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先駆者 ~ 天翔けるYAMATO-Ⅲ  作者: サクラ近衛将監
第三章 地上にて
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3ー2 坂崎の計画

「そうだねぇ。

 この5日の検疫期間が終わったら、幾つかの技術を公表し、あるいは、実際に生産することになるだろうね。

 急いで実用化すべきは二酸化炭素の分離装置だろう。

 このまま環境悪化を放置すれば、生態系全般に危険な状態になるだろう。

 何事にも臨界点というものがある。

 そこを通り過ぎてしまうともう引き返せない。

 そうして耐性のある生物はともかく、そうではない生物にとっては臨界点に達しているか若しくはそれに極めて近いところに置かれている。

 既に臨界点を超えてしまった生物を助けることはできないが、少なくとも支援をすることで生き延びることができる生物は助けてあげたいね。

 人間もその意味では一緒だ。

 アフ❆カでは砂漠化で多くの居住可能な地域が失われつつある。

 アフ❆カの砂漠化を急激に止めると、別のリアクションも起きかねないが、少なくとも徐々に緑地を増やし、あるいは恒久的な居留地を造るべきだろうと思う。

 尤も食糧危機も考慮に入れなければならないだろうけれど、そのためには、このYAMATO-Ⅲに使われている構造材のエルニット鋼材が役に立つだろう。

 こいつは金属のように見えるけれど金属では無い。

 原料はシリコンだと思えば間違いは無い。

 土壌、岩石には普遍的に含まれている成分だ。

 それを抽出して、特殊な製法で異なる性質に置き換えている。

 鋼材の1万倍の強度を持つとても軽い素材だ。

 それを使ってYAMATO-Ⅲのように環境に依存せず、その中だけで生活できるアウタルキーを造ることができるだろうと思う。

 動力は、YAMATO-Ⅲに搭載している動力炉を使う。

 空気は一応浄化装置をつけるけれどそうしなくても大丈夫のはずだ。

 水はYAMATO-Ⅲのように再循環方式にすることになるだろうね。

 100m四方に4戸、300m四方に32戸、千m四方に256戸の住宅スペースを造る。

 20キロ四方の面積ではその400倍、約10万戸の住宅スペースが造れるだろう。

 平地ではそれだけにしかならなくても、その平地を階層にすれば更に住宅スペースが拡充できる。

 人が住むにはそれなりの開放空間がいるからね。

 高さ40mから45mに天井があっても左程の威圧や閉塞感は無いだろう。

 階層は50mごとに1階。

 高さが1千mの建造物ならば20階層、およそ200万戸の戸建て住宅ができるスペースができる。

 中に集合住宅地域を1割造れば、それだけでその倍の住宅が可能になるだろう。

 20キロ四方で高さが1千mの構造物に400万戸、それぞれが5人家族ならば2千万人は楽に住めることになる。

 その周囲に同じような階層式の農場や工場を造れば、アウタルキーは自立できる。

 もっとも政治や種族間の対立などイデオロギーの問題は別だよ。

 如何に住むところがあり、食べ物、水にも不自由しないと言っても、そうした人の考え方までは変えられない。

 残念なことに争いや犯罪は無くならないだろう。

 その辺は、僕達がどうにかすべきような問題じゃないでしょう。

 一方で、経済的な問題は起こりえるでしょうね。

 先進国と開発途上国の格差が埋まり、途上国が経済的に力を持つことに脅威を感じている人もいる。

 そう言った人たちは何かにつけて途上国を今のままにしておこうとするかもしれないね。

 何らかのフリクションは有るだろうし、争いも起きるかもしれない。

 それに・・・。

 そうした技術を独占されていることに不満を持つものも出てくるだろうね。

 鋼材はトン当たりで廃材でも1万円ほどもするが、製品になれば付加価値が伴って数十倍から百倍以上の価値も持つ。

 でも、エルニット鋼材は質量が鉄の20分の一ほどだし、トン当たり1万円を切る価格で販売することができるだろう。

 既存の企業では無理だけれどね。

 彼らにはエルニット鋼材は造れない。

 ❄FEや新日❄は倒産するか事業を縮小しなければならないだろうなぁ。

 そうした代償を払わねば、出来ないことでもある。

 本来はそうした利害関係を有する人たちに相談してから決めるべきかもしれないが、そうしていたらいつまで経ってもできないだろうね。

 ソフトランディングをやっている余裕が無いんだ。

 だから、私的な事業で進めてしまうしかない。

 今日は無理だろうけれど、明日にはその計画を幾つか発表するつもりだ。

 残念ながら、君のスクープにはならない。

 計画の発表は同時にするからね。

 先ほど、支局に連絡を取っていたようだが、これからは許可制にするよ。

 発表は、折角君が来ているんだから宿泊料の代わりに君にやってもらおう。

 午前10時を予定している。

 それまでは外部からどんな取材要請があっても受け付けない。」


 篠塚は、こくんと頷いた。


「発表の原稿は、君に後で渡すが、それで良いかな?」


「はい、一宿一飯のお礼には不足だと思いますけれど、私でよければやります。

 それに、・・・。

 厚かましいようですが、もうひとつお願いをしてもいいでしょうか。」


「ウン、何かね?」


「坂崎さんはご自分で事業を始めるおつもりかと存じます。

 事業には会社を立ち上げ、人材も揃えなければなりません。

 で、宜しければ私を雇っていただけませんか?

 取りあえずは広報担当でも結構です。

 お給料は高い方がいいですけれど、宿泊と3度の食事つきなら安くても構いません。

 無給と言うのは困りますけれど・・・。」


「ほう、狙いは何かな。」



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