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先駆者 ~ 天翔けるYAMATO-Ⅲ  作者: サクラ近衛将監
第一章 プロローグ
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1-3 建築確認 その三

 この物語はあくまでフィクションであり、似たような記述があっても、実在する人物もしくは組織とは何の関わりも無いことをご承知おきください。


 概ね、一話二千字を目途に、毎週月曜日の午後8時に投稿する予定ですが、第七話までは毎日一話投稿いたします。



 それはともかく、幅が3mほどもある斜路を上って行くとそこから二階部分である。

 そこで気付いたのは二階の通路照明がついていることであった。


 但し、部分的にである。

 通路には幾つもの隔壁が有り、それぞれに金属製のドアがついている。


 かなりごついドアで銀行の金庫室を思わせるようなドアである。

 尤も、的場にしてもそれらのドアが閉まっている状態を見たことは一度も無い。


 二階通路脇には扉の開いた倉庫が幾つも並んでおり、通路終端のドアも開いている。

 そこにはホーム・エレベーターもついている。


 一応の安全基準は満たされている規格品であって、的場が検査をする必要はないものだ。

 同じ部屋に螺旋式階段が三階に伸びているのだが、当の家主、坂崎さかざき義則よしのりが螺旋階段を降りてきて、的場に声をかけた。


「やあ、いらっしゃい。

 少し早かったね。」


 坂崎義則は、還暦を過ぎた63歳であるが、中々に精悍な顔つきの男である。

 少し太めの身体であるが、この年代の男にしては背丈もある。


 身長175センチの的場よりも少し低いくらいだが、体重は百キロ近く有るのではないかとみている。


「ええ、少し早めに出たものですから・・・。

 照明がついているようですね?」


「あぁ、的場さんのご希望に応えるためと、来週から業者が三社ほど入るから、・・・。

 明かりが無いと難しい作業もあると聞いているんでね。

 テラス脇の藪を切り開いて太陽電池パネルを据え付け、そこから電気を取っている。

 出力が100キロワットほどもあるので一応の照明や一部動力なら使えるよ。」


 坂崎は、電気工事士免許も持っている。

 しかも自家用ではなく一般用の第一種電気工事士であり、500キロワットまでの設備を扱えるし、非常用発電機の設置資格も有している。


 だから、この奇妙な家に関する限り、どんな電気機器をも設置し、配線することは可能なのだ。


「100キロワットとは、また、凄いですね。

 確か・・・。

 今のところ、1平米当たりで120ワット程度ですよね。

 800平米以上ものパネルを用意したのですか?」


「いやぁ、そんなに敷地の余裕はないよ。

 延べで言うなら2万坪を超える敷地はあるけれど、ほとんどが急斜面だし、必ずしも南を向いているわけじゃない。

 崖のような谷に当たる部分を避けて南側の緩斜面に設置したパネルは10基、100平米ぐらいのものだろう。」


 坂崎はいとも簡単に答えているが、そうだとすれば、少なくとも従来の10倍近い発電能力を持つ受光素子が無ければできない相談だ。


「坂崎さん。

 もしや、それも自分で?」


「ああ、無駄なことに金はかけたくはないのでね。

 自分で造った。

 1基辺りで最大9.8キロワットの電力が得られるはずだ。

 今日は生憎の曇りだが、それでも全体で30キロワット近くの出力は得られるはずだよ。」


「それって、販売したら凄いことになりますよ。」


 坂崎は笑って答えた。


「今のところ、販売する予定はないよ。

 いずれは発表することになるだろうがね。

 それまでは、的場さん、あんたも内緒にしておいてくれ。

 ほれ、公務員倫理にもあるじゃろう。

 公務で知り得た秘密を他にもらしてはならないと言うやつだ。

 有る意味で個人情報の秘密にも当たるしね。

 で、肝心の仕事の話だが、一応、換気装置も作動できるようにしている。

 確認するかい。」


「ええ、そのために来ましたので。」


 坂崎は頷いて、それから壁際のパネルを操作した。

 油圧を使っているらしく全くの無音であるが、上がってきたばかりの斜路がゆっくりと閉まり始めた。


 1分ほどで完全に斜路が閉じた。

 これでこの居住区は完全な密閉状態に置かれたはずである。


 他に2カ所緊急脱出用の出口があるのだが、そこは内部からだけしか開けられない。


「既に換気装置は作動しているんだが、この内部容積は広いからきちんと作動しているかどうか確認するには時間がかかる。

 このまま1週間ほどもここにいてもらえばわかるだろうが、それほどあんたも暇じゃないだろうから、簡単な実験装置を造ってみた。

 居間に上がろうか。」


 確かに室内に空気の流れは感じられる。

 だが、それは密閉された空間で扇風機をまわしても起こりえることだ。


 一体、坂崎はどうやって密閉された空間での換気を実現しようとしているのだろうと、的場は不思議に思っている。

 通常ならばあり得ないことである。


 潜水艦ですら、換気のために浮上しなければならないし、空気浄化装置で一部二酸化炭素を還元する方法もあるとは聞いているが、随分と経費のかかるものらしく、一時しのぎにすぎないと聞いている。

 米軍や金に糸目をつけない宇宙開発ならば可能だろうが、土台無理な話であるし、それこそ無駄なことである。


 それよりはフィルターに金をかけた方が余程いいものができるはずである。

 他から空気の捕りようが無い水中や真空中ならともかく、地上に大気は満ち溢れているのだから、それを利用しない手はないはずだ。


 無駄なことを嫌がる坂崎老人にしては、随分と奇妙なことだと的場は思っているのである。


       ◇◇ 続く ◇◇

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