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先駆者 ~ 天翔けるYAMATO-Ⅲ  作者: サクラ近衛将監
第二章 飛翔
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2ー27 YAMATO-Ⅲの船内 その二

 そこの階にも同じく広い通路で先ほどと同じくスライド式の自動ドアがあり、誠一はその奥まったところまで案内した。

 ドアが開くとそこは本当に広い室内であり、居間であった。


 おそらくは20m四方もの広さがあるだろう。

 まるで豪邸の室内であり、窓もある。


 だが、風景が違っていた。

 ガラス越しに見えるのは白い砂浜、青い海、それにヤシの木であった。


 宇宙船にこれほど大きな窓を造れば強度的に問題が有るだろう。

 これは多分、録画か合成の画像なのだ。


 それにしても本物に見える。

 ヤシの葉が風に揺れているし、海辺には緩やかな波が繰り返し押し寄せている。


 坂崎夫妻が、ソファから立ち上がった。


「いらっしゃい。

 だが、特別扱いは今度だけだよ。」


 少し笑みを浮かべながら、坂崎がそう言った。


「はい、申し訳ありません。

 1カ月ほども、毎日、顔を合わせていた性か、随分と親しくなったような気がいたしまして、ついついご迷惑を承知で無理なお願いをしてしまいました。」


「じゃぁ、先ず貴方の部屋にご案内しましょうね。

 その防寒着はもう要らないでしょう。」


 喜代美がそう言って、篠塚を促して再度居間から出て行く。

 通路脇の右側ドア二つ目が篠塚用に割り当てられた部屋である。


 部屋は奥に向けて細長いが40畳近くの広さが有り、右側にトイレ付浴室と大きなウォークインクローゼット、手前に8人が楽に腰を降ろせる立派なソファ・セット、奥に立派なツインのベッドと大きな机があった。

 まるで高級ホテルのスイートのような部屋である。


「あの、こんな立派な部屋でなくても片隅でも結構ですが・・・。」


 若干雰囲気に気圧された篠塚が遠慮がちに申し出たが、喜代美夫人は笑いながら言った。


「うーん、残念ながらここには(うまや)は無いし、倉庫も一杯なの。

 でも客室ならまだ5つほど空いていますからね。

 遠慮しなくてもいいのよ。

 当座の仮住まいと思ってちょうだいな。」


 以前会った時にも思ったが、喜代美夫人は楚々(そそ)としていてとても上品な雰囲気である。

 篠塚は肩に掛けていたカメラ機材を手近の台の上に置き、防寒着を脱いで、クローゼットに収めた。


「あ、そうそう、多分、着替えも持ってきていないでしょう。

 後で、娘のものをお出ししておきますからそれを使って下さい。

 古着だけれど、娘ももう着るようなことは無いから遠慮しないでいいわ。

 申し訳ないけれど、下着も同じく古着しかないの。

 それで我慢してね。

 多分、サイズは娘と同じぐらいでしょうから大丈夫だと思うけれど、ブラはどうかなぁ。」


 喜代美夫人は篠塚の胸のあたりをちらっと見ながら言った。


「貴方の方が大きいかもしれないわね。

 でも、町へ出て買い物するわけにも行かないから、何とか工夫して頂戴。

 最悪、ノーブラでも構わないでしょう。

 後で、衣類をクローゼットの棚に入れておきますからね。

 化粧品は、この部屋に揃えてあるものを使って頂戴。

 若向きを含めて、一応は一通りそろっているはずよ。

 貴方がいつも使っているのが有ればいいけれど、化粧台の引き出しの中に入っているわ。

 5日分なら十分に間に合うはずです。

 洗濯物は、自分でするなら浴室についている小型の洗濯機でしてくださいな。

 乾燥機も脇についています。

 但し、市販のものではありません。

 真空ポンプで乾かしてしまう方式なの。

 少なくとも生地が熱で傷んだりすることは無いはずよ。

 アイロンは、アイロン台と一緒にクローゼットに収納してあります。」


 喜代美夫人はそこで一息ついた。


「他には・・・。

 あ、そうそう、この部屋は、貴方個人を認識して開きます。

 先ほど貴方が乗船した時に必要な貴方のデータは、管理システムにインプットされました。

 だから、この部屋に入るのに貴方は鍵が不要ですけれど、他の者は原則として貴方の了解なしには入れません。

 そうして、貴方も同様に私たちの個人的な部屋には入れません。

 私が一応マスターキーを持っているので、私はどの部屋にも入れますけれどね。

 それに、貴方の場合は、色々な場所に行くのに制限がつきますから、ここと居間以外に行くには誰かが一緒にいなければ駄目ですね。

 エレベーターも貴方だけでは動きません。

 階段は降りることもできるけれど、通路以外は何処にも入れないでしょうし、4階以外は通路のドアも開かないでしょうね。

 いろいろと制限付きなのだけれどごめんなさいね。

 必要な保安措置なの。」


「いいえ、奥様が謝る必要はございません。

 私が無理やり押し掛けて参りましたのですから、どんな条件をつけられてもいたしかたないところですのに、こんなによくしていただいて・・・。

 ただ、ここから外部と連絡はとれましょうか。

 携帯電話は持ってきていますが・・・。」


「携帯電話の電波はここからでは届きません。

 周囲が完全に特殊な金属の隔壁で覆われていますからね。

 でも外部の連絡と言うと・・・。

 どちらに?」


「支局長に連絡を取る必要があるんです。

 実は急に決めたことですから、私がここにいることで、支局の予定に穴をあけちゃうことになります。

 できれば、支局長に事後承諾だけでも取っておきたいのです。」


「うーん、それなら、NFKにある通信装置を使えばいいわ。

 あの装置からならTV電話もできるから。」


「そんな使い方もできるんですか?」


「ええ、事前の打ち合わせの時に使っていたでしょう。

 あれは、他の通信装置には情報が伝わらないのよ。

 但し、周囲にいる人には音声も聞こえるし、映像も見えてしまうから、電話と一緒というわけには必ずしも行かないわね。」


 そう言いながら、喜代美夫人は壁際の大きなテレビを操作した。

 幾つかの操作をすると、NFKの宇部広支局の内部が画面に映った。


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