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先駆者 ~ 天翔けるYAMATO-Ⅲ  作者: サクラ近衛将監
第四章 事業展開
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4ー9 事業の開始 その九

 製品の受注は、仁十久製作所及び新東京支所でしかできないようになっている。

 これは詐欺等の防止の意味合いもある。


 6月24日には海外からの問い合わせが殺到したが、渉外担当の庶務が裁き、手が足りない時は嘉子と早苗が支援に回った。

 遺憾ながら、海外からの受注に応じられるのは翌年以降になるものと見積もられている。


 あくまでも当座の見込みではあるが、雇用経費を除いた純利益は1台当たり2千円強であり製作所の収益は年間15億円ほどになる。

 既に第三工場のライン建設が始まっていた。


 これら全ての原材料は自前で生産しているので原価は0円である。

 裏山の丘がそのために少しずつ削られている。


 SAKAZAKI製作所では、7月初めに3カ月分の特別ボーナスが支給された。

 一番若い高卒組の早苗が75万円の支給額を見て目を丸くしていた。


 彼女の毎月の給与支給額は254200円、寮費が食費込みで約4万円、厚生保険掛金で約2万8千円、税金が約2万円ほど取られているので、手取りは16万円ほどのはずである。


 それが7月になると税金等の諸経費を差し引いても60万円以上の入金が一度にあるのだから驚くはずである。

 こうして順風満帆のSAKAZAKI製作所は更に事業を拡大しようとしていた。


◇◇◇◇


 仁十久町の清掃事業は清掃事業組合が行っているが、焼却施設であるために極めて採算が悪い。

 年間5千万ほどの経費が町の予算で必要となのだ。


 その担当者である北岡のところに坂崎が訪れたのは6月の末である。

 今や仁十久町一の大企業であるSAKAZAKI製作所の社長自らの訪問とあって北岡は緊張して対応した。


 傍には総務部長も同席している。

 坂崎から出た話は、焼却施設の改造をしてはどうかと言う相談であった。


 無論、タダではないが、試験的な物なので実際に取り付けてその実用性を確認してから、代金をいただきたいと言う話である。

 価格はおよそ3千万円であるが、3年の分割払いで構わないと言う。


 坂崎の説明によると収集したごみを燃やすのではなく、全て分子段階まで分解してしまう装置であると言う。

 装置自体は左程大きなものではない。


 小型自動車程度の大きさのものであり、仁十久町の焼却場ではそれが2台で年間のごみを処理するのに十分だと言うのである。

 仁十久町の住民はおよそ8千人、その可燃ゴミは年間で4千トン余りである。


 現在は分別収集も行われているが、ガラス瓶など再生が容易なものはともかく、複合製品など何でも処理は可能であると言うのである。

 可燃ごみは確かに年間で5、6千トンほどであるが、複合ごみは実にその5倍から6倍ほどになっている。


 複合製品は実のところ埋め立てしか処分ができずにいるので、いずれ埋立地に困ることになる筈であったから、行政担当者にとってはとてもいい話ではある。

 試験的にということで、仁十久町では当該機器の設置を認めた。


 集配業務を停止する必要は無く、これまでどおりの業務を行っても差し支えないとのことであった。

 7月1日午前中に総務部長、担当者の北岡、それに焼却場の職員が見守る中で、件の機械が中型のトラック2台で運ばれてきた。


 乗用車ほどの大きさである。

 彼らが見ている前で2台の機器は浮かび上がり、そのままゴミ収集車がごみを投棄する入口から大きな貯蔵庫に入って行った。


 中には大量のごみが山となっておりその最下部に燃焼室へと導く粉砕装置がある。

 2台の機器はそのゴミの山に降りると半分ほども埋まってしまった。


 この機器の処理能力は1時間あたりで約15トン、2台稼働しているので1時間30トンの処理能力があり24時間作動する。

 メンテナンスはほとんど不要であるが、念のため1年に一度は各一台を点検するという。


 つまりは1日に720トン、年間で実に26万トンものゴミを処理してくれることになる。

 確かに関係者の見ているその前でゴミの山が少しずつ減り続けている。


 そのまま6時間ほど様子を見ることにして一旦はそれぞれの職場に戻ったのであるが、夕刻17時頃に来てみると、明らかにゴミが減っていた。

 焼却場の担当者の話では、概ね500トンほどと見られたゴミがその時点では300トンほどになっているというのである。


 少なくとも200トンのごみは姿を消しており、更に8時間もすればおそらくは底が見えてくるのではないかと担当者は説明した。

 これで1カ月ほど様子を見てはどうですかという坂崎の話で、関係者は散会した。


 翌日の午後には担当者から役場に報告がなされた。

 例の機械で完全に貯蔵庫の中は空っぽになり、それどころか斜面や壁面についていた汚れまで綺麗に落として新品同様になっていると言うのである。


 しかしながら魔法とも言える機械にゴミが食われて一体どこに行ったのかが不安であった。

 北岡は渡された名刺で、SAKAZAKI製作所に電話を入れてみた。


 若い女の声が聞こえ、要件を話すと丁寧に暫くお待ち下さいと言って、待機中のメロディが流れた。

 10秒と掛からずに坂崎が出た。


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