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先駆者 ~ 天翔けるYAMATO-Ⅲ  作者: サクラ近衛将監
第一章 プロローグ
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1ー4 建築確認 その四

 この物語はあくまでフィクションであり、似たような記述があっても、実在する人物もしくは組織とは何の関わりも無いことをご承知おきください。


 概ね、一話二千字を目途に、毎週月曜日の午後8時に投稿する予定ですが、第七話までは毎日一話投稿いたします。

 居間のある三階に上がると、同じように幾つかの部屋があり寝室や台所に当たる場所もある。

 無論、トイレや浴室もあるが、少なくともこの密閉された居住区域から汚水などを排出する計画はなく、全て貯留タンク内で分解させるか浄化するようだ。


 そのための装置も設備してある。

 但し、当該タンクは4人在住の場合で2年ほどすると一杯になるので、内部の貯留物質は外部に搬出する計画設計になっている。


 ここの居間は一般的な家に比べると非常に広い。

 20m四方程度の広さがあるのである。


 無論、現状ではこれまた新素材というエルニット鋼なる金属で覆われた区画にしか過ぎない。

 尤も、床部分はパネル状になっており、ITビル宜しく至る所に配線が可能なようになっているのを的場は知っている。


 天井部分だけは、半透明のアクリル製品で覆われ、その内部で明るい照明が輝いている。

 照明がついた部屋を的場は初めて見たのだが、思った以上に明るい室内になっている。


 これで内装が済めば確かに立派な居間になることだろう。

 但し、窓はない。


 この壁の向こうにはテラスが広がっており、綺麗に整備された庭園が広がっているはずなのだが・・。

 部屋の中央に廃材を利用したような粗末なテーブルが有り、その上に透明なアクリル製の箱が置かれている。


 縦、横、高さがそれぞれ50センチほどの立方体である。

 アクリルの床面と天井部には何やら小さな直方体がへばりついている。


 精々が3センチ四方、厚みが1センチ弱だろう。

 その二つの直方体がこれまた細い線でつながっているが、被覆されている所から見ると電線なのだろう。


 アクリル製の天井部分は、蓋になっており、蝶番金具で一方が止められている。

 アクリル板の接触部にはゴム状のものが張り付けてあり、留め金具で閉めると密閉できる構造のようだ。


「坂崎さん、これで一体何を?」


「ウン、このアクリル製の箱は密閉できる仕組みになっている。

 そうしてこの底に置かれているのは、換気装置の一種だ。

 二酸化炭素を分離して酸素と炭素に置き換える。

 この装置自体はこの実験用に造ったもので容量は極めて小さいが、この居住区に実際に設備されている装置は、容量が極めて大きい。

 この居間だけで1000立方メートルぐらいはあるからね。

 この容器のおよそ8000倍くらいの容量が無ければいけない。

 で、実際のところ、この居間に設置されている装置はこのアクリル箱に取り付けられた装置の1万5千倍ほどの容量がある。

 この部屋の中で焚き火をするわけではないから、本来それほどの容量は不必要なんだけれど、まぁ、能力だけはあると考えて欲しい。

 一応居住区になる各部屋もその容積に応じた装置が組み込まれている。

 それぞれ独立し、あるいは、リンクして作動するようになっている。

 二酸化炭素を分解しすぎて酸素濃度が高くなり過ぎないように空気中の酸素濃度や二酸化炭素濃度に応じて作動するように自動設定されている。

 但し、このアクリル箱の装置にはそこまでの自動装置を組み込む余裕が無いので、連続運転で作動させるようになっている。

 密閉状態の箱の中に二酸化炭素がどんどん入り込まない限りは、危険はない。

 但し、火薬のように酸素の無いところでも燃えるようなもの、つまり燃焼剤の中に酸化剤が含まれるようなものは、中で燃焼を始めると異常に酸素濃度が上がることになるから危険になるよ。

 で、最初は中に蝋燭を幾つか入れて炎が消えてしまうまで確認してもらう。

 蝋燭が燃えると二酸化炭素を発生する。

 二酸化炭素は重いから、箱の底にたまる筈だ。

 この装置が作動すれば、それを酸素と炭素に分解してくれる。

 最初は作動しない状態で炎が消えることを確認し、次に作動状態では炎が消えないことを確認してもらうわけだ。

 因みに天井板についている装置は超小型のエアコンだ。

 蝋燭と言っても熱を出す。

 放置すれば加熱でアクリル板が融けることになるかもしれない。

 だから内部の冷却用に天井に取り付けてある。

 尤も、最初の実験では蓋をしないでやるけれどね。

 蓋をしないでも、箱の中の空気はさほどは動かないし、二酸化炭素が多少は箱の外に出ても問題はないはずだ。

 実験の意味は分ったかい。」


的場は一応頷いた。


「でも、本当にそんなことが可能なんですか。

 二酸化炭素の吸着剤でも使っているのではないのでしょうね。」


「疑い出せばきりがないだろうね。

 そもそも、この装置が本物だとしても、君にはこの部屋についている装置と同じかどうか確認の仕様が無い。

 私が間違いなく本物だよという説明で我慢してもらうしかないだろう。」


「面倒ですが、別途、装置を研究機関でテストしてもらうという方法が有りますけれど?」


「それは構わないけれど、時間がかかるだろうね。

 それに、私には内部構造や理論を公表するつもりはない。

 研究機関にしたって、理屈はわからないけれど確かに作動はしますなどという報告書は面子にかけて書けないだろうと思うよ。

 やるだけ無駄だと思うがね。」


「うーん、しかし、・・・・。

 まぁ、それはちょっと後回しにしましょう。

 取りあえずは、ご用意していただいたもので実験を行ってみてください。

 それを見た上で判断します。」


       ◇◇ 続く ◇◇


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