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先駆者 ~ 天翔けるYAMATO-Ⅲ  作者: サクラ近衛将監
第二章 飛翔
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2-2 坂崎邸

 坂崎が言った。


「いよーっ、ノリ、久しぶり。

 よく来たね。

 機材はそのままでいいよ。

 食事の後で移動するから、車に置いておけばいい。

 それで、そっちの美人が今度来た新人さんかね?」


「ええ、この10月に宇部広支局に配属された篠崎です。

 篠崎、こちらは坂崎義則さんだ。

 俺の古い馴染みだ。」


 嘉子が手に持った機材を再度車に押し込みながら、挨拶した。


「篠崎嘉子です。

 どうぞよろしく。

 支局長の話では特ダネをいただけるとか。

 それを楽しみに参りました。

 一体、どんな特ダネですの。」


「気になるかね。

 まぁ、それは後のお楽しみだ。

 先ずは家に入りなさい。

 ゆっくりと食事をして、それから特ダネの場所に案内しよう。」


 こんな田舎町でしかも夜更けに取材ネタが有るとも思えないのだが、古谷は坂崎について家に上がり込んだ。

 居間に入ると坂崎の妻である喜代美が出てきて挨拶をした。


 確か坂崎と同じとしのはずである。

 そうしてもう一人若い男が出てきた。


 坂崎誠一と名乗り、坂崎が長男だよと紹介した。

 30代も半ばであるが、人の良さそうな人物である。


 以前、坂崎から長男は尾宇坂おうさか方面に勤めていると聞いたことがある。

 坂崎にはもう一人娘がいるのだが、兵庫県の来宇部くうべに嫁いで行ったと聞いている。


 ひとしきり挨拶が終わると、それから隣のダイニングキッチンに移動し、すぐに料理が並べ始められた。

 坂崎がネタは後だと言っているので古谷は黙っていたが、若い嘉子が席に着くとすぐに、催促をしだした。


「あの、どんな話なのか少しだけでも聞かせていただけませんか?」


「食事が先だな。

 その後コーヒーでも飲みながら少しだけ話をしてあげよう。」


「でも、ヒントぐらい・・・。」


 笑顔を見せながらも坂崎ははっきりと言った。


「今は、駄目だな。

 果報は寝て待てと言うぐらいだろう?

 待たなければいけないこともあるんだよ。

 辛抱という言葉を知っているかね?」


「シンボウ?

 あぁ、じっと耐え忍ぶですか?

 でも、今はそれは流行はやらないんですよ。

 待っているうちに果報が逃げてしまうことだってあります。」


「そういうこともあるかもしれないね。

 だが、今回は大丈夫だ。

 少なくとも私らにくっついている間は果報が逃げることもない。」


 全く取りつく島もなく、ていよく断られたわけである。

 昔話を含め、取りとめの無い話をしながら食事をした。


 食事は中々に立派なものであった。

 懐石料理と言ってもいいぐらいの見事な和食料理が次々に出てきたのである。


 アルコールも用意されてはいたが、篠崎は車の運転をしなければいけないので、遠慮させた。

 同様に坂崎の息子も酒を飲まなかった。


 食事が終わったのは、午後8時半頃であるが、古谷も余り酒を飲まなかった。

 仕事の前に酔っぱらうわけにも行かないからである。


 居間に移動し、応接セットに腰を降ろすと、今度は古谷が切り出した。


サカさん、一体何なんですか?

 この周辺でしかもこの夜更けに取材ができるような場所が有るわけもないと思うんですが・・。

 もったいぶらずに話してくれませんか?」


 坂崎の妻がにこやかに微笑みながら、コーヒーを出してくれた。


「コーヒーも出たことだし、それじゃぁこれから行く場所を教えよう。

 行く先は斗夕とうせき峠の8合目くらいかな。

 ❆8号線沿いにある。」


「❆8号線沿い?

 8合目付近ですか?

 あそこには何も・・・。

 いや、最近何か建造物が建ったかな?

 確か、半年ほど前通りかかった時に新しい道路が出来ていた。」


「ほう、さすがノリさん、目ざといね。

 そう、あそこだよ。」


「あそこって、・・・

 あそこに一体何が?

 それに、確か私道につき立ち入り禁止という看板が出ていたですよ。」


「ああ、私有地だよ。

 私のね。

 今から皆であそこに移動することになる。

 そうして、君と篠崎君はそこでカメラを回すことになる。


「何かがそこに有るんですか?」


「あぁ、まぁそういうことだ。」


「坂さんがそこで何かを見つけたとか?」


「いや、見つけたわけじゃない。」


「じゃぁ、何かを造った。」


 坂崎は微笑みながらうなずいた。


「失礼ながら、素人が造ったものが特ダネになるということですか?」


 またも坂崎は頷いた。


「もう、一体何を造ったと言うんですかぁ。」


「当ててごらん。」


「ええっ。

 それはないでしょう。

 はるばる仁十久じんとくまで来てクイズですか?

 篠崎、お前、何か適当に言ってみろ。

 当たるかもしれない。」


「そんなぁ、見当もつかないけれど・・・。

 斗夕峠って山の中ですよねぇ。

 じゃぁ、何か、木工品?」


 坂崎は首を横に振った。


「石で造ったもの?」


 外れて、嘉子は思いつくままに声を出す。


「植物?」


「動物・・・は造るとは言わないなぁ。

 何かの機械?」


「うーん、まぁ、機械と言えば、機械かもしれないな。」


「じゃあ、電気製品?」


「そう・・・・、電気製品でもあるかな。」


「新型のパソコン?」


「自動車?

 まさか違いますよね。

 じゃぁ、冷蔵庫、掃除機、炊飯器、洗濯機・・・。」


 篠崎は顔色をうかがいながら盛んに思いつくままに家電製品を言うがどれも違っているようだ。


       ◇◇ 続く ◇◇

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