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先駆者 ~ 天翔けるYAMATO-Ⅲ  作者: サクラ近衛将監
第二章 飛翔
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2ー12 NFKの動き

 篠崎は今後のYAMATO-Ⅲのスケジュールを中心にインタビューを行ったが、折り返し太陽系内探査の詳細なスケジュール表が送られてきた。

 そうして、それらの探査結果データについては宇宙開発事業団及びNAUAを中心に配分されるようである。


 坂崎は全部で60機の探査機を用意しており、そのうちの1基は既に射出されていた。

 地球の衛星軌道700キロを周回する探査機で地上及び周辺宙域のデータが自動発信されてYAMATOが受信、整理されたものが地上に転送される仕組みである。


 胤ヶたねがしま宇宙センター、総理官邸、文部科学省、防衛省、道庁には既に通信端末が到達しており、北海道知事が午後1時10分から20分間、総理が午後4時から20分間、文科省が午後5時から1時間の予定が入っている。

 宇宙開発事業団は、通信端末の到着が遅れたために翌日にならなければ時間が取れない状況である。


 予定通り、午後一時10分から北海道知事新山武史との会談が20分に渡って行われた。

 北海道知事新山武史は至極ご満悦であった。


 政治家として初めて面談できたのが北海道知事であったからである。

 お決まりの北海道の振興に今後とも尽力を願いたいとのセリフを最後に終了した。


 そうしてその間にもYAMATO-Ⅲは月へ向かって驀進し、本当に2時間で月面上空100キロに到着していた。

 アポロ計画において、有人宇宙船が3日かけて月へ到達したことと比べ、隔世の感がある。


 おそらくは、新東京から尾宇坂に新幹線が到着するよりも早く月へ到達できるのである。

 午後三時には、YAMATOは月面上空100キロを周回していたのである。


 月探査機も射出され、月面上20キロを周回しながら既に探査を開始している。

 面白いのは当該探査機からYAMATO-Ⅲの船影が時折眺められることである。


 午後4時からは栗山首相が坂崎一家と面談を行った。

 政治家にとってはまたとない出番であり、日本人を褒め称える絶好の機会であった。


 NFKのYAMATO-Ⅲ関連の視聴率は放映開始から60%を切ることがなかった。

 地上デジタルの第一、第二のいずれかで必ず放送が継続されたからである。


 YAMATO-Ⅲの伝送画像は今や9分割になっていたが、ハイビジョン以上に鮮明な画像が送られてきていた。

 放送局では9画面のどの画面を選択しても放映が可能であったし、取扱説明書には最終的に16画面8層の画面表示が可能とされていた。


 つまりは、YAMATO-Ⅲから128画面が一挙に送れることになる。

 60基の探査機画面とYAMATOの船首、船尾、船底下部、船体上部の画面を合わせて64画面であり、船内からの中継は時に応じてそれらの一部を使い分けられるようになっている。


 坂崎は、残り64画面は予備だと言っていた。

 通信能力だけを取って見ても全く驚くべき能力であると言わざるを得ない。


 放送局ですらハイビジョン64画面を一挙に扱うにはかなりの困難が伴うはずである。

 宇部広支局にはこのため急遽液晶TV60台が追加設置されており、会議室壁面は液晶画面で埋まっている状況である。


 東京では、臨時に別の建物を借用することも考えていたようであるが、技術部門からとてもそれだけの回線を取れるような場所は無いと断念している状況である。

 支局自体の回線網も一杯であり、ハイビジョン4画面を伝送するのが精一杯である。


 ノートパソコン程度の通信端末が既に9画面の画像を送りつけているのに、その処理ができないでいた。

 しかしながら、現状の支局の能力ではこれが精一杯であり、技術部門は大量の人員を導入して何とか既設施設を使い、なおかつ回線網を新設して急場をしのごうとしていた。


 それでも技術的には9画面が限度だろうと言う結論が出ている。

 そもそも東京の本局がそれ以上の画面を取り扱えないのである。


 東京でも海外の放送局との連携調整にてんやわんやの状況であるようだ。

 古谷は、これがいつまで続くのかと少々心配になってきていた。


 増してや、YAMATO-Ⅲが地球に帰還する際にはこれ以上の大混乱が起きることは間違いないのである。

 坂崎の自宅、及び斗夕峠の施設には既に常時警察官が張り付いている状況にある。


 仁十久の隣町である斗割志御津に駐在する田辺が確認して連絡を寄越していた。

 本来ならニュースになるところかもしれないが、とてもそのような小ネタが入る余地は無いだろう。


 北海道総局も民放各社との調整で多忙を極めているらしい。

 一旦経路が決まれば問題は無いのだが、それまでは色々とトラブルが発生するものである。


 何にせよ、坂崎の言を素直に受け取っていて良かったと思っている古谷である。

 これで、民放にでも取られていたなら古谷一人の首では済まされなかっただろうし、慙愧の念が大いに残ったはずである。


 篠崎も二度の大舞台を与えられて徐々に様になりだしていた。

 古谷もこいつは本当にアナウンサーに向いているかもしれないと感じていた。


 民放各社もNFKのように垂れ流し状態は出来ないが、ゴールデンタイムに軒並み報道特別番組を繰り出し、いわゆるいいところ取りを始めているようだ。

 宇部広支局にはそれほどの能力は無いが、東京でも午後9時から11時に掛けて特別番組の企画を始めたようで、放映は明日になりそうである。


 9画面の映像からの編集依頼が報道局長直々に来ている。

 古谷は今夜も支局に泊まり込み徹夜状態になりそうである。


 篠崎も何かと頑張っている。

 篠崎の次の出番は午後7時からの1時間であるが、それまでの予習に余念がない。


 阿尾山学院を出ていただけに英語の読解力はかなりのものであり、CNN放送を聞きながら情報を仕入れている。

 東京本局の同時通訳と生放送の双方を聞き比べながら自分なりにまとめているようだ。


 少なくとも、午後一番の放送ではNAUAとのやりとりと重複しているものは無く、逆にNAUAへの回答をもとに新たな質問を繰り出しているほどである。

 報道局長も一旦は本局から放りだしたものの、二度の放映を見て、少しは機嫌を直しているらしく、午後の電話では誉め言葉が出ていたぐらいである。


       ◇◇ 続く ◇◇



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