5ー8 事業の拡大のために
月曜日(8月14日)投稿のつもりでしたが、操作ミスで金曜日の投稿になってしまいました。
SAKAZAKI製作所は、特別に建設部門を立ち上げていた。
当面はSAKAZAKI製作所の新たな工場を建設するために稼働する。
大手建設会社から数人の若手技師が引き抜かれていた。
当該建設会社では左程うだつの上がらない人物ばかりであった。
それゆえに当該人物が移籍したとて何ほどのことができると高をくくっていた建設会社であるが、SAKAZAKI製作所は、敷地の1キロ四方を高層化する計画を打ち出し、国土交通省は3カ月の審議の後でこれを認可したのである。
決め手は新金属のエルニット鋼材であった。
理論的には、高さ100キロの建造物さえ構築できる材料であった。
一級建築士が基本設計に携わり、安全性は都心に立つ高層ビルの数十倍にもなるため文句のつけようも無かったのである。
地下4階、地上12階の建造物であるが、一つ一つの階層がケタ違いであった。
1階層が50mの高さを有するのである。
高さ600m、深さ200mの階層工場は僅かに200名程度のSAKAZAKI製作所建設部で建造を始め、半年余りで作り上げてしまった。
軽量で堅牢なエルニット鋼材だからこそできることではあるが、建設機械もまた新技術で製造されたものであり、ほとんどが自動化されていた。
各階層への移動は、外周の三方を取り巻く道路を使うか、若しくは、中央にある大型エレベーター4基又は小型エレベーター16基で行うことになる。
SAKAZAKI製作所は、この工場敷地の建設で新たに延べ面積で16平方キロもの敷地を持つことになったのである。
その上で半年ごとに工場を製造し、同じく半年ごとに概ね千名の従業員を雇用した。
従業員宿舎は、工場から10キロほど東に離れたサ❆ロ台地に建てられた。
4キロ四方の敷地に高さが600m、長さが1800mの巨大な集合住宅であり、今後従業員の増加に合わせて、必要に応じて更に3棟を敷地内に建造する予定である。
1階当たりの戸数は60戸、150階建ての高層住宅は、9000戸の巨大な団地となったのである。
全戸南向きであり、ベランダが非常に大きかった。
全体に60度の傾斜を持って作られた高層住宅は、積み木を少しずつずらしたような構造になっており、陰になる部分は幅300m長さが1800mもある屋内の公園となっている。
自然光は、各ベランダに設置されているファイバー製の集光器で導入されており、なおかつ北側の壁部分は透明なチタン鋼板で覆われているから非常に明るい。
公園、運動場、プールなどがこの公園に設置されているのである。
この集合住宅に実際に人が住みだせば、仁十久町の人口は一挙に3倍から4倍になるだろう。
集合住宅からは地下道が工場まで伸びており、従業員はマイクロバスタイプのリニアモーターカーで通勤する。
通勤時間は、住宅から工場まで僅かに3分である。
この通勤路は仁十久の町の構造そのものを変えてしまった。
サ❆ロの河岸段丘にある巨大団地と国道❆8号線の間に商店が立ち並び、多くの巨大な店舗が競うように進出してきていた。
SAKAZAKI製作所が発足してから3年、従業員は3千名を超えていた。
その家族を含めると一万人もの人口が増え、更に多くの店舗が進出してきたことから、次第に仁十久町に人口が集まるようになっていた。
仁十久町は、SAKAZAKI製作所に依頼して、新たに小学校、中学校、高等学校を新設した。
場所は、無論サ❆ロ台地である。
保育所と幼稚園は、SAKAZAKI製作所が団地内に自前で設置しており、従業員以外の町民の子供であっても受け入れていた。
毎年2000人の従業員を新たに受け入れるSAKAZAKI製作所は、10年先には少なくとも二万人以上の従業員を抱える大企業になっているはずである。
その家族を含めると、おそらくは三倍前後、最低でも六万の人口を抱えることになる。
それにもましてSAKAZAKI製作所から生み出される製品は、新たな物流の流れを起こしていた。
動力炉やエルニット鋼材は、トラックやコンテナに積載され、久住呂あるいは外間子舞に運ばれ、そこから本州へあるいは海外へと運ばれる。
また、仁十久駅から輸送される貨物も従来の100倍を超えていた。
それまで高速道路は、仁十久を通過して隣町の斗勝志御津町にインターができていたが、当該インター付近で交通渋滞がたびたび発生するに及んで、仁十久へのバイパスインターが建設された。
高速道の湯宇針線が仁十久町の西方から真っ直ぐにサ❆ロに向かって伸び、国道❆8号線へつながったのである。
その経費の大部分はSAKAZAKI製作所が賄った。
その上で更に久住呂‐外間子舞間の高速道路の複々線化を図ったのである。
尤も、複々線計画は最初から地下を利用することになる。
家屋や畑などに影響を与えないように地下50m以上の大深度に巨大なトンネルを構築するのである。
ここを走行できるのは、無論動力炉を利用した自動車のみである。
道路建設計画はSAKAZAKI製作所の建設部が立案し、施工も同建設部が行うことになった。
何しろ、全く新たな工法であり、従来の鉄筋コンクリートではない。
地上に出ている部分の橋脚等はエルニット鋼材にプラスクリートが使用されている。
舗装は従前のアスファルトに似た有機素材による舗装になったが、一番の違いは長大な高速道路そのものに全面路面暖房が施され、積雪や凍結の影響を全く受けないことであった。
融雪水は全て周囲の河川に誘導されているため、そのためにわざわざ高速道路の下に下水設備も施されている。
動力炉により十分な電力が確保されているおかげでもあった。
高速道路は、完成から10年は有料とされるが、その後は無料となる。
定期的な舗装面の工事は必要となるかもしれないが、少なくとも橋脚や道路の主材が老朽化することは今後100年以上に渡り無いだろうと言われている。
<<< 第一部 完 >>>
これにて第一部を完了します。
また別の機会がありましたら、第二部を投稿したいと考えております。
長らく読んでいただきありがとうございました。
2023年8月14日からは、、仮題「浮世離れの探偵さん ~ しがない男の人助けストーリー」を投稿したいと思っています。
よろしければ覗いてみてください。




