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先駆者 ~ 天翔けるYAMATO-Ⅲ  作者: サクラ近衛将監
第5章 新たなる展開
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5ー7 新婚旅行 その二

 だが、行く手には雷雲が近づいている。

 その直前まで観察して探査ユニットは上昇を始めた。


 およそ一万mまで上昇し、マッハ3でこの星の太陽を追いかける。

 行く手にはこの惑星オケアノスで最大の大陸がある。


 そこまで1万2千キロ、4時間の行程である。

 この星の自転速度はおよそ29時間。


 ゆっくりとした自転である。

 公転軌道に対する地軸の傾きはおよそ2度ほどであり、四季はほとんどないだろう。


 恒星からの光の照射角度が異なるので、緯度によって地表の平均気温が異なることになるが、自転の角速度がゆっくりであることと海洋面積が非常に大きいのであるいは気温変化も非常に少ないかもしれない。

 探査ユニットの分析によれば少なくとも大気は呼吸が可能である。


 だが二酸化炭素含有量が多いので、長時間この大気で生活するのは健康上に問題があるかもしれない。

 また、酸素濃度が高いので、可燃物は注意をすべきだろう。


 少なくとも地球よりは激しく燃えるはずである。

 その日、二人の乗ったYAMATO-Ⅲは、オケアノスを周回し、翌日にはまたワープした。


 転移した場所は、赤経11° 05′ 30″、赤緯43° 31′ 18″、であり、太陽系からの距離はおよそ15.7光年である。

 当該宙域には、おおくま座グリーゼ412と呼ばれる恒星がある。


 YAMATO-Ⅲは、太陽系から15.7光年の位置にあるが、グリーゼ412はその位置からわずかに0.13光年、48光日ほどの距離である。

 測定誤差を考えると非常に近いと言えるだろう。


 その10分後にはさらに位置が変わった。

 YAMATO-Ⅲの位置の方位は変わらず15.8光年の位置に変わったのである。

モニターの一つに明らかな変化が生じた。


 前方に輝く恒星が現れたのである。

 地球からのこれまでの観測ではグリーゼ412には惑星は発見されていない。


 グリーゼ436や581なら惑星があることがわかっているのだが、その辺は、新婚旅行故の気まぐれに過ぎなかった。

 嘉子と誠一が二人で話し合い、さいころの出目のように行きあたりばったりで決めているのだから、次にどこへ行くかなんてわからないのだ。


 誠一と嘉子が手分けして周囲を観測し、それから短距離をワープした。

 モニターの一つにはグリーゼ412が映り、別のモニターに少し青い星が映ったのである。


 YAMATO-Ⅲは、時間をかけてゆっくりと当該惑星に侵入、船内時間で夕刻には周回軌道に入っていた。

 YAMATO-Ⅲが周回軌道に入った星には大気があり、海があった。


 そうして明らかに陸地と思われる場所もあるのである。

 最初に訪れた別の恒星系の惑星より陸地の面積が多い。


 陸地が6割、海洋部分が4割ぐらいであろうか。

 もう一つ特徴的なことは、陸地の大部分で火山が至る所で噴煙を上げていることだ。


 そのために下界は視界が悪そうだ。

 探査ドローンを射出して、大気の分析等を行ったが、人間が住むにはひどく悪い環境だろう。


 亜硫酸ガスと炭酸ガスの濃度が非常に高い。

 亜硫酸ガスは800ppmを超えており致死クラスだ。


 炭酸ガスもまた10%を超える割合なので、人が生身で地上に降り立てば、一分と持たず死に至るだろう。

 気温も地表面では高く、陸地の3割で摂氏50度を超えている。

 

 その一方で、両極は真っ白であり、地球の北極や南極と同じく恐らく雪と氷の世界だろう。

 この惑星はべりーぜ412のハビタブルゾーンの遠方限界付近を周回しており、本来は寒冷な惑星の筈であるが、活発な火山活動が気温を押し上げている様だ。

 

 これほど亜硫酸ガスが多いと、海水も酸性度が強い筈である。

 にもかかわらず調査ドローンは生き物を発見していた。

 

 ヒトデのような複数の触手を有する動物か植物で、当該触手部分が柔らかいようで海水の流れに応じてゆらゆらと揺れている。

 姿形から言えば知性体には見えないが、あるいは、崇高な知性を持ち合わせている生物かもしれない。


 宇宙では、すべての可能性を捨ててはならないのだ。

 念のため探査ドローンに備えられているオーラ探査装置を作動させてみたが、当該生き物には反応しなかった。


 珍しい風景を観察しながら一両日を過ごし、再度YAMATO―Ⅲはワープした。

 今度は赤色巨星の外縁部である。


 この恒星系にも太陽系と同様にカイパーベルトがある。

 YAMATO―Ⅲがゆっくりとカイパーベルトの小天体の群れの中に入っていった。


 土星の環ほど綺麗に揃ってはいないが、小天体が無数に円環状に存在する様は壮観である。

 船外モニターを種々の倍率に変更することで、無数の小天体が赤色巨星の弱い光を浴びてキラキラ光る様子が見えてとてもきれいなのだ。


 但し、ほとんどがモノクロである。

 二人は室内を薄暗くして暫しこの天体ショーを見守っていた。


 誠一と嘉子は宇宙のあちらこちらを見物して回り、十日後に地球へ戻ったのである。

 この間に収集したデータについては当面秘匿することにしている。


 余り一般の人々の宇宙開発熱を煽ってもいけないからだ。

 SAKAZAKI製作所の構想では、宇宙旅行が一般の人に開放されるまでにはまだ数年はかかるものと見られているからだ。


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