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先駆者 ~ 天翔けるYAMATO-Ⅲ  作者: サクラ近衛将監
第5章 新たなる展開
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5ー3 動力炉 その三

 坂崎は、司会役に向かって言った。


「この後で、この会場にいらっしゃる方からの質疑応答を受けることになるのでしょうが、その前に、ひとこと経❆産業省にも申し上げておきましょう。

 私は最初に申し上げたように政府が決めたことには従うつもりでおります。

 そうでなければ、このような申請手続きなどはしない。

 外国で生産を始めれば済むことだ。

 全く産業のない太平洋島嶼国やアフリカの最貧途上国などは諸手を挙げて私どもを迎え入れることだろう。

 そのような状態ならば、貴方がたは外圧と言う形で危難に直面しなければならない。

 同様のことがアムリカ国及び❆Uでも起こり得ることだ。

 そのためには、今まで貴方がたが外国からの新技術にどう対処してきたのかそれを思い起こさねばならないだろう。

 如何に国内事情が有っても、貴方がたはそれを最終的に受け入れてきたはずだ。

 同様のことは既にアムリカ国の業界でも起きている。

 ご承知のようにアムリカ国の家電業界は様々な分野で後退し続けている。

 その際にアムリカ国は家電業界を保護したりはしなかった。

 私は、必ずしもそれを是認しているのではない。

 終始一貫した態度を取り続けなければ政府は侮られ、国際的にも国内的にも立ち行かなくなるだろう。

 政権が交代しようと国家の基本政策が本来それほど変わるべきとは思えない。

 クーデターなら別であるが、それでも国際的な約束は継承政府に受け継がれるべき筋合いのものだ。

 政権交代が行われたとしても批准した条約の脱退を考えないのはそのためでもある。

 必要ならば法令を変え、政府の方針を変えれば宜しい。

 しかしながらそこには首尾一貫した政策が必要である。

 それは貴方がた役人と呼ばれる官僚の仕事ではないのか。

 一々、事業者からの訴えを聞いていたらそこには政策などない。

 単なる事業者との癒着が残るだけだ。

 切り捨てるべきものは切り捨てる、残すべきものは残す。

 そのために多くの石炭鉱山が閉鎖され、多くの炭鉱夫が職を失う時代が有ったのではないのか。

 淘汰はそれで起きている。

 如何なる産業と言えど、非効率的な物はとってかわられる。

 蒸気機関車は、かつて時代のヒーローだった。

 だが、ディーゼル車が出現し、なおかつ電気駆動車が出現するに及んで姿を消した。

 経済的に採算が合わないものは姿を消す。

 それが資本主義の原点だ。

 それを否定するならとも角、是認するならば、貴方がたに選択の余地は無い。

 即座にとどめを指すかあるいは緩慢な死をもたらすかいずれにせよ、そうした産業は衰退する。

 電力業界が今まさにその生贄として俎上にある。

 それをどうするかは、貴方がた政府の人間の判断に掛かっている。

 姑息な手段で逃げようとせず、如何にすれば最大の利益を得ることができるかを考えていただきたい。

 以上が私の意見である。」


 聞きようによっては非常に辛口の意見であるが、正論であった。

 公聴会会場は、暫しの間異様なほど沈黙した。


 司会の役人が自分の役割を思い出した。


「えーっ、それぞれの御意見を伺ったわけでございますが、中々に率直なご意見もございました。

 ここで、会場の皆様からご意見或いはご質問を受けたいと存じます。

 ご意見又はご質問のある方は挙手を願います。

 係の者がマイクを持って伺います。」


 数人が手を上げ、それぞれの意見を述べたが、全般的に低調なものであった。

 直前の坂崎の論旨に押されて滅多なことが言えないと言う雰囲気になっていたほか、経❆産業省は、公聴会のためにサクラも配置していたが、サクラも迂闊には質問ができなかった。


 ほとんどが、経❆産業省としてどのような政策を持っているかという根幹にかかわる質問であり、いま、それを発すれば、事前に打ち合わせていたいわゆる言質を与えないような回答をすることになるが、それでは拙い。

 いたずらに経❆産業省の無策を露呈することになる。


 経❆産業省としてはまだ何も考えていないと言う姿勢だけが残ってしまう。

 サクラと言えど元は優秀な官僚であった男達である。


 その辺の察しがつくと無暗に質問はできなかった。

 結局、坂崎の意見のみが印象的に残った公聴会であった。


 経❆産業省は、最終的に動力炉の今後の製造予定をSAKAZAKI製作所に確認して、動力炉の製造認可をするための検査を開始した。

 SAKAZAKI製作所は、動力炉の生産を6つのタイプに分けていた。


 Ⅰ型は、大規模工場に使用される大型機械用の動力炉である。

 一つは、小型発電所規模の動力を供給するが、配電盤等既存設備を介するものである。


 このタイプは、船舶用にも使用できる三相交流440ボルトタイプのものもある。

 電圧は、2万5000ボルトから440ボルトまで出荷時に調整可能であるが、基本的に同じ形であり、交流、直流二つのタイプがあるのである。


 Ⅱ型は、自動車用の動力炉であり、220ボルトの直流を発生するものである。

 Ⅲ型は、家電製品の大電力用であり、単相交流220ボルトを発生する。


 発電容量は、2.2Kw、3.2Kw、4.8Kwの3種類がある。

 Ⅳ型は、同じく家電用だが単相交流100ボルトで0.8Kw、1.0Kw、1.5Kwの三種類がある。


 Ⅴ型は更に容量の小さい単相交流100ボルトで、0.1Kw、0.3Kw、0.5Kwの三種類である

 Ⅵ型は直流を使用する省電力製品をイメージしたものであり、1.5Volt、3.0Volt、4.5Voltの電圧で最大電流により10種類ほどのものがある。


 これらの製品は、受注に合わせて生産を行って行くことと、最大製造数が、Ⅰ型は月産で千台ほど、Ⅱ型は月産で一万台ほど、Ⅲ、Ⅳ、Ⅴ型は月産で五万台ほど、Ⅵ型は月産十万台になる見込みである。

 さらなる増産を行うためには、さらに1年を待たなければならず、その場合でも最大数が倍程度になるだけと予想しているとのことであった。


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