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先駆者 ~ 天翔けるYAMATO-Ⅲ  作者: サクラ近衛将監
第一章 プロローグ
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1ー2 建築確認 その二

 この物語はあくまでフィクションであり、似たような記述があっても、実在する人物もしくは組織とは何の関わりも無いことをご承知おきください。


 概ね、一話二千字を目途に、毎週月曜日の午後8時に投稿する予定ですが、第七話までは毎日一話投稿いたします。



 トンネル部分については、一応屋根はついているものの道路扱いということで既に別の認可が下りている。

 的場は、車から降りて駐車場の壁際に寄り、構造物の材質を一応再確認した。


 事前にサンプルが届けられ、権威ある機関により強度などが確認されているものである。

 以前的場が訪れた時には壁の一部と天蓋だけが出来ていた。


 その壁も全て出来あがっており、滑らかな表面の仕上がりを見る限り、何処がつなぎ目なのかは全く分からない。

 この素材は、()()()()()()()と坂崎が呼称する新素材であり、従来のコンクリートに比べると10倍以上の強度を持つ上に、強靭性と柔軟性をも兼ね備えた全く新しい素材である。


 もっとも、今のところは、ここでしか見られない建材なのだが・・・。

 この駐車場の側壁が、厚さ50センチの新素材プラスクリートで覆われており、中心部には直径3センチの新合金鋼棒が格子状に組み込まれている。


 基礎さえしっかりしていれば重量50トンの戦車が時速70キロでぶつかっても壁は持ちこたえるだろうと北海道大学付属建築材料研究所の職員から言われている。

 実のところその基盤となる路面も厚さ50センチの新素材プラスクリートと新合金鋼棒から出来ている。


 天井はやや薄く、プラスクリートの厚さが30センチであるが、それでも3000トン以上の重量を天井に載せても十分支えられるはずである。

 駐車場内の照明は装備されてはいるが、今のところは点いてはいない。


 おそらくはまだ電気が通っていないのかもしれない。

 国道付近から私道に入った道路脇に、私有の変電設備は設けられているが、電力会社と契約をしない限りは給電されないのだろう。


 少なくとも完成までには1カ月やそこらはかかるはずであり、それまでは契約しても無駄だと家主が言っていたことがある。

 予定では、来週から内装関係の業者と設備関係の業者が入ることになっているはずである。


 図面では、予備発電機二台を備え付けられるスペースがあるはずだが、実のところ建築途中での確認検査であり、そうした設備までは整備されていないのである。

 尤も、駐車場内は、光ファイバーの集光器を通して、地上からの光が駐車場内の至る所に分散された照明光となって到達しているので、日中であれば十分な明るさがある。


 但し、問題の居住設備になる家は違う。

 何でもシェルターを想定した造りということで、一切の窓が無い構造なのである。


 しかも面倒なことに建築業者を使っていない。

 構造の全てを自前で建設を行っているのである。


 そのために、これまで3回ほども的場がここを訪れ、その都度確認検査を実施しているのである。

 今日で一応建築主事としての的場の役目はほぼ終わる筈で、後は専門業者が内装や設備の設置工事と点検を行うはずである。


 前例のない建築申請であることから、慎重に検査を行ってきたが、少なくともこれまでのところ問題はない。

 今日は主として居住空間の換気状況を確認しにきたのである。


 前回来た際に、換気機能が十分でなければ承認は与えられませんよと念押しをしているのである。

 建築確認の本来の趣旨は、強度的に十分な構造であるかどうかを見ることであるが、それに加えて耐震、防火構造も確認し、その中に換気機能が適切であることという一条があるのである。


 確かにシェルターであれば、密閉構造も止むを得ないのだろうが、それでは人は住まわせられない。

 何しろ扉を閉めてしまえば気密状態になり、完全に外部から切り離される構造なのである。


 外国の文献を調べてみたが、普通のシェルターならば高度な集塵機能を有するフィルターを設備するのだが、どうやらこの家主は、水はおろかガス成分さえも全く侵入できない構造にするつもりのようである。

 少なくとも的場が調べた限りではそのような造りのシェルターは、世界的にも一つとして無かった。

有る意味で潜水艦仕様である。


 そんな物を造って一体どうするのかと的場は思うのではあるが、「金持ちの道楽」と言われてしまえば何とも言いようがない。

 駐車場から二つのドアをくぐりぬけて、居住区の1階部分に到達した。


 倉庫を兼ねた造りであり、玄関兼土間とでもいったところだろうか。

 しかしながら土または岩が露出している個所はない。


 一画全てがプラスクリートの床面なのである。

 壁際の大きな棚には色々な道具箱や段ボール箱が整然と積まれているし、事務用で使う大型のロッカーも8つほど備えられ、住人用としては大きすぎると思われる下駄箱もある。


 そうしてその部屋の中央に有るのがフェリーの自動車乗降用の斜路を思い起こさせるなだらかな斜路が伸びている。

 天井は戸口からみると少し中央が低くなっており、手前側は高く、そうして反対側も高くなって緩やかながら所謂逆アーチを形成している、天井には照明装置はなく、壁際にやはりファイバー集光器からの灯りが来るようになっている。


 それとは別に壁に間接照明装置はあるのだが、これも今のところは機能していない。

 この家の駐車場の屋上に当たる部分は、テラスになっており、中々に綺麗な庭園になっているのだが、その一部にファイバー集光器10基が据えられている。


 普通、余程大きなビルでも集光器二つほどあれば十分なはずで、随分と無駄なことをしているようだが、実のところ、その集光器自体をこの家主が自作してしまったというところが凄い。

 市販の集光器は光ファイバーの配線まで含めた建設工事費が一台当たり数千万円もする代物もあるのだが、家主は一基当たり10万円ほどで造ったようであり、取りつけも自前でやったのだから無論ただである。


 つまりは数億円の価値があるかも知れない集光器を僅かに100万円ほどで造ってしまったということだ。

 実のところ的場は、自分で家を建てるときはこの家主に相談してみようと思っているぐらいなのだ。


 あるいは集光器を安く造ってくれるかもしれない。


       ◇◇ 続く ◇◇


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