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先駆者 ~ 天翔けるYAMATO-Ⅲ  作者: サクラ近衛将監
第二章 飛翔
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2ー14 大統領の方針

「どういうことかな?」


「サマセット博士は、彼が反骨心旺盛な人物であるとの評価を下した上で、日本政府を動かして我が国と敵対する可能性があるとの分析をしています。

 第一に特殊な通信装置を国内で5基配分しましたが、我が国には政府とNAUAの2基だけ、無論他の政府は各1基だけなわけですから我がアムリカ国を重視していることに違いは無いと思われますが、日本とアムリカ国の関係を重視するならばより多くの配分がなされても不思議はないと思われます。

 しかも通信装置そのものは、彼にとってはおそらく左程の困難もなく増産ができる代物ではないかと思われます。

 これまでアムリカ国主導でなされてきた宇宙開発ですが、予算上の問題も有って我が国は徐々に手を引かざるを得ない状況に置かれております。

 そのような状況下で、日本人であってしかも民間人があのような高性能な宇宙船を建造し、実際に実働させています。

 ロッシーア、中華国、EUにとってもその知識と技術は垂涎の対象となり得ます。

 仮に日本がその技術を独占するような状況になれば我が国の宇宙産業は苦境に陥ります。

 まして、宇宙ステーションのレーダーにも全く検知されない優れたステルス性は、軍事的にも計り知れない価値が有ります。

 そうして隕石群からステーションを防護した得体の知れないシールドは、強力な盾となり得ます。

 毎秒33マイルの速度で邁進する直径20フィートの隕石は、仮に氷であっても簡単に厚さが10フィートの鋼鉄板を打ち破るそうです。

 そのシールドが有れば如何なるミサイルも標的には届きません。

 ミサイルは高々(たかだか)毎秒5マイル程度。

 簡単に抑止されてしまいます。

 仮に核ミサイルであってもその爆発はシールドを打ち破れないかもしれないとの専門家筋の想定もございます。

 これらの装置が我が国へ何らかの形で供与されるならばよし、もし否であれば、我が国は強力な兵器を他国の独占に委ねることになります。

 このことは如何に日米同盟があろうと、技術移転条項が無い限り指をくわえて見ていなければなりません。

 坂崎なる人物の発言と動向は今後の世界を変え得るものです。

 彼が中華国やロッシーアに(なび)くとは思われませんが、彼の存在が日本政府にいずれ(おご)りを(もたら)すことになるでしょう。

 軍事的に優位に立つと言うことは国際的な発言も増し、やがて些細なことから我が国の政策にも口を挟むようになりましょう。

 坂崎なる人物が、誰にもその技術と知識を委ねなければ問題は無いのですが、いずれは何らかの形で一般の利用に供されることになるのは間違いありません。

 ボーイング社の製造する()()()は極めて優秀な航空機であり、輸出製品の目玉でもございますが、建造費が高いのが玉に疵(たまにきず)

 ですが、一個人がそれよりも大きな宇宙船を造り、しかも左程の費用をかけずに作ったとなれば、同じような仕様で航空機を造ることによる利益は莫大な物になります。

 しかも燃料は炭素と言います。

 特殊な物かどうかは現段階では判断できませんが、単なる炭素だけであればタダ同然のもの。

 高価な航空ガソリンを使用せず、騒音もなしに飛翔できるとなれば、ボーイング社は倒産するか航空部門から撤退を余儀なくされましょう。

 坂崎なる人物がそうした航空機を造るつもりが有れば、間違いなくボーイング社は無くなることになるでしょう。

 旅客機のみならず、軍用機を造れば世界最速の戦闘攻撃機FXが誕生します。

 如何なる高加速で動いてもパイロットに何の負担もかけることなく動けます。

 更には革新的な動力炉があります。

 僅かに300立方フィートほどの容積で軽水炉型原子炉千基分の能力があれば、ウェスティングハウス社は主力製品を生産できなくなるはずです。

 そうして驚異的な通信装置。

 地球の反対側からもアクセス可能な通信装置の出現は、我が国通信機製造メーカーの基盤を根こそぎ奪います。

 ハイビジョン128画面分もの通信回線は光ファイバーでも数本必要なものであり、同時にそれを処理できるマイクロチップは❆ntel社の牙城を崩します。

 大統領、坂崎の保有する知識と技術を手に入れられなければ、我が国の産業のほとんどが衰退する運命に有ると言っても過言ではありません。

 坂崎が宇宙から帰還した時に我が国が如何に対応するかを考えて明日の会見に臨むべきです。」


「ふむ、飴でもやって手なづけるかね?」


「残念ながらサマセット博士曰く、坂崎なる人物にやれる飴は無いだろうとのことでした。

 彼がこれまで無名であったのは、名誉欲も金銭欲にも縛られない人物だからだそうです。

 例外的に御盛んな方もいらっしゃいますが、63歳は色香に迷う年齢でもありません。

 有るとすれば知識欲だそうですが、我々に提供できるようなものがあるとは思われません。

 彼を飴で手なづけることは無理とお考えいただいたほうがよろしいでしょう。」


「で、君の提案は?」


「余り良い方法では有りませんが、力で縛るしか方法がないと思われます。」


「力とは?」


「一つ目は、坂崎を亡きものにし、後継者を取り込みます。

 二つ目は、坂崎の弱点を取り込み、従わせます。

 三つ目は、日本そのものを、アムリカ国の範図に取り込んでしまうことです。」

 二つ目と三つ目はかなりの危険が伴いますのでお奨めできません。

 露見した時に受けるダメージが大きすぎます。

 まして、二つ目は坂崎が弱点を切り捨てしまえば何の役にも立ちません。」


「参考までに聞いておこう。

 坂崎の弱点とは?」


「娘佳代子とその子供二人です。

 ただ、現在のところ、その所在は分かっておりません。

 あるいは、危険性を予期して事前に相応の手を打っていると言うことだと思います。」


「君が言うように良い策とはとても言えんな。

 坂崎が何を考えているか私も明日の会見で極力探り出してみよう。

 その上で対応策を考える方がいいだろう。

 取りあえずは、君が上げた三つの策はいずれも捨てて良い。

 ホワイトハウスで語るような話では無い。

 だが、我が国が抱える脅威についての警告だけは真摯に受け止めておこう。」



       ◇◇ 続く ◇◇


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