表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
先駆者 ~ 天翔けるYAMATO-Ⅲ  作者: サクラ近衛将監
第二章 飛翔
19/74

2ー13 時差、そしてアムリカ政府の動き

 午後7時からの放映では篠崎から予定にない質問も飛び出した。


「YAMATO-Ⅲから送られてきているデータによれば、YAMATO-Ⅲは現在月の裏側にいますが、交信が途切れないのは何故でしょうか?

 そしてまた、時差もまた無いように思えるのですが、どうしてなのでしょうか?」


「予め用意した通信装置には、電波など従来の無線方式が用いられていないのですよ。

 そのために、YAMATO-Ⅲが何処にいようと通信ができます。

 それと、月と地球の平均距離は38万キロ。

 光の速さで1.3秒ほどかかる計算になります。

 実のところYAMATO-Ⅲの通信施設とそちらに有る通信端末とは、高次空間を通してダイレクトに光通信でつながっています。

 高次空間では距離など無関係に三次元空間が点で表現できますので、時間差の無い通信が可能なわけです。

 NAUAや宇宙開発事業団ではその矛盾にも既に気づいているようですが、良く気づかれましたね。

 明日には木星に向けて出発しますが、木星に行ってもおそらくは通信における時差は無いでしょう。

 但し、特殊相対性理論による時間の伸長現象が観測できるかもしれません。」


「それは、どのような現象でしょうか?」


「物体が光の速さに近づくと特殊相対効果により物体の質量が見かけ上増大します。

 同時に物体内部では時間が外部よりもゆっくりと進みだします。

 木星での航宙途上で最大速度は秒速9165キロに達しるものと予測しています。

 これは光のおよそ3%程度の速度になるだろうと思われます。

 従って、YAMATO-Ⅲの船内の時間は、地上の皆さんと比べて最低でも3%、最大では7%ほど遅れがちになります。

 篠崎さんのしゃべり方は、普通の北海道の方に比べるとやや早い方ですが、YAMATO-Ⅲで受信する際にはそれがもう少し加速されてしまうわけです。

 7%程度で意思の疎通ができにくくなるとは思えませんが、1時間3600秒を比べると1分半ほども船内時間が遅れることになります。

 今まで時間の遅れを実際に観測した事例が有りませんので、理論通りならばこれが初の事例になるかもしれませんし、アインシュタインの特殊相対性理論の実証が今一つ出来ることになります。

 船内には三つの正確な時計を用意してありますので、それで比較ができるようになると思われます。

 実のところ、船内時計と地上時間では既に3秒ほど遅れが生じています。

 これは、月へ向かっている途中で、最大速度で秒速213キロを出したために生じた結果です。

 因みに光速の100分の7%です。

 その観測結果については宇宙開発事業団へデータ転送を行っています。」


 とにもかくにもYAMATO-Ⅲからは次々に新たな知見を繰り出してくる。

 光速よりも早い通信などSF小説の中でしか出て来ないものであるが、それを実現してしまっているなど、正しく驚愕の事実である。


 おそらくは、まだまだ、坂崎が懐に仕舞っているものが有るに違いない。

 それをいち早く聞きだした篠崎の目の付けどころを誉めるべきだろう。


 明日になればNAUAが聞きだしていただろうから。

 既に世界は大騒ぎである、昼には号外が出されたし、どの新聞の夕刊見出しもYAMATO-Ⅲ一色であり、宇宙新時代と謳っている。


 YAMATO-Ⅲは、翌朝午前7時に月から木星に向けて出発する。

 YAMATO-Ⅲは、月面着陸など予定していなかった。


 そのために周回探査機を月に置いて行き、必要なデータを根こそぎ収集するようである。

 おそらくはこれまでNAUAが知り得た情報以上の新たなる知見を与えるに違いない。


 篠崎は明朝8時からのインタビューでは、民放各社及び新聞記者が集まった中で、とりまとめ役をする予定である。

 これまでも報道各社からは記者会見の要請が有ったのだが、坂崎の希望で明朝になったのである。


 さほど広くない会議室での記者会見は到底無理であるので、近場の厚生年金ホールの大広間を借りてのテレビ記者会見である。

 端末装置は、支局から動かせないので、支局から臨時回線を厚生年金ホールに引いて、4つの映像を送り届けることにしている。


 相当数の内外の記者が既に宇部広入りしているはずであり、その後、記者会見は隔日定例で午後8時に行われることになっている。

 これに必要な費用は、参集した報道関係者から徴収することにしている。


 NFKが当該費用を全て賄うわけには行かないからである。

 それでも明日は記者で埋まることになるだろう。


 記者会見は1時間のみである。

 その後は各政府機関などの予約が全て埋まっている状況である。


 ◇◇◇◇


 ホワイトハウスの一室で、レスター補佐官がアームストロング大統領に尋ねた。


「いかがいたしましょうか?」


 物想いにふけっていたアームストロングは顔を上げた。


「何のことだ?」


「例の日本の宇宙船のことです。」


「明日の会見のことか?」


「会見の中でどのように扱うべきかです。

 これまでの日本政府のように我が国に従順な者ならば宜しいのですが。

 昨日のNAUAとの交信を見る限りは一筋縄では行かない人物のようです。

 日本人の心理的構造を熟知しているサマセット博士とも意見を交換しましたが、サマセット博士も同意見であり、なおかつ、博士はアムリカ国にとって危険極まりない人物になるやもしれないとの危惧をお持ちでした。」


       ◇◇ 続く ◇◇



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ