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先駆者 ~ 天翔けるYAMATO-Ⅲ  作者: サクラ近衛将監
第三章 地上にて
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3-7 船内見学 その二

 実際に操縦席に嘉子が座らされて、映像が映し出された際には、基地に着陸しているために下半分は映像が無かったが、上半分の周辺映像がリアルに映し出され、小雪がぱらついている戸外に座っているような錯覚に陥った。

 巨大な船にしては随分と簡単な操縦室だと思ったのは確かである。


 宇宙戦艦ヤマトにしても、宇宙船エンタープライズ号にしても多数の計器を前に大勢の人間が働くものだと言う認識からは遠く離れていた。

 YAMATO-Ⅲの二階、三階部分はほとんどが、機械装置である。


 動力炉は高さ、幅、奥行きとも2m程度の箱に収まっていた。

 これ一つで原子炉千基分のエネルギーを発生するとは到底思えないのだが、実際に発電できると言う誠一の言葉を信ずるしかなかった。


 動力炉からは床下を太いケーブルが延びて配電盤につながり、そこから船内各所に給電されていると言うのである。

 そうそう、これも一つの問題にされた一件ではある。


 坂崎は、シェルターと称してこのYAMATO-Ⅲを建造した。

 そのために建築確認をしてもらっているのだが、その際には機械類は一切設置しておらず、小さな非常用ディーゼル発電機のみが設置されていたそうである。


 建築主事は都合4回に渡り検査をしたが、いわゆる家としての検査であり、耐震性、強度、換気、居住性などを検査した。

 4階の居住区に内装工事の業者が入り、その後で確認検査を行った際は、3階以下は全て倉庫又はタンクとして申請されていたのである。


 何もないがらんどうの部屋を確認して主事は帰って行った。

 従って、確かに家としても使えるが、実際には宇宙船であったわけなので虚偽申請と言う罪に問われる可能性もある。


 また、坂崎は500キロワットまでの電気設備を扱う免許は得ているが、それ以上の動力炉となると免許などは無い。

 一般的にはそれほど必要性が無いので免許制にしていないのであって、原子炉や火力発電所などは事業免許の形で設計から施工まで全てを国が検査しているのである。


 従って、事業では無いにしてもそうした大規模な電気設備、発電設備を扱うのに法的な違反の可能性があったのである。

 あるいはそのほかにも知らない形で法令違反を犯している可能性は有り得た。


 坂崎は、総理と会談した際に、その点の法的免除を願い出たのである。

 仮に法的な訴追を受けるとなれば、日本には帰らず、受け入れてくれる国に逃亡する可能性を示唆して首相にやんわりと迫ったのである。


 前代未聞の話ではあったが、翌日、首相は閣議を経て超法規的処置としてYAMATO-Ⅲの今回の飛翔及び搭載設備等について、並びに、今後の利用についても一切の罪を問わないとする指針を打ち出し、念のため議会にも諮って衆参両院の了承決議をもらったのである。

 そのため、YAMATO-Ⅲに限って言えば、数々の法令違反があっても法的に免訴となっている。


 但し、今朝発表した事業認可及び関連する機器製造については種々の厄介な手続きが待っているはずである。

 そのために、計画が即日始められるのではなく1カ月、半年、あるいは1年先になっているのである。


 おそらく資金に困ることは無いだろうと思われる。

 銀行は寄ってタカって融資の話を持ち込むだろう。


 何せ、現状では最も有望な投資先であるからだ。

 宇部広では、北海❆銀行、北❆銀行、宇部広信用金庫ぐらいだろうが、既に大手都市銀行が手ぐすね引いて待っているだろうし、外資にしても儲け話であればすぐに乗り出してくるだろう。


 重力駆動推進装置及び空間反発駆動推進装置は思っていたよりも小型であった。

 二種類各32基の駆動推進装置が三次元方向にそれぞれ推進させる反発エネルギーを発生させると言うのだが、直径3m高さが2mの円柱状の装置である。


 これが少なくとも8つ以上機能して3Gから12Gの加速度を生み出していたはずである。

 ワープ航法の装置は船体に埋め込まれており、外壁と内壁の間に数m間隔で設置されている小さな機械だそうである。


 但し、それらに不可思議な作動エネルギーを供給する装置は二階三階のほぼ中央に設置されていた。

 1階部分は倉庫区画である。


 ここには駆動装置や制御装置などの部品が多数保管されているそうで、全てが機械で管理されている。

 必要なパーツがあれば、制御装置で入力すれば機械が探して運んで来てくれる仕組みになっている。


 この仕掛けも坂崎と誠一で造り上げてしまったようだ。

 住宅の確認検査が終わって僅かに2カ月足らずの内にこれだけの装備類を造ることはできないのではと言うと、実際には造り上げてあったものを組み立てただけだからそれほど面倒では無いという。


 坂崎と誠一は二年ほど前からこれら装置を部分的に造っていたそうである。

 そうしてこの基地とも言える部分の基礎ができた半年前から本格的に作業を始め、合間に宇宙船を組み立てたと言う次第である。


 YAMATO-Ⅲ自体の建造期間は実質半年である。

 普通の造船所でもこれほどの船になると半年ほどかかるようだが、造船所は重い鋼材を用いて船体を作り上げるのでどうしてもクレーンなどの重機に頼らざるを得ない。



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