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先駆者 ~ 天翔けるYAMATO-Ⅲ  作者: サクラ近衛将監
第二章 飛翔
34/74

2ー28 噂の真相

「YAMATO-Ⅲからですが、篠塚さんが支局長さんとお話をなさりたいそうです。

 古谷さんは、いらっしゃいますか?」


 里法呂(さとほろ)北❆道総局から応援で来ている守脇が古谷に取り次いでくれた。

 古谷が画面に現れる前に、喜代美夫人が席を外すようにして部屋を出て行った。


 まもなく、古谷が現れた。


「すみません支局長、勝手なことをして、でもあのタイミングを外すと中には入れませんでしたので、私だけなら何とかなると思いまして・・・。」


「全く鉄砲玉だな。

 それも無鉄砲と言うやつだ。

 後先考えずに突っ走りやがる。

 まぁ、そこに入れただけでもめっけものだ。

 連絡がなかなか来ないから、ひょっとして船内で監禁でもされてるかなと思ったぐらいだが、まぁ良かった。

 ただ、5日も出て来られないのを承知で行く馬鹿がいるか。

 第一着替えも持って行ってないだろうが、まったく・・・・。

 毎日同じ衣装じゃ、本番では使えないぞ。」


「ええ、奥様がお嬢さんの古着を貸してくれると言っていますので何とかなるのではと思っています。

 あるいは多少ラフな格好になるかもしれません。」


「まぁ、そっちはなるようにしかならんだろうな。

 だが、少なくとも寝間着やジャージで出てくるなよ。

 それに、しっかりレポートしないと、倉庫番に配置換えだぞ。

 ところで、背景(バック)は何だ?

 えらい豪勢なところに入っているじゃないか。

 船内なんだろう?」


「はい、客室に入れていただいています。」


「はぁーっ、客室ねぇ。

 まるで高級ホテルのスイートじゃないか。

 そこがホテルなら、かなりふんだくられるぞ。」


「ですよね。

 私の1DKのアパートより、余程広いんですよ。

 多分20畳ぐらいは有りそうです。」


「20畳?

 そいつはまた豪勢だな。

 他の部屋も一緒か?」


「他の部屋はわかりませんけれど、多分同じぐらいは有ると思いますし、あるいはもっと広いのかもしれません。

 居間なんか大きなホテルのロビー並みですよ。

 間違いなく20m四方はあります。」


「わかった。

 いずれにしろカメラは持って行っているんだろうから、出来る範囲で撮ってくれ。

 それと坂さんの機嫌を損ねないように注意しろ。

 坂さんはあれで一旦言いだしたら絶対に後にはひかない人だ。

 お前が無茶すれば何も得られずに放りだされることになる。

 無論VTRは取り上げられるだろうな。」


「そうなんですか?

 とても温厚な人に見えますけれど。」


「まぁな、滅多なことでは怒らん人だ。

 それだけに怒ったら怖い人だ。

 それよりも篠塚、・・・お前、誠一君にほの字なんだろう。

 だが、くれぐれも言っておくが色仕掛けはやめておけよ。

 オヤジさん似かどうかは知らんが、仮に坂さんと同じ性格ならそれだけで嫌われるぞ。」


「何を言っているんですか。支局長。

 私がそんなバカなことをすると思いますか?

 そりゃ、今、彼から誘われたらほいほいって何処へでもついて行っちゃうかもしれないけれど。

 自分からそんなことはしません。」


「ウン?

 お前には前歴があるだろうが。」


「前歴?

 前歴って・・・。

 あ、もしかして報道局次長のことですか?」


 古谷は辺りを見ながら頷いた。

 どうやら周囲には人がいないようだ。


「支局長、傍に人はいないですよね?」


「ああ、いない。

 ドアには鍵を掛けてある。

 微妙な話が出たらまずいからな。

 人には聞かれないようにしている。」


「じゃあ、話しますけれど・・・、あのですね。

 あの話は、半分は嘘なんです。

 確かに次長と私はホテルに行きました。

 でもそれは次長に()められたんです。

 報道局の定例の飲み会で、私、薬を盛られたみたいなんです。

 次長のごますり男にです。

 で、私が酔いつぶれたところを次長とその男が早々とタクシーに押し込んで、次長と私だけがホテルへ直行と言うわけです。

 でも、ホテルの部屋に入る前に次長の奥さんに見つかったんで事無きを得ました。

 くれぐれも間違いの無いように申しておきますが、ホテルの部屋に入る前ですよ。

 ただ、私に薬を飲ませたことが分かれば刑事犯罪になります。

 それだけは何とかこらえて欲しいと、私、理事長から直接頼まれてしまったんです。

 結局、私が色仕掛けで次長に話を持ちかけたけれど、ホテルの部屋で下着姿のところを奥さんに見つかったと言う話にしたんですけれど、・・・。

 本当は納得していないですよ。

 でも、例の次長は理事長の親戚だって言うじゃないですか、

 それにほとぼりの覚める3年ほど経ったら本局の好きな部署に行かしてやるって念書まで書かれたんじゃしょうがないですものね。

 色仕掛けで次長を誘ったと言うことになって、ある意味局内からは白い目で見られています。

 理事長からこの話が有った時は、正直言って頭に来ましたよ。

 被害者になったかもしれない私に悪者になれですからね。

 NFKなんか止めようとも思いました。

 でも、自分で望んで入ったところですし、今、理事長に(にら)まれたら私の将来は完全にアウトですよね。

 支局長ならどうします。

 局を辞めます?

 あるいは干されるのを覚悟で理事長に抵抗します?

 それとも悪役を引き受けます?」


「おいおい、そいつは本当かぁ?

 俺は報道局長直々にお前の異性関係に注意しろと言われたんだぞ。」


「報道局長は事情を知りません。

 知っているのは理事長と、一部の常任理事だけです。

 でも支局長、今の話は絶対に内緒ですよ。

 噂話でも流れた日には、それこそ私、浮かばれなくなります。」


「お前、・・・。

 その念書とやらを今でも持っているのか。」


「ええ、大事に隠しています。」


 呆れた顔で古谷は頭を振ると、最後に言った。


「お前は、YAMATO-Ⅲの一件で結構目を掛けられている。

 だからつまらないところで躓くな。

 それと、・・・、坂さんはいい男だよ。

 その息子なら多分いい男だろうし、大丈夫だろうと俺は思う。

 どちらもある意味でチャンスなわけだが、お前はどちらを選ぶ?

 仕事かそれとも男か。

 大きな岐路だぞ。

 仮に決断しなければいけないときは、よくよく考えてから決めろ。

 人生に後悔は付き物だが、できるだけ後悔をしない生き方を見つけろよ。」


「はい、ありがとうございます。

 そんな場面があったら、支局長の言葉を思い出すことにします。」


 電話は10分ほどもかかったかもしれない。

 篠塚がドアを開けて通路にでると、ドアの脇に、大きな紙袋が二つ置かれていた。


 中身は衣類のようである。

 小さな紙片に「古着です。お好きな物を遠慮なく使って下さい。」と女文字で書いてある。


 喜代美夫人が用意してくれたものだろう。

 中に入らずに外にさりげなく置く当たりが喜代美夫人の気遣いなのだと感じた。



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