉にヤマダが噛みつこうとするが私は制止し、報告と質問を投げる。目をつけられたら不味い。


「おやつの件は後で、この前に学校内で招集がかかった事件。他の学校でもでしょう……あんな大きな動きがあるのは……何故ですか? 総統」


「それはメールする。それよりも……この前、何故サボった?」


「面倒臭くなった。リモート、メールでいいんじゃないですか?」


「あなた!! 四天王の自覚があるの!?」


 目の前にいるお嬢様が怒りをあらわにし、私に詰める。


「四天王?」


「四天王ですわ。上位者として4人だけ、まぁ私一人でいいんですが、認めてあげますわ。それなのにあなたは『やる気』があるのです?」


「あんまり、そういうの見せると『バレる』よ?」


「ほーほほ、あなたの能力で喰えばいいじゃないですか?」


 私は大きい大きい溜め息を吐く。総統に顔を向けて目を細めた。


「お嬢、きみは目立つ。どれだけ彼女に助けられたかわかっているだろう? 功を焦るな。それに私たちの怪人の集まりは3番手以下だ」


「そう、総統ももっと動きをするべきですわ。怪人を増やしたりするべきよ」


「ヒーローがね、邪魔なんだよ。君たちの部下はしっかりしてる。発起するまで待機だ」


 私は総統の話で察する。「今は戦うべきじゃない。だから顔を見せて勝手に動くことを牽制している」のだ。私はその状況に甘える。「動き出したら私の生活は絶対になくなる」事が決まる故に。だから、隣もヤマダが静かなのだろう。昔は「早くぶっ飛ばすべき」と言っていたのに。


「はぁ、まぁわかってますわ。ただ、『四天王として自覚を持ちなさい』と言いたいわ、私がリーダーになるからこそ今のうちに注意するわ」


 私はその状況になった時に誰に投票しようか悩む。メガネの黒い長い髪の子を見る。瞳を覗くと彼女は目を細め、首を振った。


「私はオブリビオンに投票する。リーダーとして、能力、実力者としてね。それに、私の部下達を無意味に動かさないでしょ」


「マインド、私を推薦するの?」


「ドラゴンと私は部下持ちで仲は良くならない」


「ふふ、そうね。部下も上下関係生まれるわ。私が上の方がいいわよ?」


「有能の意欲ある者は怖いわ」


 その言葉に私は悩まされる。よく言われる人材学の話である。


「俺っちもオブリビオンに入れる。こいつに大分助けられてるからな」


 私は驚く。最悪だ。最悪すぎる。リーダーにされたら余計に面倒である。


「なになに? あなたたち? わかったわ、リーダー決めないわよ。全く、オブリビオン。部下もいない癖に」


「ええ、そうね。総統もお元気そうで何よりです。では、帰りますね。いいですね総統」


「うむ、メールで仕事を流したから『喰ってくれ』」


「わかりました」


 何か話が切り上げれそうなので切り上げて去ろうとする。その瞬間、目の前が晴れて学校についた。スマホも時間は動かず。ただ会議は終わった。


「ああ、面倒事終わったな……なぁ~アタゴだっけ?」


「カンバラヒム。それはこの前の名前。跡が残ってるでしょ」


「ああ、カンバラ。言っとくけど、俺っちはお前の事な……だいっ嫌いってわけじゃないからな」


「ありがとう。ごめんちょっと電話来てる」


 私は電話を取り、その電話先の高笑いにmで誰か気付く。


「驚きましたわ。オブリビオン。人徳あったのですねぇ~」


「ドラゴン、なに?」


「いえいえ、少し会話をしましょう。現状維持につい

てオブリビオンの意見を聞きたいわ。私は『急進したくない』の」


「同じ意見。あと、総統はこの会話を聞いてるわよ?」


「電話中でも記憶を食ってるでしょ?」


「もちろん、だから。『感知』されない」


「では、言いますわ。今の生活が私に合っている」


「同じです」


「そう思ったわ。ですが、会議を避けるのは悪手。手を組みましょう。総統を倒す方法を」


「やめたほうがいい。そんなのはやめて、あなたを失う結果にしかならない」


「ふふ、ありがとう。まぁ冗談ですわ。でも覚悟することね」


「はい」


「会いに行きますわ!!」


「はい?」


「記憶処理よろしくですわ。おーほほほ」


 私は電話越しの彼女たちの話に驚き切られてしまう。ヤマダが気になり、顔を見るが私は口を結んで頭を振ったあとにヤマダに言い、彼女もげんなりするのだった。


「幹部クラス全員集合かよ」


「予定が未定だからこそ、わからない。日付くらいいいなよね。あのお嬢様」


 本当に最悪な事になるとは思わなかったのだった。




 















 

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