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先駆者 ~ 天翔けるYAMATO-Ⅲ  作者: サクラ近衛将監
第5章 新たなる展開
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5ー5 結婚

結婚

嘉子は誠一と出会ってから2年後に結婚したが、会社は辞めていない。

広報室長兼秘書室長のままである。


主任は5万円、係長は10万円、課長補佐は15万円、課長及び室長は20万円、部長補佐は30万円、部長は40万円の役職給がつく、嘉子は二つの室長兼務のため、1.5倍の30万円を役職給で貰っている。

2年経って本給が34万6千円で役職給が30万円併せて64万6千円の給与が支給されている。


税金や諸経費で20%以上が引かれるが、それでも手元には50万円以上の給与が残るし、2回のボーナスで7カ月分450万ほどが貰える。

嘉子の年収は、1200万円を超えているのである。


間もなく25歳になる歳ではあるが、サラリーマンで年収1200万円をもらっている同年の者がどれほどいるか甚だ疑問である。

但し、誠一の給与は優にその倍以上であり、嘉子が経済的に働かねばならない理由は無かった。


誠一や坂崎が暗黙のうちにも仕事を続けるよう促していたから仕事を続けている。

子供ができたら退職を考えることにしている。


避妊は特にしていない。

誠一とは婚前性交渉はしていない。


処女と童貞で式を上げてから結ばれた。

チャンスは無かったわけではない。


だが、嘉子は焦る必要がなかった。

誠一の穏やかな愛情に嘉子の全てがくるまれていると確信していたからである。


式は仁十久で行われた。

仁十久にも立派な式場ができていたからである。


結婚専門式場❆ルコは、SAKAZAKI製作所に高卒採用者が多く、今後10年以内でその半数以上が結婚する可能性を見出したので、急遽仁十久にデラックスな結婚式場を建設したのである。

最初から高卒者を採用するのであれば、今後も続くはずだと推測していた。


5か月前にできたばかりの❆ルクラシック・サ❆ロは、駅から少し遠いのだが、送迎バスもあり、また、SAKAZAKI製作所勤務者のためと、イー❆ン・モールへの輸送機関としてかなりのバスが運行するようになっていたので便利な場所である。

誠一と嘉子の結婚式はその❆ルコクラシックができてから100番目のカップルであった。


北❆道は、元々会費制の結婚式が多く、結婚式の披露宴は概ね500名前後となる。

一つが4百名から5百名の式場の大きさなのだが、それでも会場が狭くなることは有り得るので、式場を可動式の壁で遮って二つの式場が一つになるように作られている。


誠一と嘉子の結婚式は、❆ルコクラシックで最も大きな1千人規模の会場を考えていたのだったが、披露宴はそれでも手狭であった。

会社の社員は無論のこと、町、北❆道、新東京の中央政財界からも多くの参列者がいたためである。


❆ルコクラシックのミスで二人の結婚予定が2ヶ月前に報道に漏れてしまったため、大勢の知人は元より、その他の有象無象を含めて多数の者が参列者に名乗りを上げてきたためである。

特に、取引先の要人は無碍に断るわけにも行かなかった。


結局は、式そのものが政治的あるいは経済戦略的な権謀術数の場と化してしまったことは否めない。

誠一も嘉子もそうしたことは相応に覚悟の上ではあったが、総理大臣まで内々に式への参列を打診してきたのには参ってしまった。


とどのつまりは❆ルコクラシックの会場全てを借り切って、披露宴をあげることになった。

主賓会場、サブ会場3カ所それに野外会場を含めて5千人の人々が参列したのである。


本来は、当日予定を考えていた申し込みのカップルもあったらしいが、内情を聞いて取りやめになったらしい。

誠一と嘉子が❆ルコクラシックに赴いて、会場が手狭になったのでキャンセルを申し出た際に支配人がそれを止めて、全ての会場を二人のために無理やり開けたのである。


その代わり、時期をずらしてくれたカップルには、3割引きの申し出をし、またどうしても変更ができないカップルには宇部広の❆ルコを紹介したのである。

支配人は、例えそうした無理を押しとおしてもメリットがあると踏んでいた。


正直なところ、それまで❆ルコクラシックで挙式した99組のカップルはとても広告に出せるようなカップルでは無かった。

だが、誠一と嘉子ならばモデル顔負けの美男美女であり、それに政財界の重鎮が多数集まるとなれば、一挙に箔がつこうと言うものである。


❆ルコクラシック以上の広さを持つ場所となるとそうはない。

サ❆ロホテルが立食2000人規模のパーティ会場を持っているだけである。


ここで客を取られてはならなかった。

サ❆ロホテルとはケイタリングで提携をしており、必ずしもライバルではないが、少なくともこの二人のカップルを逃せば、それ以降に続くSAKAZAKI製作所の若い世代数百人が皆サ❆ロに行きそうな懸念を持っていたのである。


誠一と嘉子の結婚式は9月半ばの吉日に催された。

本当は6月頃を考えていたのだが、❆ルコが準備のために3カ月遅らせて欲しいと申し出たので遅らせたのである。


厳かな神前での式に引き続き、午後二時から披露宴が始まった。

❆ルコはこの日のために全国組織を上げて各地にある❆ルコから選りすぐりの男女スタッフを派遣した。


総勢5000人ものケイタリングは生半可なものでは無く、戦場であった。

これも各地から呼び集めた選りすぐりのコックやパティシェ100人近くが厨房で料理を作り、250人の接客スタッフが会場に運びこむ。


もともと収容人員はぎりぎり2500人ほどの式場である。

相応のキッチンは備えてあったが、それでも手狭であった。


雨が降った場合は、屋外会場は使えない。

その場合は、披露宴を二回することにしていた。


招待客は3000人を超えそうだとの情報が入った時点で、そのような手配りをしたのである。

広い庭園にも沢山のテーブルを並べての披露宴である。


新郎新婦はメイン会場、第二、第三、第四会場と渡り歩いて、屋外を一周する。

普通に歩くだけで20分はかかってしまう。


お色直しは一回だけにした。

時間的に余裕が無いと思われたからである。


それぞれのステージに上がって挨拶をし、それが各会場のパノラマ画面に映し出される。

最後のキャンドルサービスは、屋内だけのしかも第一会場だけの催しであった。


支配人の目論見通り、盛大な結婚式は注目を浴び、マスコミも多数押し掛けてはいたが、取材は制限した。

それでも、誠一と嘉子のネームバリューは広告塔以上の結果を残してくれた。


総費用1億3千万円の挙式は午後4時に無事終了していた。

誠一と嘉子は式場で衣装を変えると、その足で新婚旅行に出かけた。


行く先は無論、斗夕峠。

そこからYAMATO-Ⅲで宇宙に行くのである。


誰にも話はしていないのだが、マスコミは感づいていた。

斗夕峠の私道の前には10台以上の車両が入り込んでいた。


中にNFK支局の中継車もあった。

アシスタントディレクターの新藤以外は知らない顔ぶれである。


二人の乗る車が遮断機を通過して行く様を、多数のカメラが追っていた。

その1時間後、YAMATO-Ⅲは秋晴れの空へと離陸した。



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