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先駆者 ~ 天翔けるYAMATO-Ⅲ  作者: サクラ近衛将監
第二章 飛翔
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2ー24 他星系の画像

 古谷が言った。


「まぁ、いい。

 少なくとも放送中にプロポーズはしなかったからな。

 しかし、すごいよなぁ。

 さすがにYAMATO-Ⅲだよ。

 ワープまでできるなんて。

 これで、居住可能な惑星が見つかれれば、宇宙版フロンティアが始まることになるぜ。」


「ええ、そうかもしれませんね。

 でも、余りに坂崎さん達は進み過ぎています。

 中世に現代社会の発電機と電気製品を造り上げてしまったようなものです。

 今の時代がそれをどう受け止めるかが心配ですね。」


「なるほど、中世に現代文明か・・・。

 それぐらいのギャップが有るかも知れないな。

 坂崎さんがいなければ宇宙開発も一時的には停止していたかもしれないぐらいだからなぁ。

 何しろ、アポロ以降の進展が遅すぎた。

 火星への有人探査だって計画だけでとても実現しそうになかったからな。

 それが一挙に別の恒星系にだって脚を踏み出せるんだ。

 それもここから家に帰るより余程簡単にな。

 こいつはお前がさっき言った革新の一つだよ。

 その革新がどう進むか、それを俺らが記録しなければならないな。」


 篠塚は頷いたが、古谷にはその仕草に少し躊躇(ためら)いが有ったようにも感じられた。

 どうやら、篠塚には報道と言う仕事以外にも大事なことができたようだ。


 篠塚はこの1カ月余りで印象ががらっと変わった。

 浮ついた部分が消え、本来の理知的な考えと若さのあるきびきびした動作に磨きがかかっている。


 今の篠塚なら、坂崎の息子にもつり合いが取れる存在感がある。

 坂崎の屋敷に連れて行った時は単なる綺麗な馬鹿娘に過ぎなかったのだが・・・。


 後刻、その篠塚が、夕方までに仁十久(じんとく)斗夕(とうせき)峠に行きたいと申し出た。

 何の確証もないが、YAMATO-Ⅲは、今晩には帰還するような気がするというのである。


 確かに可能性があるが、着陸地点は何も連絡してきていない。

 胤ヶ島(たねがしま)かもしれないし、NAUAの宇宙センターかもしれない。


 だが、坂崎ならば仁十久に帰ってくる可能性が大である。

 無論、他もあるかもしれないが、その場合は着陸の取材は宇部広支局では無理だろう。


 仮に今晩の取材放送が有ったにしても、新東京で対応することになっているから篠塚が支局で待っている必要はない。

 古谷は決断した。


「よし、行って来い。

 中継車とカメラマン、それにアシスタント一名をつけてやる。

 空振りの場合は、明日朝の4時までには戻ってこい。

 今は、中止されているが、朝8時からの定例放送が有るかもしれないからな。」


 篠塚は満面の笑顔で頷き、1時間後、仁十久に向かって中継車と連なって出発した。


 ◇◇◇◇


 その後、YAMATO-Ⅲでは、12分から15分の間隔で3度のワープがあった。

 以後の地上との交信予定は全てキャンセルされていた。


 画像だけは従前と変わらずに送られてくる。

 そうして、9時20分過ぎには、二度の遷移があり、突然、前部カメラが恒星を捉えていた。


 かなり近い位置にいるように見える。

 少なくとも地球から見える太陽以上に大きく見える。


 映像の片隅に有る倍率では、地球から太陽を狙っていたカメラと変わらないはずである。

 そこでは2時間近く停留していた。


 その上で再度三回の遷移があった。

 二度目の遷移で赤み掛かった恒星の近くであることが分かり、三度目の遷移では真下の映像が惑星を捉えていた。


 YAMATO-Ⅲが国際宇宙ステーションとランデブーしている状態の地球を映しだしていた状況と同じである。

 その惑星は氷の惑星であった。


 どこまでも真っ白な表面が続いている。

 それが10分ほど続いて、そうして、それが乱れて瞬時に別の地形に変わった。


 巨大な惑星のようだ。

 木星又は土星の状況に良く似ている。


 ガス状の物質が地表面でゆっくりと形を変えているのが分かる。

 しかしながら、その画面では地上がどうなっているのかまではわからない。


 これも10分ほどで瞬時に画面が変わった。

 こんどは、青い海があった。


 雲が有った。

 陸地も見えた。


 但し、海の青さがちょっと異常である。

 地球の青は白っぽい輝くばかりの青であるが、この惑星の青は、非常に濃い群青色であり、むしろかなり黒に近い青なのである。


 雲は、白では無くやや黄色みを帯びている。

 陸地の色は褐色でありところどころに薄い緑が有る。


 或いは植物なのかもしれない。

 初めて地球外での生物を目にした瞬間であるかもしれない。


 或いは海には動物もいるかもしれない。

 ここも10分強で映像が変わった。


 一旦宇宙空間に戻り、そこで2時間ぐらい停留し、更に三度ほどの遷移があり、次に見た映像は印象的だった。

 恒星の周囲が無数のリングで覆われている世界である。


 恒星に最も近いリングの中心付近は黒っぽい色であった。

 離れるに連れ白っぽくなり、外縁は氷のリングである。


 映像の中で恒星の光を浴びて虹色に光っているのである。

 そこにも10分ほどで、すぐにかなり離れた宙域に遷移し、2時間ほど停留していた。


 日本時間で、午後6時30分、YAMATO-Ⅲは再度遷移した。

 画面が揺らいで次に映像が現れたのは明らかに地球であった。


 白い雲、青い海、やや茶色がかった陸地の山脈と緑の平地が見える。

 YAMATO-Ⅲは、宇宙から実験を終えて地球へ帰還したのである。


 篠塚は午前中には斗夕峠の私道に入り込み、遮断機の前に到達していた。

 警察のパトカーも付近にあって警戒していると連絡してきている。


 篠塚達が現れたことにより、仁十久警察は更に増員を検討し、夕刻までには4名を更に警戒に出すようである。

 古谷はすぐに篠塚の携帯に連絡を入れた。


  ◇◇ 続く ◇◇


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