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先駆者 ~ 天翔けるYAMATO-Ⅲ  作者: サクラ近衛将監
第二章 飛翔
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2ー17 木星へ

 翌朝、日本時間で6時からブリュッセルのEU代表部とYAMATO-ⅢとのTV会見があった。

 EU代表部の首脳が顔をそろえ、一方、YAMATO-Ⅲも坂崎のほかに喜代美、誠一が顔をそろえていた。


 驚くべきはEU代表部の会見でフランス語、ドイツ語など数カ国語で話がされたことである。

 坂崎の英語が一流であることはNAUA(ノア)との交信で分かっていたが、喜代美や誠一もそれらの言葉を流暢に話し、代表部の者たちを驚かせたことである。


 急遽、通訳は日本語から、多言語に切り替えられて事務局の連中を慌てさせていた。

 30分の予定が15分ほど延長されたのもご愛嬌である。


 その後、7時にYAMATO-Ⅲは予定通りに月を出発した。

 6Gの加速度であり、二日後には木星までの航路で最大速度に達する予定である。


 8時からの記者会見には、三人の外にゴールデンレトリバーの子犬とヒマラヤンが出演した。

 犬と猫であるが、仲は良さそうである。


 会見場所もYAMATO-Ⅲの居間に移されていた。

 立派な邸宅の居間と言った風情ふぜいであり、大きなソファに三人が腰を降ろし、犬と猫が坂崎夫妻の膝の上に収まった状態である。


 記者会見では様々な質問が乱れ飛んだが、篠崎と坂崎がうまくさばいていた。

 坂崎は答えられないものは答えられないと正直に言い。


 簡潔に説明もしたが、科学担当記者とは言え、その説明から得られる手掛かりだけでは更なる追及ができなかった。

 全くの聞きかじりの知識で食いついても、坂崎がその誤りを指摘することで終わってしまう。


 1時間の会見はあっという間に終わってしまった。

 9時からはアムリカ国のアームストロング大統領が約10分間話したあとで、科学担当顧問のディクソン博士とその愛弟子たちが、坂崎に食いついていたが、彼らとても報道陣とさして変わるところなく、いなされた格好であった。


 彼らの知らぬ理論を口に出され、既知の理論を反証として出しても簡潔に否定されていた。

 坂崎は反証の理由として幾つかの実験をしてご覧なさいとだけ指摘して会見は終わった。


 後日、坂崎の指摘がことごとく実験で実証されたと報道されたのである。

 無論、坂崎はディクソン博士たちが屁理屈をこねた間違いを指摘しただけで、YAMATO-Ⅲが持っている技術理論を公開したわけではない。


 専門家でも理解不能な理論をいくつか紹介したにとどまっているのである。

 NAUAはこれまで寄せられた観測データについての分析結果を踏まえて幾つかの大胆な仮説を相談し、5つの仮説の内、二つまでは坂崎からも同意が得られるなど、徹頭徹尾技術者同士の話し合いに終わった。


 宇宙開発事業団でも多くの職員、元宇宙飛行士などが集まって様々な質問をし、将来の宇宙開発にまで話が及んだが、夢物語をいっぱいに膨らませたのは宇宙開発事業団であり、坂崎はそうした可能性も十分ありますと柔らかく肯定しただけであった。

 昼食を挟んで、道庁の割り当て時間では、里法呂さとほろ市の小中学生を集めての懇談会となった。


 ここでも生徒達から多くの質問と夢が語られ、坂崎が一つ一つ丁寧に受け答えしているのが際立った。

 三時からの中華国政府との面談ではハプニングが起きた。


 紊科学庁長官と坂崎一家が中華国語で歓談している最中に、紊長官が急に起立した。

 そうして画面に顔を出したのは、鄭書記長であった。


 坂崎と親しげに歓談し、そうしてすぐに立ち去った。

 坂崎一家の応対は中華国側から見てもすこぶる立派な応対であったと後に同時通訳が説明してくれた。


 一般の者であれば知らないような儀礼の言葉を言って書記長を迎え、そうして送り出したのだと言う。

 鄭書記長は広東省出身であり、その地域で古くから伝わる高貴な人に応対する際の儀礼だったと言うのである。


 そうして、北京語についても余程中華国語に精通していなければわからない敬語を流暢に操る坂崎親子はとても日本人とは思えないほどであると同時通訳の超陽明さんは語ったのである。

 総理官邸の割り当て時間は、新東京地区の記者会見に姿を変えていた。


 文部科学省の割り当て時間は、東大など航空宇宙研究を手がけている大学の研究者が集まり、専門的な質問に終始した。

 8時からのNFKの報道は、仁十久から数十人の子供たちを呼び集め、子供たちから自由に質問をさせた。


 その日の最終は午後10時からマスクヴァ、グレムリンからプーシキン大統領と側近の科学顧問が相手した。

 ここでもロッシーア語だけで会話をする坂崎が目立った。


 坂崎は、少なくとも英語、ドイツ語、フランス語、オランダ語、スペイン語、中華国語、ロッシーア語を流暢に操ることができるようだ。

 少なくとも相手は驚いてはいても一切違和感を覚えてはいないようである。


 むしろ同国人と話す以上に早口になっている者もいたぐらいである。

 尤も、ロッシーアのプーシキン首相からは余程気易くなったのか、宇宙基地のあるファイコヌールにも通信装置をいただけないだろうかとの依頼が有ったぐらいである。


 坂崎は苦笑いしながら答えた。


「ロッシーアにだけ特別にすると嫉妬が生まれそうですね。

 お渡ししていない国も多いわけですし。

 でもアムリカ国にはNAUAにもお渡ししましたので、何とか手配できるようにしましょう。

 但し、恨まれないように他にもお渡しするようにするしかないですね。

 木星に到着するまでには配分方法を考えてみましょう。」


       ◇◇ 続く ◇◇


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