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嘘つきは泥棒(初恋)の始まり⑫


 怪人と人間の抗争は激しさが増す。マンション爆発事件は連日ニュースとなって世間を騒がせ、そしてそれは最悪な結末を迎えさせようと悪い気持ちを起こさせた。


 色んな所が色んな場所で議論し合う中で私は最高な時間を満喫する。


「ヒム……恥ずかしいから」


「恥ずかしい? 何が恥ずかしい? 彼女の膝を堪能しているのに?」


「それが恥ずかしい。それにもう春じゃなく糞熱いのにそんな事するのが場違い」


「エアコン、冷たくて嫌」


 怪人である筈なのに私は教室では上着を羽織っている。冷房温度が悪いんじゃない。エアコンの風向きが悪い。


「でも、熱いのも嫌だろ!!」


「うん。まぁ、もういいよ。熱いから……冬にしようね」


「いや、秋にしような」


 彼氏との日常、まるで事件が起きたことなんかないように。


「公安活動はどう?」


「うーん、大丈夫」


「あの犯人見つかってないのにね。変だよね」


「だからと言って、どうしようもないさ」


「そう、私たちは『世界を揺るがすような』人間じゃないよ。で、そろそろ熱いから教室戻ろう」


「おまえが言い出した事だろ……」


「彼氏を振り回して、『ワガママ聞いてくれてる』て感じて、『愛されてる』て思いたい。『ああ、幸せだ』てね」


「本当にワガママな姫だなぁ」


「貴方にだけしか見せない面だよ」


「わかった。わかった。早く行くぞ」


「そっけない……」


 甘い反応期待した私を一笑する彼についていく。そして、ざわつく色んなクラスに私は違和感を感じる。泣いている、叫んでいる、怖がっている。いったい何かがあった事を知る。


「ヒム、俺の後ろに。嫌な感じだ」


「うん、わかる。絶対におかしい。友人にメッセする」


 私は友人から送られて来たメールに目を落とす。すると、そこには今の状況が書かれていた。同じように電話する彼の顔は苦々しい表情になる。


「ヒム……その……」


「確認した。爆弾仕掛けられてるんだね。ニュース記事も読んだ。犯行声明も。結果、最悪な事になる」


「ヒム!? 怖くないのか!?」


「あっ……」


 やらかした。非常に女子生徒らしくない事をしている。


「ごめん……怖いし、泣きたい」


「表情から見るに落ち着いているが?」


「泣いても、わめいても、祈っても、神様は何もしてくれない。するのはヒーローの貴方と皆だけ」


「たまに感じるけど、本当に……その……不思議ちゃんだな」


「変人言いたいんでしょ。それよりも脱走した瞬間に爆発だね。スプラッタはサメ映画だけで十分」


「本当にヒムは怖くないのか?」


 私は彼の手が震えているのを見る。それに私は強く頷く。


「ヒーローが目の前にいる。失敗しても一緒にね」


「はは、強いな。そうだ、俺がしっかりしないと。問題は外部との連絡は取れる。『変な事はするな』て言われてて何をすればいい?」


 彼は私に回答を求める。頼ってくれる事が嬉しくて笑みを溢しそうになるが、今はそんなのはダメである。困った、私は「死なない自信」があるからこそ、普通が厳しい。


「この場合、解決をして名誉を取ろうとする意欲ある人はNG。公安として組織動きをするなら『人質である私たちは何もしない』。あとは皆を励ます。なんとかなると信じさせる。パニック起きてるクラスは危ない」


「わかった。冷静になったよ。先生と共に色んなクラスに顔を出すよ」


「校内出なければいいみたいだから気をつけてね」


 私は彼と別れて一人になる。その瞬間に電話する。


「もしもし、総統」


「聞こえてる。大丈夫かい?」


「大丈夫じゃないです。テロリストの標的の一校に選ばれました」


「ああ、今……中継を見ているよ。で、何を相談かな?」


「爆弾の位置を知りたいです」


「難しい事を。何故知りたいんだ?」


「私の力で解決します。物を見れば、行ける自信があります。潜伏先を破壊されたら嫌なのでお願いします」


 大嘘である。友達と彼氏を殺されたくないからやる。総統に連絡した理由はもちろん言い訳を先にするためである。


「……そうか。建物の3Dデータと気休めのアプリを送信しよう。オブリビオンならすぐに扱えるから安心だろう。あの怪人たちとは敵対している故に徹底的に妨害してやれ、許すな『弱者救済を騙り、怪人利用の独裁主義者たち』を」


「はい、お父…………すいません。総統」


「ああ、頑張ってくれたまえ」


 私は謝った後に電話を切り、アプリと3Dの図面が届く。それを操作しながら喰える記憶を探した。結果、便所に怪人らしい人が爆弾を用意する記憶を見つけ、向かった先で簡素な形の爆弾を見つける。


 補助バッテリーに繋がれた超小型コンピューター。そのコンピューターから爆薬の電線が繋がれており、電気で発火するのがわかる。小型コンピューターにはWifiのアンテナ機器等々、その手のプロが作ったのがわかった。


「簡単なスイッチ式じゃない。ミサイルと一緒みたい」


 電脳がある。触った瞬間に振動検知器もありそうだ。だが、電脳であることは非常にありがたかった。なぜなら「脳」があり、記憶、メモリー、プログラムがある。それを全て消せばいい。能力を使い消した結果、発火する条件も何もかもが失われる。「名作故の駄作」な爆弾である。


「複雑な作りだからこそ、私とは相性最悪ですね」


 無力化した物を図面にチェックして、次へ行く。記憶をたどり、教室内のカバンの中にある時限爆弾に震えるクラスメイトたちを見ながら無力化していく。画面には「Error」の表記がされ無力化が分かりやすく表示された。


 なお人や公安、先生など。私を視界に入れることはない。私を見た瞬間に見た記憶を失う。見えるのに見えていない状況の中で無力化していき、一仕事を終え、ポカリ○エットを買って屋上へ出た。


 屋上で影になっている場所で私は屋上にある野外雨天用ライトのコンセントからスマホ充電機を差してアプリを開き。電話をする。


「総統、無力化終わりました。何個か有名メーカー小型PCのマークもありました。金持ちですね」


「そのパイが何の話かわからないが『終わった』でいいのかな?」


「はい」


「お疲れ様、待機してそのまま解決するまで任せよう。しかし……『何者かの介入があった』と思われるだろう。気をつけてくれ」


「……はい」


 電話を切りながら青空を見る。影の中で熱い熱い日差しから、夏にあるイベントに夢を踊らせる。野球部の全国野球地区大会、海水浴、夏祭り、花火大会。


 付き合う前からやって来た事を今度は彼氏と初めてやる事になるイベント郡。


「夢、叶うといいな」


 それらが「叶うといい」と思っての行為、だが。逆に私の大きい足跡をつけてしまった。今回の事件はすごく足跡が残る。


「普通な夢なのになぁ。皆、出来てることなのになぁ……なんで私は遠いんだろ? なんで私には難しいんだろう? 普通って……特別……」


 怪人は普通ではない。普通ではないからこそ私は悩んだ。


「怪人なんかに生まれて来なければ良かった。でも、怪人に生まれて来て良かった。『ヒーロー』に逢えたから……ああ、ピアノ弾きたいなぁ」


 スマホでアプリの音楽ゲームを起動し、紛らわしをする。この私が残した足跡はきっと、彼との生活の寿命を短くしただろう。本当に最悪な怪人たちだ。怪人だが、怪人を恨んでやる。












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