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先駆者 ~ 天翔けるYAMATO-Ⅲ  作者: サクラ近衛将監
第5章 新たなる展開
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5ー6 新婚旅行 その一

その数時間後、YAMATO-Ⅲは衛星軌道上にあって、眼下に地球を見下ろしていた。

その一室で、嘉子は誠一に初めて抱かれ、小さな痛みと大きな喜びを味わった。


翌日日本時間の午前7時嘉子が下着だけのあられもない姿で朝食を作っている間に、誠一はYAMATO-Ⅲを動かし、太陽系を後にした。

嘉子が朝食を作り終えた時、YAMATO-Ⅲは太陽系から約12光年離れた恒星系の第2惑星を周回していた。


くじら座タウ星の第2惑星である。

恒星タウは太陽に似たG型恒星であるが、太陽よりも明るさは少し暗い。


第2惑星は地球よりも近い距離0.85AUにあるが、恒星のハビタブルゾーンに入っていた。

雲が有り、青い海と白い極冠が見える。


惑星直径はおよそ1万1千キロメートルであるが、コアが重いのか重力は地表面で1.04Gである。

陸地もあるが表面の2割程度に過ぎない。


北半球に比較的大きな島と南半球に群島域がある。

陸地はいずれも緑で覆われている。


北半球の大きな島はオーストラリア大陸よりもやや小さいが、大陸と呼んでも差し支えないだろう。

但し、起伏は比較的大きいものの、標高で2000mを超える山は無い。


誠一が動物の確認を行う一連の調査プログラムを発動した。

プログラムは自動であり、概ね24時間で調査は終了する。


二人は半裸状態で食事を始めた。

ここには少なくとも地球の人は誰も来られない。


水入らずのハニームーンであった。

下着なしでもいいのだが、嘉子がせめて下着ぐらいは着ましょうと言って、今の格好になっている。


嘉子はビキニの水着だけ、誠一はボクサーパンツ型の水着だけの出で立ちである。

食事の後二人で考えて、惑星に名をつけた。


水惑星オケアノスである。

探査ユニットは既に大気成分をデーターとして送ってきている。


窒素が76.5%、酸素が23%、二酸化炭素0.5%である。

地球の大気は窒素が約79%、酸素が約21%、二酸化炭素は0.04%未満である。


地球の昔は、二酸化炭素濃度は0.03%ぐらいであったので3割以上二酸化炭素の量が増えているのだが、この惑星では最初から異常に高い数値を示している。

あるいは造山運動が活発なのかもしれないが、さほどに活火山が多いようには見えない。


輻射熱からの推測地表温度は赤道海面で摂氏28度を、極地付近の海面で氷点下4度である。

YAMATO-Ⅲは地表から1千キロ離れた場所にいるが、探査ユニットは地上100キロを周回しながら徐々に高度を下げている。


高度が50キロまで下がった時点で音速以下の速力にすることになっている。

その間にも二人は抱き合っていた。


広い居間でも台所でも、或いは操縦室でさえも所かまわずに抱きしめ合い、色々な体位でセックスを貪った。

そうして夕食の前に調査プログラムが警報を発した。


動物を発見したのである。

調査プログラムは高度な知能を有する可能性のある場合を想定して、エネルギー源から調査を始めていた。


幾つかのエネルギースポットは有ったが、いずれも火山活動によるものであった。

電磁波、放射線を含めて人為的な工作物は存在しないことがわかった。


一方で、センサーはオーラ探査も行っていた。

尤も人類にターゲットを絞ったセンサーを幾つか改良しただけであり、高等動物ならば何とか拾えるものの魚類、昆虫、爬虫類などは難しい。


だが、センサーが見つけたのは陸上では無く海上であった。

或いは哺乳類の類であるイルカ、クジラに似たものかもしれない。


だが1000キロ離れた個所からそれを確認はできない。

探査ユニットが詳細な視覚映像情報を送れるようになるまで待つしかなかった。


探査ユニットは地上25キロを時速千キロで飛行中であった。

あと数時間すれば、地表面から10キロ以内に到達できるはずである。


クジラほどの大きな動物ならセンサーが確認するかもしれなかった。

日本時間で午後8時頃、探査ユニットは地上三千メートルにあって、海上を夜明けに向かって飛行していた。


夜明け前の海面はまだ暗く搭載カメラの解像度では、何かが有っても判別は難しい。

だが10分もすると、夜明けの光が海面を照らしだした。


そうしてやがて、青い海に黒々とした魚群のようなものをカメラが捉えたのである。

誠一は、探査ユニットを手動で操作して、その場に停止させ、その動物群を観察するために更に高度を落とした。


海面上500mで大きな海生動物を明確に捉えた。

センサーの高度から割り出した動物の大きさは長さが2mから10m、幅は数十センチから3mぐらいのものであろう。


様々なセンサーを駆使して三次元映像を作ると、クジラと言うよりはイルカによく似た動物である。

但し、体表面を鱗が覆っており、足と長い尾の代わりに、胸鰭と尾びれをつけたトカゲのような生き物である。


時折海面に浮かびあがってクジラのように汐吹きをしている様はクジラとそっくりである。

小さいのは子供、大きいのは成体ではないかと推測された。


それが家族なのか部族なのかは分からないが、100匹以上の集団で海原を泳いでいるのだった。

クジラやイルカなどの海生哺乳類は、かつて陸上に棲む動物だったと言われている。


或いはこの惑星でも、一旦魚類が陸上に上がって爬虫類となったが、再度海に戻った種族なのかもしれない。

暫く探査ユニットはこの生物を追い掛けて生態を観察できるようにした。



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