表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
先駆者 ~ 天翔けるYAMATO-Ⅲ  作者: サクラ近衛将監
第二章 飛翔
26/74

2-20 石垣島 その二

 その上で、画像を縮小させ、右上に石垣島、左下に西表島が配置されるように調整した。


「石川何が見える。」


「あの、島が・・・。

 竹富島も含めて良く見えます。」


「他には?」


「他?

 ・・・というと?

 えっ、あっ、・・・。

 何か画面に輝点が見えますね。

 青、緑、黄色、ピンクいや赤でしょうか。」


「フン、・・・。

 青いのは水面上に有る船だ。

 緑は潜水艦、黄色は大気圏内の航空機、赤は大気圏外の飛翔物だ。

 残念ながら、こいつには陸上で走る車のデータは表示されていないが、本来は表示可能だそうだ。」


「そいつは凄い。

 で、これを我々に配分したと言うことは、こいつで監視警戒をしろと?」


 竹野は頷いた。


「ああ、そういうことだ。

 但し、断っておくが、どんな場合でもこの装置が有ることは秘匿しなければならない。

 密輸の現場を見つけたにしても、この装置で見つけたとは口が裂けても言えないと言うことだ。

 それを考えながら行動しろ。

 原則、この監視警戒の仕事は業務監理官の田坂がやれ、船長は船の指揮だ。

 だが、業務監理官が動けない時には船長がその穴埋めをする。

 お前ら二人だけしかいない所ならいいが、それ以外なら、ほのめかしすらするな。

 だから二人で予め約束事をしておくことだな。

 言葉或いは所作何でもいいが幾つかのバリュエーションを考えておかんといずれ勘のいい乗組員に気づかれることになる。

 さっきも言ったようにそうなればお前ら二人が場合によってはクビになる。

 そうして幾ら俺でもそれは止めようがない。

 お前らがクビなら、俺も良くて戒告、悪けりゃ停職、減給だろう。

 まぁ、二度と浮かびあがれんだろうな。」


 二人はえらいものを預けられたと感じていた。

 石川が尋ねた。


「ですが、こいつは、いったいどうやって映しているんですか?」


「詳しいことは俺も知らん。

 だが、東京湾上空二千キロに静止衛星が浮かんでいるそうだ。

 そこからの映像を見ているだけらしい。」


「それはおかしいですよ。

 静止衛星と言うのは赤道上空のはずです。」


「普通の奴ならそうだ。

 だが、こいつは地球の自転と一緒に動いている。

 静止衛星は赤道上を円周方向に自由落下しているから止まっているように見える。

 だが、この静止衛星は自分で軌道を変えながら絶えず同じ位置にいるんだ。

 走っている船が仮に緩やかに曲がっていても自在に動けるヘリコプターなら常に船の上空に止まっていられる。

 おまけにこの衛星はYAMATO-Ⅲと同じ完全なステルスだ。

 地上からは余程の僥倖が無いと見つけることなどできない。

 そういうことだ。」


「海上保安庁だけですか?

 こいつを持っているのは。」


「防衛省もだ。

 というより、防衛省から回された。

 坂崎さんから特注があってな。

 防衛省が渋々ながら持ってきたというわけだ。」


「じゃぁ、海自も持ってると言うことですか。」

 竹野は頷いた。


「坂崎さんの頭には、国防も有ったのだろう。

 俺たちは軍人ではないが、防人だ。

 海自ができない時には俺達がやるしかないからな。」


 その日から、海上保安庁の動きが変わった。

 無論、小型の船艇には装置が搭載されていないが、本部にはあるし、保安部長が持っている。


 この装置は、警備は無論のこと救難面でも色々と役立っていたのである。

 行方不明の捜索は極めて迅速であったし、夜間においても昼間同様の識別可能な装置は人気の無い港内での事故や犯罪を未然に防止することもできたのである。


 但し、この装置を常時見ているほど海上保安官も暇ではない。

 例えば業務監理官の田坂は、仕事の合間、合間に自室に引き込むことが多くなった。


 数時間おきに周囲を観察し、状況によってはそれをかなりの頻度で周期を短くもした。

 犯罪などは概ね夜間に多いので、必然的に夜間起きている昼間に休んでいることが多くなることもしばしばである。


 但し、その効果はすぐに顕在化し始めた。

 日本国内に流入する覚せい剤などの薬物が極端に少なくなったのである。


 取引現場には必ずと言っていいほど巡視船艇が遊弋しだし、国内へ海上からの輸送ルートが殆ど止まってしまったのである。

 貨物又は航空機を使った密輸が無くなったわけではないし、実際にそのウェイトも高まったのだが、航空便ではトン単位の薬物は運べないのである。


 これまで日本国内に流入していた薬物はその9割が海上からの密輸であった。

 そのために末端価格がこれまでの10倍以上にもなり、同時にヤク切れの常習者が起こす犯罪が一時的にはかなり増加したぐらいである。


 だが、それも半年ほどで治まった。

 物が入って来ないのでは、売買そのものが成立せず、いわゆるヤク中が極端に減ったのである。


 その年、海上保安庁の覚せい剤押収量は、実に3トンを超えていたのである。

 一旦、売買のつながりが消えると、中々に修復しない。


 最終的に、国内の末端使用者は、それまでの二十分の一ほどに激減していたのである。

 売価が高くなったことで警察の取り締まりも厳しくなり、国内の密売組織そのものが崩壊しつつあった。


  ◇◇ 続く ◇◇


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ